“美食の激戦区”西麻布に、カウンター8席のみの隠れ家的レストラン〈アルギュロス〉がオープン!
西麻布はファインダイニングやモダンガストロノミーが林立する“美食の激戦区”。今年に入ってからもたくさんのレストランがオープンしているけれど、衆目を集めるコンテンポラリーキュイジーヌフレンチが新たに登場した。
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シェフの岡崎陽介さん
2024年5月27日にオープンした〈アルギュロス(Argyros.)〉は、人気店を数多く手掛けてきた名プロデューサーの塩谷茂樹さんが手掛けるカウンターガストロノミー。シェフを務める岡崎陽介さんはフランスでの修業経験も豊富。フランス料理店だけではなくスペイン料理の名店でも薫陶を受けた、経験豊かな実力派の料理人だ。この塩谷さんと岡崎さんの“最強タッグ”が提供しているのは、一斉スタートで始まるおまかせの“ディナーコース”(3万6300円)。わずか8席しかなく、1mもの幅がある壮大なカウンターで、珠玉の12品前後が次から次へと華麗に供される。
わずか8席というカウンターが、夢のようなひと時をもたらす
旬の食材を用いるのでメニューは日々新しくなっていき、3カ月くらいが経つと完全に刷新。数多のメニューの中でも特にこだわっているのが、メインディッシュの肉料理だ。
日本最古の和牛純血種である“竹の谷蔓牛”と黒毛和牛を掛け合わせて生み出されたのが、“いぶさな牛”。肉牛は通常であれば月齢28カ月前後だが、“いぶさな牛”は長期肥育されているので、月齢36カ月から40カ月で実に味わい深い。
“いぶさな牛炭火焼き”
この“いぶさな牛”を用いたメインディッシュが、“いぶさな牛炭火焼き”。肩の部位であり、赤身と脂のバランスがいい“トウガラシ”が用いられており、赤身の佳味をたたえたジューシーな火入れと、炭火の鮮烈な薫香が素晴らしい。噛めば噛むほどに旨味が増し、削りたての山椒が目の覚めるようなアクセント。土色をした陶器の風合いも趣がある。付け合わされた京都辻農園の白子筍は、ほんのりと青味が感じられるフレッシュな味わいだ。シンプルにローストされているので、フルーツのような爽やかさが感じとれて、よい口直しとなる。
スープに用いられるガザミ(=渡り蟹)
“今夜の始まりの一品”
最初の一品となる“今夜の始まりの一品”はガザミ(=渡り蟹)を用いた澄んだスープ。野性味がほんのりと感じられる渡り蟹を、とても上品に仕上げた。渡り蟹の内子の塩漬けが添えられているので、そのまま食べてもいいし、味変で加えてもいい。
“冷たいクロケット”にも用いられる天然の黒鮑
“冷たいクロケット”
“冷たいクロケット”は、千葉県いすみ市大原漁港の貴重な天然の黒鮑を用いた前菜。ヴァン・ジョーヌ(=黄ワイン)で丁寧に煮て、肝のソースでしっかりとからめた。身はブロック状にカットされているので、黒鮑特有の食感も楽しめる。上にはパン粉と蕎麦の実が散りばめられていて小気味いい。サフランのソースと酢橘のソースが添えられているので、味変も楽しんでみて。
“天城黒豚の旨煮”
美食のワンハンドフードが“天城黒豚の旨煮”。静岡県の金子畜産天城黒豚をやわらかく煮て、ふっくらとした自家製の中華生地でサンドした。フレッシュなラディッシュと香り豊かなタイのバジルも印象に残る。
“スッポンとハーブ”
“スッポンとハーブ”は長崎のスッポンを用いた珍しいサラダ。マリーゴールド、イタリアンセロリ、ニンジンの新芽、えんどう豆の葉、高菜のスプラウト、ミニ春菊、レッドソレル、ミニオゼイユ、ノコギリ草、赤紫蘇、コリンキーなど、広島県にある梶谷農園のハーブや花が15種類も使われており、色彩も味わいもバリエーション豊か。沖縄県パインスッポンの煮凝りが忍ばせてあり、動物性の旨味が食欲をかきたてる。
自家製のパンとバター
パンもバターも自家製で、パンはほんのりと酸味があって料理を邪魔しない。水牛の角のバターナイフは、繊細なバターの風味を損ねず、美しい色合いだ。
“極上シマアジ”
五島列島の林鮮魚店から届いたシマアジを主役にした“極上シマアジ”も特筆するべき一品。仕上げに、千葉県九十九里浜の蛤とシジミで作ったスープを南部鉄器で注いでくれる。シマアジは丁寧に処理されているので状態が非常によい。藁焼きされた後に炭火焼きされているので、薫香にあふれている。魚介類の滋味がふんだんに閉じ込められた一品。
“ガスパチョ”
“ガスパチョ”は、コシのある熊本県のそうめん“ゆきやぎ”を用いた和洋折衷の一品。濃厚なキタムラサキウニとツルンとした白神山地のジュンサイを加え、穂紫蘇を散りばめたガスパッチョだ。スイカの酸味と爽やかさもあり、さっぱりとした食後感。
“時不知”
出色の魚料理が北海道の小西鮮魚店から届いた日高産の“時不知”。春から夏にかけての季節外れに北海道で獲れる鮭で、皮をパリッとさせ、身はミキュイ(=半生)に仕上げた。濃厚な椎茸のポタージュや、酸味のあるブールブランソースが相性抜群。
“旬の素材で作る菓子”
“旬の素材で作る菓子”は、星付きの名店で研鑽を積んできた、シェフパティシエールである白井絢菜さんの渾身のアシェットデセール。右のスプーンにはフレッシュな沖縄マンゴーとパンナコッタが乗せられているので、一口でいただくと、口中が心地よい甘味と酸味に満たされる。左のケーキは、アールグレイ風味のフィナンシェ生地、カラメリゼしたマンゴーとベリーのソース、ホワイトチョコレートとメレンゲで構成。生のマンゴーと火を入れたマンゴーのよいコントラストで、デザート専門店で体験できるような上味だ。
小菓子
最後の小菓子は4種類。グリオットチェリーのムース、カヌレ・ド・ボルドー、パッションフルーツのマカロン、宇治抹茶のガナッシュと、どれも個性豊か。ある“仕掛け”を通して、サプライズがあった後に登場するので、自分の目を通して体験してもらいたい。
アルコールのラインナップにもこだわりが
“アルコールペアリング”(1万5000円)もこだわったものばかりだ。
最初のシャンパーニュは王道の“ボランジェ スペシャル・キュヴェ”。複雑さと厚みを兼ね備えた辛口のシャンパーニュで、熟成に由来する香ばしさがたまらない。希少な日本酒“木戸泉 AFS 12”も提供される。自家培養・自然醸造という稀有な醸造法で、シルキーな泡立ち、米の甘味と乳酸発酵由来のジューシーな酸味も感じられる。個性豊かだが、思ったよりも幅広い料理によく合う。“シャトー・クーアン・リュルトン ルージュ 2008”はフランス・ボルドーの赤ワイン。やわらかな果実が感じられながらも、ハーブなどの青い香りのニュアンスも含む。ミディアムボディで、繊細な酸味があるので、肉料理とのよいバランスをとってくれる。
〈アルギュロス〉は、西麻布の交差点にありながらも隠れ家的な装いで、うっかり通り過ぎてしまうほどの慎ましやかな佇まい。入店すると、突如として広々としたカウンターが現れるから、感嘆の声が上がる。
今注目のカウンターガストロノミーなので、デートや記念日にはもちろんのこと、接待や大切な時など、“ここぞ”という時に是非とも予約して。
●アルギュロス(Argyros.)
住所:東京都港区西麻布1-12-6 1F
営業時間:18:00〜22:00 ※18:00一斉スタート
定休日:水曜、隔週火曜
TEL:03-6459-2820
URL:https://www.instagram.com/argyros.kasumizaka/
※サービス料込み
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1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口でわかりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。