万年筆は心からの思いを伝えたいときに使う! 気持ちにスイッチを入れるトリガーのような存在!
大学卒業を機に来日して以降、25年以上を日本で暮らす〈エンパイア エンターテイメント ジャパン〉代表取締役社長のセオドール・ミラー。彼は日本語での会話はもちろん、読み書きも堪能だ。万年筆に日本的な精神性を感じる、と話すセオドールは万年筆とどう向き合い、どんな万年筆ライフを送っているのか⁉
- SERIES:
- ビジネスエリートの愛する万年筆! 第48回
[エンパイア エンターテイメント ジャパン代表取締役社長]
PROFILE
米・ニューヨーク生まれ。ニューヨーク大学にて東アジア研究の学士号を取得。早稲田大学と上海の復旦大学に留学経験あり。大学卒業後、日本の大手広告代理店やIT企業等での要職を経て、2003年に〈エンパイア エンターテイメント ジャパン〉を設立し、代表取締役社長に就任する。エグゼクティブプロデューサーとして、トップブランドのイベントやPR、映像制作等などを手掛ける。ドキュメンタリー映画『The Cruise』でエミー賞をはじめ数々の受賞歴もあり。妻はモデル・タレントのアン ミカ。
最愛の人への手紙
Empireチームの皆さんへ
昨年2018年は本当に素晴らしい年でした。
エンパイア エンターテイメントを創業してから15年、振り返ればずっとチャレンジと感動の連続でしたが、なかでも最もスリリングな1年でした。
ビジネスにおいて記録を達成してきたことも、とても嬉しかったことですが、なによりも嬉しかったのは、私たちの質の高いサービスと創造力を崩さずに大切にしてこれらたことです。このチームの努力を、私は心から誇りに感じています。
そのみんなの努力のお陰で、いま多くのクライアントから、高い評価を受けています。
業界においての存在感は高まり、真の意味で“ExperienceDesign”の定義を築いたともいえるでしょう。
チームの優れた技能、プロフェッショナリズム、そしてプロジェクト1つ1つに対する情熱が、常に私の仕事への意欲を高めています。そんなみんなと一緒に仕事が出来て、本当に光栄です。その誠実で献身的な仕事ぶりによって、私たちEmpireが、帝国(= Empire)へと発展することに心から感謝しています。
̶セオドール・ミラー
デジタルにはない人間っぽさが魅力!
流暢な日本語と屈託のない笑顔で取材陣を出迎えてくれたのは〈エンパイア エンターテイメント ジャパン〉代表取締役社長のセオドール・ミラー。机の上には万年筆とともに、飛行機の模型やキャラクターのフィギュアが並び、一流クリエイターらしい遊び心にあふれている。画家である母親の影響により幼い頃から万年筆を使っていたというセオドールだが、万年筆にはほかの筆記具とは違う独特の緊張感があったという。
「万年筆を手に取ると、自然と気持ちのスイッチが入りますよね? たとえば、剣道の面をつけると、気分がピリッと引き締まるように。あるいは茶室のにじり口をくぐると、別世界に足を踏み入れた気持ちになるように。そういう日本的な心構えのあり方のようなものを感じます」
セオドールが万年筆を使うのはそれほど頻繁ではない。最愛の人にカードを書いたり、仕事のチームに感謝のメッセージを伝えたり、心からの思いをダイレクトに伝えたいときに限るそうだ。
「なにごとにおいてもムードは大事だと思うんです。なにを持つのか、なにを身につけるのか、なにを食べるのかによって、気分は変わります。そういう意味で万年筆は気持ちにスイッチを入れてくれるトリガー(引き金)のような存在です。スマホやパソコンにはない、人間っぽいアナログな魅力があるように感じます」
現在愛用しているのは、〈ヨルグ・イゼック〉の1本。日本刀からインスパイアされたという流線形のフォルムが、デスクの上で独特の輝きを放っている。普段はデジタルデバイスを活用し、メモ書きにはボールペンを使っているセオドールだが、気持ちを落ち着けてなにかを書くときにはこの万年筆を手に取るそうだ。
「それこそ日本刀を構える侍のような気持ちです(笑)。というのは少し大袈裟かもしれませんが、気持ちをきちんと整え、自らの手を使って書くという行為は、忙しい現代人にも必要な時間だと思います。絵文字ではダメなんです。やっぱり自分の手でなにかをクリエイトしないと、人間が本来持っているワクワクするような感覚を失くしてしまいます。毎日をハッピーに生きるためにも、毎日なにかをクリエイトしていたいですね」
愛用の万年筆
ヨルグ ペン シルバーフィニッシュ ディッピングペン
/ヨルグ・イゼック
得たという隠れた名作
長年、〈カルティエ〉や〈ティファニー〉など多くの時計ブランドを手掛けてきた伝説のデザイナー、ヨルグ・イゼックによる万年筆。そのデザインは時計のみならず、ペンのコレクションでも世界的に知られている。コチラの万年筆は偶然ウェスティンホテルのノーブルスタイリングギャラリーで見つけて以来、いつもデスクに置いているんだとか。日本刀をイメージした美しく流麗なボディと、手に馴染むほどよいボリュームがお気に入りのポイント!
ムードを盛り上げるディップインク!
写真右のディッピングペンとセットで購入した〈ヨルグ・イゼック〉の専用インクボトル。吸引式ではなく、昔ながらにこのインクをペン先につけながら、文字を書いていく。こうしたちょっとした儀式も万年筆の魅力とのこと!
万年筆さながらの書き心地がグッド!
こちらはよく使用しているという〈ブルガリ〉のボールペン(非売品)。プロジェクトの成功を記念して、クライアントからプレゼントされた思い出の1本。万年筆のようなタッチが気に入り、万年筆と並行して愛用している
時計もTPOによって使い分け
時計は10本前後所有し、気分や服、会う人によって使い分けているそう。この日は〈ブルガリ〉のペンに合わせて〈ブルガリ〉のオクトを(右写真)。もう1本は父から譲り受けた〈ブライトリング〉のナビタイマー(左写真)
COMPANY DATA
EMPIRE ENTERTAINMENT JAPAN[エンパイア エンターテイメント ジャパン株式会社]
非日常を体感できるエンターテイメント!
ニューヨーク、東京、香港を拠点にダイナミックで包括的なサービスの提供を行い、体感型マーケティングを得意とするクリエイティブエージェンシー。イベントのみならず、ビデオ製作やタレントマネージメントなどで数多くのトップ企業ブランディングを成功に導いている。
雑誌『Safari』 3月号 P196・197掲載
photo : Mamoru Kawakami text : Takehisa Mashimo