『ドリームプラン』で、ウィリアムズ姉妹を育てた父親役を演じて見事オスカーを初獲得したウィル・スミス。授賞式では、プレゼンターのクリス・ロックを平手打ちするハプニングもあったが、どんなキャラクターでも、チャーミングで人間味のある人物へと昇華させる演技力が彼の持ち味。そこで、ウィルの代表作を5本セレクト。彼のこれまでを振り返ってみよう!
『バッドボーイズ』
製作年/1995年 製作/ジェリー・ブラッカイマー 監督/マイケル・ベイ 共演/マーティン・ローレンス、ティア・レオーニ、チェッキー・カリョ
アクションとコメディ、両方のセンスを発揮!
マイアミ警察の刑事マイクは独身のプレイボーイだが仕事熱心で、相棒の家庭人マーカスと組み、ときには無鉄砲なやり方で凶悪犯罪を追っている。ある日、警察によって押収された大量のヘロインが奪われる事件が発生。マイクとマーカスは捜査を進めるうちに、麻薬組織の犯罪を目撃した女性を保護する。しかし、彼女が組織にさらわれたことから、彼らは命がけの行動に打って出ることに……。
マイクを演じたウィル・スミスを一躍ハリウッドスターに押し上げた痛快作。細身の長身を活かしたガンアクションのポージングが、とにかくサマになる。一方でマーカス役のマーティン・ローレンスとのやりとりはユーモラスで、コメディのセンスもしっかり感じさせた。これがデビュー作となったヒットメーカー、マイケル・ベイ監督のスタイリッシュなアクション演出も好評を博し、この後、続編2作が製作された。
『インデペンデンス・デイ』
製作年/1996年 製作総指揮・監督・脚本/ローランド・エメリッヒ 共演/ビル・プルマン、ジェフ・ゴールドブラム、ジャド・ハーシュ
勇敢で頼もしいイメージを確立!
ある日突然、世界中の大都市上空に巨大なUFOが出現。人類は交信を試みるも、それは一斉に攻撃を開始し、ホワイトハウスを爆破されたアメリカは壊滅的な打撃を受けた。極秘施設に避難した大統領は軍や科学者たちと打開策を練る。形勢逆転の鍵は、敵のバリアを無効化させること。海兵隊のパイロット、ヒラー大尉らは危険を承知で、この作戦に参加し、敵のマザーシップに乗り込んでいく。
ローランド・エメリッヒ監督が放った、おなじみのSF大作。直径24キロメートルという超巨大UFOの地球侵略を描いたドラマは、とにかくスケールが大きい。ウィルが演じるのは、対エイリアンとの最前線に立つことになるヒラー大尉。勇敢で頼もしい、そんな存在感が光る。エイリアンを素手で殴り倒すという荒技にはユーモラスな味も。この後ウィルは『メン・イン・ブラック』シリーズでも異星人と“共演”することに。
『ALIアリ』
製作年/2001年 監督・脚本/マイケル・マン 共演/ジェイミー・フォックス、ジョン・ヴォイト、ジェフリー・ライト
アリになりきり大熱演!
人種差別がはびこる1950年代のアメリカで、プロボクサーを目指してトレーニングに励む青年カシアス・クレイ。22歳の若さでヘビー級世界王者となった彼はイスラム教に入信し、モハメド・アリに改名。無敵を誇り、連戦連勝を続け、名声を轟かせるアリだったがベトナム戦争の徴兵を拒否したことでアメリカの英雄は一転して反逆者に。王座をはく奪され、苦境に追い込まれながらも、彼は信念を曲げずにボクシングに打ち込み続ける……。
『ヒート』の鬼才マイケル・マンが伝説のボクサー、アリの半生を骨太に描いた伝記ドラマ。しばし“やせっぽち”を自称していたウィルが主演を務め、肉体改造に挑んで筋肉質のボディをつくりあげた。ファイトシーンの熱演はもちろん、強気のビッグマウスを含むカリスマ性の体現も印象深く、まるでアリが乗り移ったかのよう。アカデミー主演男優賞のノミネートも納得の大熱演!
『アイ,ロボット』
製作年/2004年 原作/アイザック・アシモフ 監督/アレックス・プロヤス 脚本/アキヴァ・ゴールズマン 共演/ブリジット・モイナハン、ブルース・グリーンウッド、ジェームズ・クロムウェル
製作総指揮も兼ねたSFアクション!
2035年、ロボットの使用が一般化した社会。ロボット工学の第一人者である天才博士が謎の死を遂げた。警察は自殺として処理しようとするが、ロボット嫌いの刑事スプーナーは納得がいかず、独自の調査に乗り出す。やがて研究室から、サニーと名乗るロボットが発見されるが、驚くべきことにサニーは感情のようなものを持っていた。サニーが博士を殺したのか!? 疑念を深めながらも、さらに捜査を続けるスプーナーは、さらに衝撃的な事件に直面することになる……。
アイザック・アシモフの短編小説に基づく近未来スリラー。ウィルふんするスプーナーは、とある理由からロボットを敬遠するようになったアナログ人間。心に傷を持つ硬派なキャラクターは、ハードボイルド小説の主人公のようでもある。ちなみにウィル本人は最新テクノロジーにオープンなデジタル人間であるとのこと。
『幸せのちから』
製作年/2006年 監督/ガブリエレ・ムッチーノ 共演/ジェイデン・スミス、タンディ・ニュートン
人間味あふれた演技でオスカー候補に!
舞台は1981年のサンフランシスコ。医療器具のセールスマンをしているクリスは、貧困から抜け出すために証券会社の研修を受けることに。しかし研修期間は無給であり、本採用されるのは狭き門。生活はますます苦しくなり、耐えかねた妻は家を飛び出してしまう。幼い息子を抱えたまま、ついには住処も失ってしまうクリス。それでも彼は、息子に愛情を注ぎながら懸命に努力を続け……。
最新作『ドリームプラン』もそうだが、ウィルはバイタリティにあふれた実在の人物役に、説得力を持たせるのが巧い。一度はホームレスに身をやつしながらも、成功を手に入れた実業家クリス・ガードナーの実話に基づく本作も同様だ。ともすれば汗臭い根性ドラマになりかねないところを、人間味にあふれたストーリーに導いている。プロデュースを兼任したこともやる気の表われで、2度めのアカデミー賞ノミネートを果たした。これが俳優デビュー作となった息子ジェイデン・スミスとの、親子役の息の合ったかけあいも注目のポイント。
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