Vol.24 城島健司/海を渡った唯一の捕手【MLBの挑戦者たち〜メジャーリーグに挑んだ全日本人選手の足跡】
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城島健司(じょうじま・けんじ)/1976年6月8日生まれ、長崎県出身。日米通算1837安打292本塁打(1995〜2012年)
NPBとMLB、そしてWBCなどの国際大会でも活躍し、日本を代表する“打てる捕手”として人気を博した城島健司。類稀な強肩でも知られ、座ったまま送球する“JOHバズーカ”はあまりにも有名だ。ゴールデングラブ賞8回、日米通算本塁打292本(捕手としてNPB歴代4位)。またNPBだけの通算打率.296は捕手として歴代1位である。
高校時代に通算70本塁打を積み上げ、各方面からおおいに注目された。プロ入りを拒否して大学進学を目指す……と思われていたが、福岡ダイエーホークス(当時)がドラフトで強行指名。憧れの存在だった王貞治監督の要請もあり、そのままプロ入れを決意した。ホークス入団当初はキャッチングやリード面に課題が多く、捕手としての評価は高くなかった。打撃を生かしながら猛特訓し、3年目には一軍定着。打率.308、15本塁打を記録すると、その後も強力打線の主軸として活躍した。
ダグアウトでイチローと並んで座る城島
プロ11年目の2005年オフ、FA権を行使してシアトル・マリナーズと契約。ファンの期待と不安が渦巻くなか、捕手として初めてのメジャー挑戦がスタートした。翌’06年の開幕戦、城島は7番捕手で出場し、MLB初の日本人捕手となった。第2打席ではメジャー初安打となる本塁打を放ち、周囲に実力を見せつけた。城島は最終的に144試合に出場し、打率.291、18本塁打、76打点を記録。新人野手としてリーグトップの本塁打数・打点であったが、惜しくも新人王は逃している。
この城島の活躍は日米のメディアにも感銘を与えたようだった。全国紙である『USAトゥデイ』は「違う言語で新しい投手たちとコミュニケーションを図ることに努力し、なおかつこれだけの打撃成績を収めたのは、我々の脳裏に強く焼き付いた」と称賛している。
2007年4月11日、フェンウェイパークでボストン・レッドソックスの松坂大輔と対戦
続く’07年も捕手としてチームに定着。135試合に出場して打率.287、14本塁打、61打点と打撃成績はやや落としたものの、守備率.998、盗塁阻止率.465は両リーグを通じてトップであった。CBSスポーツによる捕手ランキングで5位に選ばれるなど、捕手として一定の地位を確立したといえる。
新たに3年契約を結んで挑んだ‘08年は、一転して打撃不振に苦しんだ。前半戦で打率.218と低迷し、スタメンを外れることも次第に増えてくる。最終的に112試合で打率.227, 7本塁打、39打点。高額契約を結んでいたこともあり、スポール専門チャンネルのESPNからは「最も価値の低かった選手」に選出されてしまった。アメリカのメディアは厳しい。
‘09年は春先に第2回WBCが開催され、城島も日本代表として全試合にスタメン出場。2大会連続の優勝に大きく貢献している。だが肝心のシーズンでは、4月に右太腿裏の肉離れで故障者リスト入りすると、5月にも足の親指を骨折。その間に新人捕手にレギュラーを奪われてしまい、出場機会を大きく減らした。結局は71試合の出場で打率.247、9本塁打、22打点。怪我の影響もあり、不本意なシーズンとなってしまった。
2008年5月3日、ヤンキースタジアムでニューヨーク・ヤンキースの松井秀喜と対戦
この年のオフ、城島はマリナーズとの残り2年の契約を破棄し、日本球界への復帰を表明。古巣の福岡ソフトバンクホークスと阪神タイガースが名乗りを上げるなか、最終的にタイガースへの入団が決まった。タイガースでの1年目は打率.303、28本塁打の好成績を収め、ゴールデングラブ賞も受賞。セ・パ両リーグで同賞を受賞したのは史上初のことである。
だが翌年には膝を負傷し、その回復が思わしくなかったこと、他の故障を併発したことなどが重なり、次第に捕手としての出場は難しくなっていく。’12年9月、残りの契約を破棄する形で引退を表明。恩師の王貞治に報告した際は「他のポジションで頑張ってはどうか」といわれたという。だが城島の決意は固かった。捕手のまま現役を終わりたい――その思いが強かったのだ。きっぱりとした去り際もまた、実に城島健司らしかった。
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