マーク・ウォールバーグ(1991年)
映画ではメインの役を務め、プロデューサーとしての実力も身につけ、ハリウッドで押しも押されぬトップスターの地位を築いたマーク・ウォールバーグ。少年時代を知る人は“よくぞここまで変わった”と、その成り上がりぶりに感慨に浸るはずだ。
1971年、ボストンで生まれたマーク。9人兄弟の末っ子で、一家は裕福とは言えず、高校を中退した後は、絵に描いたような“ワル”の日常を送っていた。16歳の時には殺人未遂の容疑で逮捕される。ドラッグとアルコールでハイになった状態で、ベトナム人男性に暴行を加えたのだ。その他にも近所の住人に殴りかかって重傷を負わせるなど、何度も警察のお世話になる。感化院に放り込まれたことも。
ようやく自堕落な生活を反省し、2歳上の兄、ドニー・ウォールバーグのバンドに加わるも、そのバンドがニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックとして活動しはじめた際には、過去の犯罪歴のためにマークはメンバーから外されたと言われている。しかし俳優になってからは、信仰心にめざめ、妻と4人の子供たちとの関係を最優先するという生活を送る。そうした“更生”もドラマチックであり、結果的に少年時代の経験が演技に生かされた部分もあるのかもしれない。
『ザ・シューター/極大射程』の来日会見で、ゲストの朝青龍とがっちり握手
2007年の『ザ・シューター/極大射程』のキャンペーンで来日した際には、家族ができた喜びを隠さずに語っていた。妻のレア・ダーレムと正式に結婚したのは2009年だったが、長い交際と婚約期間に2人の間には子供たちが誕生。4人目が結婚後の2010年に生まれた。2008年の主演作でM.ナイト・シャマラン監督の『ハプニング』は、家族がひとつのテーマになっていたが、マークは自身の子供だけでなく、甥や姪(当時、13人いた)との関係を映画に重ねながら話してくれた。そして子供たちが自分の仕事を観られるように、今後はラヴコメやアニメの吹替にも挑戦したいとも語った。家族の存在が俳優としてのフィールドを広げていったようだ。
マークと家族との関係といえば、こんなこともあった。LAで行われた『トランスフォーマー/ロストエイジ』のインタビューは、その日の最後の枠だったのだが、マークはインタビュー終了の時間が近づくと、なんだかソワソワしはじめた。質問にはしっかり答えつつ、終了になったとたん彼は立ち上がり、「ごめん、これから子供たちを迎えに行くんだ。インタビューが時間どおりに終わって良かったよ、ありがとう」と、照れくさそうな顔でインタビュールームを後にするその姿から、私生活では“良きパパ”であることが伝わってきた。
『トランスフォーマー/ロストエイジ』のプレミアに家族と出席
この時のインタビューでは、「僕はゴルフが得意ではないのに、なぜか日本のゴルフコースではスコアがいい。だからまた行きたい」と来日時の思い出も語ってくれた。「娘がセーラームーンの大ファンなので、次回は一緒に日本に行きたい」とも。
その愛する家族と暮らすのはビバリーヒルズの豪邸。敷地内にチャペルやプール、専用ゴルフコース、ゲスト用のコテージ、ホームシアターなどを備えた空間は、まさに究極のセレブライフの実現。それを惜しげもなくメディアに披露するのも、マークの性格を表しているようで微笑ましい。SNSの更新にも積極的で、マークのインスタグラムのフォロワー数は3000万人以上。仕事がらみの画像や動画のほか、肉体トレーニング、自宅での食事などが頻繁にアップされている。愛犬家としても知られるマークは、ペットのポメラニアン、チャンプの専用アカウント(champeranian)も作り、「そっちもフォローお願い」などと呼びかけている。
そしてハリウッドでの順調な活躍だけでなく、マーク・ウォールバーグは、ビジネスでも成功を収めていることも有名。自分の名を冠した“ウォールバーガーズ”というハンバーガーチェーンを経営。アメリカ国内に20店舗で、カナダやロンドンにも進出している。その他にもシボレーの正規ディーラー店の経営や、スポーツ用のサプリメントの販売、フィットネスジムへの投資など、さまざまなビジネスに関わり、個人の総資産は2億5000万ドル(約375億円)とも言われている。このように他業種でもビジネス展開するハリウッドスターは多いが、その中でもマークは成功者として認識されているのだ。
そんなマークにも生死ギリギリの瞬間があった。2001年の9.11同時多発テロで、NYのツインタワーに突っ込んだ飛行機に乗る予定だったのだ。直前にトロント国際映画祭の予定が入ったため便を変更し、命拾いした。この時は彼の発言が炎上したりもしたのだが、本人にはトラウマとして残り、その後の信仰心や、人生を大切にする考えを強固にしたのは間違いない。
キャリアもプライベートもすべて順調のマーク・ウォールバーグには、長年の夢がある。それは1970年代の人気ドラマ『600万ドルの男(サイボーグ危機一髪)』の映画化。肉体改造を受けた宇宙飛行士が活躍するこの作品で、マークは長年プロジェクトを進め、一時は2019年公開予定で監督も決まったりしたが、なかなか実現していない。タイトルもSix Million(600万ドル)からSix Billionの『60億ドルの男』にアップデートされ、マーク自身、「他のどんな作品よりも優先したい」と語っていることから、そろそろ始動するのでは……と、つねに噂されてもいる。少なくとも最強の宇宙飛行士役を演じる日をイメージしながら、今日もマークはジムでの肉体作りを続けているのではないだろうか。
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Photo by AFLO