Safari Online

SEARCH

CULTURE カルチャー

2024.06.20


萩原利久「準備をして初めて、物作りのスタートラインに立てる」


萩原利久(はぎわら・りく)/1999年2月28日生まれ。埼玉県出身。主な出演作に『おとななじみ』(2023年)、『キングダム運命の炎』(2023年)、『ミステリと言う勿れ』(2023年)などがある。

『孤狼の血』シリーズなどで知られる柚月裕子のミステリー小説を映画化。物語のはじまりは、県警の広報職員・森口泉の親友である新聞記者が変死体で発見された事件から。その1週間前、親友と仲違いしていた泉は自責の念もあり、事件の調査を独自に開始。だが、事件の裏に潜んでいたのは思いがけない真実だった……。亡き友の無念を晴らそうとする泉の奮闘と、彼女の前に突きつけられる怒涛の展開が見どころ。そんな主人公に淡い恋心を寄せ、共に事件を追うことになる警察官・磯川俊一役の萩原利久に話を聞いた。

――物語に対してどんな印象を持ちましたか?

いろいろな視点が出てくる物語だと思いました。事実は1つだけど、見る立場や環境で見え方や感じ方が変わってくる。そういった視点の多さが物語の面白さの1つですよね。それがまさに、現代の社会にも通じていて。インターネットが浸透し、情報を得るのが簡単になった時代の中で、僕自身もSNSを使っていますし、たった1行の見出しを見ただけでニュースを知った気になることもあります。でも、物事にはいろいろな捉え方があるのだと改めて気づかされました。

――萩原さん演じる磯川俊一にも、彼なりの視点がありますね。

磯川は本当にクリーンな子で、僕の中では白色のイメージでした。泉(杉咲花)に協力し、事件を調査することになりますが、その中で聞くもの、見るものを一番ストレートに受け止めている。そこに濁りがあると別のニュアンスがついてしまいますから、なるべく染まっていないピュアな存在として演じるようにしました。

――磯川と泉の関係をどう捉えましたか?

原(廣利)監督と最初に確認し合ったのが、まさにその部分でした。磯川は泉に対するちょっとした恋心もあり、彼女を手伝いたくなる。すごくシンプルな動機ですが、シンプルな分、突き動かす力は大きくも小さくもなり得ますよね。変な話、恋心ゆえに犯罪に手を染める人もいますし。なので、どれほどの恋心かを調整した結果、事件を知り、真相を知りたいと思うようになる磯川自身の変化も見せたいなと思いました。

――非常に見応えのある作品になりましたが、撮影現場での“気づき”はありましたか?

原監督は大抵、1シーンを長回しで撮られるんです。その緊張感が僕は嫌いじゃなかったし、今後にも生かせるんじゃないかという手応えがありました。なんだか研ぎ澄まされましたし、視野が広くなった気もして。あの感覚をいろいろなことに応用できるようになったら、また1つ成長できるのかなと思います。
 

  

 


――昨年に続き、今年も作品が続いていますね。生活のバランスは取れていますか?

確かに、連ドラの撮影に入るとリズムが乱れがちです。撮影スケジュールはハードだけど、趣味のNBA観戦も諦めたくないし…。試合を見る時間をどう捻出すればいいか考えた結果、お風呂に浸かりながらセリフを覚えるサイクルにしました(笑)。そしたら、1日が上手く回るようになりましたし、湯船に浸かった分だけ元気になった気もしています。

――試合を見ない選択肢はないんですね(笑)。

カラダ云々じゃなく、マインドのケアなので(笑)。見ないと気になって眠れないし、仕事中も「(応援しているチームが)大丈夫かな〜?」となっちゃう。本当は休日に見るべきなんでしょうけど、それこそ情報が溢れている時代ですからネタバレを回避しながら過ごす難易度がものすごく高くて。

――『朽ちないサクラ』の撮影中は?

NBA的にもすごく大事な時期でした(笑)。撮影現場にNBA好きのスタッフさんがいて、毎日一緒に盛り上がっていましたね。世間はWBCで盛り上がっている時期だったんですけど、我々はNBAに集中していました。あっ、撮影とNBAに(笑)。

――(笑)。そんな萩原さんにとって、俳優としてのマイルールは?

またNBAの話で申し訳ないんですけど、コービー・ブライアントの哲学に“マンバ・メンタリティ”というものがあって。「昨日よりもっと良い自分になるために努力を惜しまない」という内容なんですが、それって誰しもの人生に置き換えられますよね。彼らが試合に向けて練習を重ねるのは、僕にとっては撮影に向けて準備をするということ。シンプルですけど、これ以上はないのかなと思います。向上し続けるのって大事ですし、役者は満足したらその時点で終わりだと思うので。

――ただし、俳優の場合は結果が見えにくいです。

彼らは勝敗や記録で成果を実感するでしょうしね。逆に言うと、それでしか評価されないのがシビアだなとも思います。でも、過程はどちらも同じで。「練習でできなかったことは試合でもできない」とコービー・ブライアントは言っているんですが、僕らもやっぱり準備せずにできることってないんです。もちろん、思いがけないものが生まれる瞬間もありますけど、それは準備を経たから。セリフを覚えるのはもちろん、役について考えるのも準備。準備をして初めて、物作りのスタートラインに立てるのかなと思っています。

――趣味の分野からの学びがお仕事に生きているんですね。

いい感じに作用し合っていると、自分では思っています(笑)。たぶん僕の性格だと、俳優をしていて、趣味も“映画を見ること”とかだとバランスが悪くなる気がして。ある意味、乖離した部分に趣味があるのがいいのかなと。それこそ、僕はステフィン・カリーのような俳優になりたくて。カリーは僕の一番好きな選手なんですけど。

――どういうことですか?(笑)

彼は恵まれたフィジカルを持つ人がたくさんいる世界で、ものすごいパワーやスピードがあったわけではないのに、努力して技術を向上させて上り詰めた人。そんな彼の人間性や仕事への向き合い方がすごく好きなんですが、ダイレクトには比べられないじゃないですか。彼はスリーポイントを入れなきゃいけないけど、僕にその技術は必要ないし。もし、憧れの人や目標とする人が俳優さんだったら、具体的に比べちゃいますよね。でも、僕の場合は誰にも比べられず、邪魔されず、伸び伸びと目標にできるというか(笑)。

――あくまでも頭の中で、自分事に置き換える?

そうです。お芝居の世界でも、自分にないものを持っている人はたくさんいるわけで。その中で「ないからできません」と言うこともできますけど、そうはしたくないし。だったら、「自分にしかないものってなんだろう?」と考え、自分の武器を理解して、伸ばし切って戦うのが素敵なんじゃないかなと思っています。

――では、萩原さんが現時点で自覚している“武器”は?

根がちょっとオタクなところですかね。追求する作業が好きなんです。掘っても掘っても満足できない性格で。「満足したら終わり」と言いましたけど、満足することなく、永遠に追い続けられる。そこに楽しさを感じていることが、1つの武器なのかなと自分では思っています。

『朽ちないサクラ』6月21日公開
原作/柚月裕子 監督/原廣利 脚本/我人祥太、山田能龍 出演/杉咲花、萩原利久、森田想、駿河太郎、豊原功補、安田顕 配給/カルチュア・パブリッシャーズ
2024年/日本/上映時間119分

●こちらの記事もオススメ!
安田顕「“自分はこうである”と思い込むことが役者にとって大切な作業」 

  

 

 
 
 
 
 
この投稿をInstagramで見る
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

雑誌『Safari』公式アカウント(@safarimagazine_official)がシェアした投稿

 

  

 

 
取材・文/渡邉ひかる text:Hikaru Watanabe
©2024 映画「朽ちないサクラ」製作委員会
これでライフスタイルが見違える!新鮮アイテムでいつもの夏をアップデイト!
SPONSORED
2025.06.25

これでライフスタイルが見違える!
新鮮アイテムでいつもの夏をアップデイト!

いよいよ待ちに待った夏。バカンスを楽しみにしている人も多いだろう。たとえ予定がなくても、気温の上昇とともに気分をぐっと上げていきたい。そんなときに必要なのが、ライフスタイルをアップデイトするためのアイテムだ。これさえあれば、いつもとはひと…

〈オメガ〉の“プロフェッショナルライン”に注目。復活した“レイルマスター”と 新色の“シーマスター”、心躍るふたつの名作。
SPONSORED
2025.06.27

〈オメガ〉の“プロフェッショナルライン”に注目。
復活した“レイルマスター”と 新色の“シーマスター”、心躍るふたつの名作。

〈オメガ〉を象徴するコレクションとして、1957年に創設された“プロフェッショナルライン”3部作。その中でも“レイルマスター”は、鉄道職員や電気技師といった強い電磁場が発生する場所で作業する人々を耐磁性の高さで支えた名作。そして、“シーマ…

TAGS:   Urban Safari Watches
〈ブランパン〉の名シリーズから新作登場。大人の休日にはシックなダイバーズを。
SPONSORED
2025.06.27

〈ブランパン〉の名シリーズから新作登場。
大人の休日にはシックなダイバーズを。

時計の人気トレンドにヴィンテージスタイルがある。1953年に誕生し、基本デザインを継承する“フィフティ ファゾムス”もそのひとつかもしれない。だがそこに懐古趣味はなく、常に新鮮な魅力を感じさせる。機能美という不変の価値があるからだろう。新…

TAGS:   Urban Safari Watches
リーダーにふさわしい〈グラスヒュッテ・オリジナル〉の一本。端正な機械式時計で仕事にも優雅さを。
SPONSORED
2025.06.27

リーダーにふさわしい〈グラスヒュッテ・オリジナル〉の一本。
端正な機械式時計で仕事にも優雅さを。

クルマやカメラなどドイツの工業製品の高い機能と品質は世界的に知られる。時計も例外ではない。〈グラスヒュッテ・オリジナル〉はその代表格だ。クラシカルなスタイルに決して派手さはない。だが漂う気品は、伝統に培われた揺らがぬ時計作りの哲学と美学を…

TAGS:   Urban Safari Watches
〈パネライ〉の傑作がさらなる進化。タフさと品格を併せ持つエレガントダイバーズ。
SPONSORED
2025.06.27

〈パネライ〉の傑作がさらなる進化。
タフさと品格を併せ持つエレガントダイバーズ。

歴史に裏打ちされた信頼性と機能。そして、存在感を放ちながら、品を保つデザイン性。そのすべてを兼ね備えた〈パネライ〉の“ルミノール マリーナ”は、知性と余裕をまとう大人にふさわしい腕時計だ。その傑作コレクションが今年、大胆な進化を遂げたとい…

TAGS:   Urban Safari Watches
〈エドックス〉の人気ダイバーズ時計が日本限定で登場!“とろやわ”ストラップで夏のビーチを満喫!
SPONSORED
2025.06.25

〈エドックス〉の人気ダイバーズ時計が日本限定で登場!
“とろやわ”ストラップで夏のビーチを満喫!

煌めく太陽に、白い砂浜、青い海。夏のビーチ遊びの季節がやってくる! ラフなビーチコーデの手元だって、やっぱり快適さを求めておきたい。そんな海遊びにはラバーストラップのダイバーズ時計が最適だ。そこでプッシュしておきたいのが〈エドックス〉の日…

TAGS:   Fashion Watches
〈ザ・ブセナテラス〉で過ごす憩いの時間!沖縄バカンスは贅沢でリラクシングなステイを!
SPONSORED
2025.06.25

〈ザ・ブセナテラス〉で過ごす憩いの時間!
沖縄バカンスは贅沢でリラクシングなステイを!

〈ザ・ブセナテラス〉は、日々の疲れを癒し、日常では味わえない贅沢な時間を過ごせる。充実したホテルの設備・サービス、海に面した立地を生かしたマリンアクティビティプログラム。ここは1泊2日くらいでは気づけない、魅力を秘めている。パートナーとと…

TAGS:   Stay&Travel
サンダルは履き心地と見た目のよさで選ぶ!夏に大活躍するサンダルは、〈ロンハーマン〉別注が優秀!
SPONSORED
2025.06.23

サンダルは履き心地と見た目のよさで選ぶ!
夏に大活躍するサンダルは、〈ロンハーマン〉別注が優秀!

夏がやってくると気分も開放的になり、休日はお出かけモードに。街にショッピングに行くのもいいし、たまにはアウトドアで自然の中に身を置くのも気持ちよさそうだ。もちろん、ご近所を散歩する程度で、家でゆっくり過ごすというのも幸せ。で、そのどんなシ…

TAGS:   Fashion
〈ジラール・ペルゴ〉夏の限定モデルが登場!サマーバカンスの相棒は“懐色”の復刻ダイバーズで!
SPONSORED
2025.06.20

〈ジラール・ペルゴ〉夏の限定モデルが登場!
サマーバカンスの相棒は“懐色”の復刻ダイバーズで!

マニュファクチュール=自社一貫生産体制を2世紀以上も貫き続けるスイス、ラ・ショー・ド・フォンの名門時計ブランド〈ジラール・ペルゴ〉。そのコレクションはどれもクラシカルかつドレッシーで気品に満ちたもの。そんなイメージを、文字どおりあざやかに…

TAGS:   Fashion Watches

NEWS ニュース

More

loading

ページトップへ