『ゴッドファーザーPARTⅢ』
まさしく『ゴッドファーザー』の登場は、ギャング映画のスタイルを一変させた。ステレオタイプなキャラクターではなく、普遍的で生々しい人間模様を展開したうえ、マフィア内部のパワーゲームなど組織の構造をリアルに描出したのだ。
しかも『ゴッドファーザー』の衝撃を受け、真っ先に優れたフォロワー作品を送り出したのは、実は日本の映画界である。当時東映の社長だった岡田茂(1924年生~2011年没)は『ゴッドファーザー』からヒントを得て、また同時期のイタリア映画『バラキ』(1972年/監督:テレンス・ヤング)の後をすぐ追うように、1973年1月に深作欣二監督の『仁義なき戦い』を公開。
かつての任侠路線とは異なるリアリティ重視のヤクザ映画=“実録路線”をスタートさせた。さらに『ゴッドファーザー』や『仁義なき戦い』とはまた異なる現代的なスタイルを目指したのが、北野武監督の『アウトレイジ』(2010年)である――といった具合に、『ゴッドファーザー』を起点とする作品の系譜や体系は広く長く続いていく。
『ゴッドファーザーPARTⅢ』(撮影中)
もちろんアメリカ映画の『スカーフェイス』(1983年/監督:ブライアン・デ・パルマ)や『グッドフェローズ』(1990年/監督:マーティン・スコセッシ)、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(1984年/監督:セルジオ・レオーネ)、イタリア映画の『ゴモラ』(2008年/監督:マッテオ・ガローネ)などなど、世界各国のすべての後続ギャング映画には、『ゴッドファーザー』の消えないツメアトがタトゥーより深く刻みつけられていると言っても過言ではない。
『ゴッドファーザーPARTⅢ』
ちなみにこの栄光に包まれた第1作&第2作のあと、なんと1990年になって、シリーズ完結編と銘打たれた『ゴッドファーザーPARTⅢ』が発表された。製作は監督のコッポラ自身が手掛け、原作者マリオ・プーゾも共同脚本を務めたほか、出資にも協力。あの険悪な仲であった撮影監督ゴードン・ウィリスも参加している。
『ゴッドファーザーPARTⅢ』
描かれるのは1979年、アル・パチーノ扮するマイケル・コルレオーネの最晩年の物語。そしてマイケルの長女メアリー・コルレオーネ役として、のちに『ヴァージン・スーサイズ』(1999年)や『ロスト・イン・トランスレーション』(2003年)などの監督として名を馳せるコッポラ・ファミリーの才媛、撮影当時18歳のソフィア・コッポラが出演している。
しかしその頃は「親の七光り」と世間から揶揄され、第11回ゴールデンラズベリー賞(通称ラジー賞。逆アカデミー賞の祭典)で最低助演女優賞と最低新人賞をW受賞してしまった。実のところ、ソフィアはシリーズ第1作のラスト、洗礼を受ける男児の役で赤ちゃんの時に出演しているのだが。
『ゴッドファーザーPARTⅢ』
なにかと“蛇足”と評されることも多い『ゴッドファーザーPARTⅢ』だが、しかしコッポラの意地と揺るがぬ美学が感じられて、筆者はとても好きな作品である。これもまた『ゴッドファーザー』が残したツメアトのひとつとして、シリーズのファンなら愛さずにいられない、のではなかろうか?
(前編、中編)
『ゴッドファーザーPARTⅢ』(撮影中)
『ゴッドファーザー』
製作年/1972年 原作・脚本/マリオ・プーゾ 製作/アルバート・S・ラディ 監督・脚本/フランシス・フォード・コッポラ 出演/マーロン・ブランド、アル・パチーノ、ジェームズ・カーン
『ゴッドファーザーPART II』
製作年/1974年 原作・脚本/マリオ・プーゾ 製作・監督・脚本/フランシス・フォード・コッポラ 出演/アル・パチーノ、ロバート・デュバル、ロバート・デ・ニーロ、ダイアン・キートン
『ゴッドファーザーPART III』
製作年/1990年 製作・監督・脚本/フランシス・フォード・コッポラ 脚本/マリオ・プーゾ 出演/アル・パチーノ、アンディ・ガルシア、ダイアン・キートン、ソフィア・コッポラ
Photo by AFLO