『ゴッドファーザーPARTⅡ』
製作に携わったロバート・エヴァンス(1930年生~2019年没)は、『くたばれ!ハリウッド』という自伝(1994年刊行。2002年には同名のドキュメンタリー映画も発表)もよく知られる伝説のプロデューサー。『ジ・オファー』でも「年中、小麦色の肌をした」業界きってのチャラ男として描かれている。
『ローズマリーの赤ちゃん』(1968年/監督:ロマン・ポランスキー)や、当時妻だったアリ・マッグローを主演に起用した『ある愛の詩』(1970年/監督:アーサー・ヒラー)などを大ヒットさせ、“八番目の山”と呼ばれていたパラマウントの業績不振を立て直したが、やがて破天荒な公私混同ぶりが災いして破滅に向かう。
ロバート・エヴァンス
また当時のコッポラも生意気な若僧として有名(しかもワーナー・ブラザースとの仕事が頓挫して借金まみれだった)。特に8歳年長である撮影監督のゴードン・ウィリスとの対立は凄まじく、現場で衝突を繰り返した。エヴァンスとマッグローの関係の破綻や、コッポラとウィリスの大喧嘩の様子は『ジ・オファー』の第7話『ミスター・プロデューサー』でも描かれている。いくら妥協知らずの天才・異才たちが全力でぶつかり合った結果とは言え、これだけのカオスから完璧な映画が生まれてくるのだから、クリエイションの世界は本当に不思議である。
『ゴッドファーザーPARTⅡ』
さて、映画の内容についてはもはや説明不要だろう。ニューヨーク最大のマフィア組織を築く通称ドン・コルレオーネこと、ヴィトー・コルレオーネ(マーロン・ブランド)率いるファミリーの物語にして、米国の裏社会を通したイタリア系移民の叙事詩。コッポラも『ゴッドファーザー』について「ドン・コルレオーネはまるでリア王だ。彼の場合、娘じゃなく息子たちとの関係だが」と語ったように(『ジ・オファー』第2話『警告』より)、シェイクスピアや、あるいはギリシャ悲劇を彷彿させる愛と絆と裏切りの物語として、移民社会やマフィアの年代記に重厚な神話的強度を持たせた。
『ゴッドファーザーPARTⅡ』
さらに『ゴッドファーザー』の大成功を受け、ヴィトー亡き後、新たな“ドン”となった三男のマイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ)を主人公とする形で、続編『ゴッドファーザーPARTⅡ』が早くも1974年に発表される。
本作はマイケルの後日談と、父ヴィトーの青年時代という前日談を並行させながら描く凝った重層構造を取り、ドラマ的充実という点では前作よりさらに高く評価された。第47回アカデミー賞では、前作の成果を上回る6部門のオスカーを獲得。
『ゴッドファーザーPARTⅡ』
特に注目されたのは若き日のヴィトーを演じたロバート・デ・ニーロで、大抜擢の起用だった彼はいきなりアカデミー賞助演男優賞を受賞した。『ゴッドファーザー』&『ゴッドファーザーPARTⅡ』は、アル・パチーノとロバート・デ・ニーロという、まだマイナーな存在だった新進俳優を一躍スターダムにのし上げたことでもエポックな里程標となったわけだ。(後編に続く)
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