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CULTURE カルチャー

2022.08.27

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』三部作が映画界に残したものとは?
ツメアト映画~エポックメイキングとなった名作たち~Vol.11

 



『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)

「ヒル・バレーに住むマーティ・マクフライは、スケボーとダイエット・ペプシとロックを愛し、GFのジェニファーに夢中な高校3年生。唯一の不満といえば、上司のビフに奴隷扱いされている気の弱いパパとアル中のママくらいなもの」――。
 

 
これは1990年公開、『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3』の劇場パンフレットに記載してあったイントロダクション「前2作のストーリーを簡単に紹介しよう」の書き出しの一節である。そう、トリロジー(三部作)で完結した『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(以下『BTTF』)は、もし“40代男性”限定でオールタイム映画投票を行ったらベストワンに輝くのではないかと思える名作中の大名作。いくら日々の仕事で疲れたカラダを引きずる中年に成り果てていても、脳内再生するだけでココロは無邪気な17歳にタイムスリップ。本当に幸福な気持ちになる。タイムマシンに改造したデロリアンに乗った高校生マーティ(マイケル・J・フォックス)と科学者にして珍発明家ドク・ブラウン(クリストファー・ロイド)の時をかける“現在・過去・未来”の大冒険は、『ドラえもん』に熱狂した子供にとって、次に夢を見させてくれる完全無欠のユートピアであった。 
 

 

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)

製作/スティーヴン・スピルバーグ×監督/ロバート・ゼメキスという最強タッグの代表作でもある『BTTF』だが、この伝説の三部作のトリビアをいちいち挙げていけばキリがない。冒頭の説明文にあった“ヒル・バレー”とはカリフォルニア州にある架空の都市の設定で、『E.T.』(1982年/監督:スティーヴン・スピルバーグ)と並んで80’s米国サバービア(郊外)の生活様式のイメージを世界的に広めたとか。マーティ役のマイケル・J・フォックス(1985年の第1作出演当時は24歳)が、当時まだ日本上陸していなかった〈ギャップ〉のポケットTシャツ(赤)をインナーに着用していたとか。歴代にわたってマクフライ家の天敵となる悪役――イジメっ子のビフ・タネンは、不動産王と呼ばれていた頃のドナルド・トランプがモデルだとか……。
 

  



『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)

音楽ネタだけ取っても、ヒューイ・ルイスやヴァン・ヘイレンやチャック・ベリーなど、もうこのへんは“いまさら感”がものすごい。『BTTF』の小ネタに関しては、興味を持ったポイントをネット検索すれば、大抵何でも出てくるはずだ。

その中でもあえて特筆すべきティテール&アイテム系を挙げるなら、〈ナイキ〉のスニーカーということになるだろう。第1作でマーティが履いていたのは〈ナイキ〉の“ブルインレザー”だ。そしてドク役のクリストファー・ロイドがデロリアンから降り立つ時に履いていたのが、オレンジ色の“バンダル ハイ”というモデルである。また2015年の未来(!)を舞台にした『PART2』(1989年)では、マーティは未来仕様の〈ナイキ〉のスニーカーを履いていた。この劇中モデルを忠実に再現した“エアマグ”が2011年に限定発売。日本には1足だけやってきて、公開オークションが開かれてなんと220万円で落札された。2016年には自動で靴ひもが閉まる“パワーレース”も搭載された超ハイテクモデルが89足限定で発売されたことも話題に。まさしく夢のタイアップだが、現物入手が困難すぎて都市伝説級のレアアイテムとなっている。
 



2017年の第89回アカデミー賞でセス・ローゲンがマイケル・J・フォックスとデロリアンに乗って登場。その足元には、自動靴ひもの例の1足が!

ところで『BTTF』はトリロジー丸ごとでワンパッケージなので、三部作の中でどれが好き?――というのはファンにとっては愚問である。だが、それでも年々人気と特別感が高まっているのは『PART2』ではなかろうか。というのも、先ほど述べたように、本作は2015年の“ありえたかもしれない別の未来”を描いているから。

改めて『BTTF』トリロジーの時代旅行を整理すると、第1作では当時の“現在”=1985年からはじまり、そこから30年前――1955年にタイムスリップ。この時代はアメリカのゴールデンエイジ(黄金時代)と呼ばれた頃で、アイゼンハワー大統領の安定重視政策により国民の豊かな総中流化がはじまった。幸福な家庭生活を描くテレビドラマ『アイ・ラブ・ルーシー』が流行し、ディズニーランドが開園。またロックンロールなどティーン特有のサブカルチャーも元気に育っていく。そして『PART3』では、フロンティア・スピリットみなぎる1885年の西部開拓時代が舞台となる(ゆえに西部劇調の仕上がりになっている)。つまり『BTTF』の物語は、たくさんの矛盾や問題を抱えながらも、アメリカが前向きだった“良き時代”を選んで構成されているのだ。
 



『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』(1989年)

ということは、本当は2015年もそうなるはずだった、ということではなかったか。まさか9.11後の長い混乱を経て、悪役ビフが大統領になる(トランプ政権=2017年~2021年)ような時代が来るとは思っていなかっただろう。確かに『PART2』という映画には、スクリーンに広がる30年後の未来社会を目にした時のワクワクする高揚感――健全な進歩史観に基づいたピュアな高揚が刻まれている。
 

  



『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』(1989年)

現実の2015年には『BTTF』30周年として様々なイベントが催され、映画が夢想した“2015年10月21日”の未来予想図が実際どれだけ当たっていたか? という比較記事などもよく出ていた。もちろんタイムマシンはまだ発明されていないし、空飛ぶクルマやホバーボードも周囲には見当たらない。だが、いちばんの誤算、というか決定的に失われたものは、『BTTF』に宿っていた“明るさ”ではなかろうか。環境破壊や戦争、パンデミックに経済格差など、我々の未来は不安要素だらけで、いつしかSF・ファンタジー系映画が差し出すものは、お先真っ暗のディストピアばかりになってしまった。なので、いくら『BTTF』のツメアトに影響を受けた後続がドラマ構成や作品設計だけ真似てみても、この本質的な“明るさ”は、もはや再現不可能なのである。
 



『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』(1989年)

……と、なんだか文章が暗い調子に傾いてきたので、筆者はいま書きながらあせっている。でも、このまま突き進んでしまおう。『PART2』の劇中には“カフェ80’s”という、マイケル・ジャクソンの『今夜はビート・イット』が流れる懐古趣味のお店が登場する。映画の中のヒル・バレーの住民たちがレトロなカルチャーを楽しむように、『BTTF』が提示した“2015年”のきらめきは、あくまで“80’s”の幻想なのである。なんて、めっちゃビターな結論にたどり着いてしまって本当に恐縮だが、しかしそれでも、いやそれだからこそ!――このトリロジーの”
明るさ”は貴重だし、我々が『BTTF』という永遠の宝箱を手にしている幸福には変わりないのだ。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』
製作年/1985年 製作総指揮/スティーヴン・スピルバーグ 監督・脚本/ロバート・ゼメキス 脚本/ボブ・ゲイル 出演/マイケル・J・フォックス、クリストファー・ロイド、リー・トンプソン、クリスピン・グローバー
 



『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』(1990年)
 

  

 

 
文=森直人 text:Naoto Mori
Photo by AFLO
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