映画が熱い支持を集め、シリーズ化されると、その“周辺”のドラマも気になる。これは人気作品にとっては自然な流れ。シリーズの本道とは少し離れた部分が、逆に新鮮だったりもする。みんな大好きな『キングスマン』のこの最新作は、まさにそんな一本になっている!
2015年に公開された『キングスマン』は、英国スーツをお洒落に着こなし、目にも鮮やかな戦闘、および諜報テクニックをもったスパイ集団の活躍に惚れぼれさせ、「マナー(礼儀)が紳士を作る」という名セリフも、われわれ観客を陶酔させた。2017年には続編が完成。今回は3本めにあたるのだが、時代は過去にさかのぼって、世界最強ともいえる秘密スパイ組織の誕生の瞬間が描かれる。つまり前2作のメンバーは基本的に登場しないので、正統が3作めというより“エピソード0(ゼロ)”的な作り。物語のはじまりは、第一次世界大戦が迫る1914年のヨーロッパ。イギリスの名門貴族、オックスフォード公が、ドイツやロシアの危険な動向を察知し、有能な面々を使って世界の運命を変えようとする。
このオックスフォード公と諜報仲間がキングスマンの原型なのだが、ストーリーの軸となるのはオックスフォード公と、その若き息子のコンラッド。スパイの能力がゼロの息子が、どのように1人前に成長するのか。そこは想定外の展開で、感動も盛りこまれる。戦場を背景にしたシーンは、かなりシビア&ハードだったりもする。とはいえ、これは『キングスマン』の世界なので、やりすぎで大胆、痛快な演出もたっぷり。英・露・独のトップ3人を同じキャストが演じていたり、強烈な敵キャラ、ラスプーチンのダンスバトルなど、呆気にとられる瞬間が多数。クライマックスのアクションも、度肝を抜かれつつ、笑ってしまったりも!? “キングスマンらしさ”と“キングスマンらしからぬ魅力”が同居し、予期せぬ後味がもたらされることだろう。
『キングスマン ファースト・エージェント』12月24日公開
原案・製作・監督・脚本/マシュー・ボーン 出演/レイフ・ファインズ、ジェマ・アータートン、リス・エバンス、マシュー・グード 配給/ディズニー
2021年/アメリカ/上映時間131分
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