Safari Online

SEARCH

CULTURE カルチャー

2023.10.28


【深掘り考察】映画『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』が描くアメリカの黒歴史とは? PART2



スコセッシが作る映画はどれも、ハリウッド的な勧善懲悪からはほど遠い。登場人物たちはエゴや欲得や愚かさゆえに倫理の道を踏みはずし、近しい人を裏切り、自分自身をも裏切って、破滅したり落魄したりする。『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』のアーネストも、「悪事に加担していた男が、やがて良心に目覚めて叔父を告発する」という短絡的な成長譚には収まらない、矛盾だらけの人物として描かれている。

極論すると本作は、原作にあった謎解きの要素をほぼ完全に排除している。史実だから隠す必要がない、というのもあるが、オーセージ族からも尊敬を集めていたウィリアム・ヘイルが事件の主犯であり、甥のアーネストが共犯者であることを、映画の序盤から一切隠そうとしていないのだ。その結果、われわれはアーネストという人物の整合性のなさを、まるで生態観察のように目撃することになる。 

 
新たに住み着いた町でモリーと出会い、恋に落ちる若者もアーネストなら、ヘイルの命令でモリーの妹夫婦を爆殺する犯罪者を探して回るのもアーネスト。スコセッシは、そこに心理的葛藤を見出して映画エモーショナルに盛り上げるよりも、矛盾に満ちたアーネストやヘイルの姿を淡々と映し続けるのである。
 

 
結果としてアーネスト・バークハートは、過去にディカプリオが演じたどんな役よりも、愚かで思慮が足りず、その場限りでウソをつく薄っぺらい人物になった。そしてディカプリオは、幼い頃から天才と賞されてきた演技力をこの役に注ぎ込み、200%のみっともない姿をスクリーンにさらけ出してみせるのである。

アーネストのみっともなさ、情けなさは、同調圧力に抵抗できない大衆心理や、状況次第で自己の尊厳すら蝕む心の弱さを象徴しているとも言える。おそらくヒロイックな活躍をするトム・ホワイトより、スコセッシには身近で親しみすら覚えるキャラクターだったろう。 

 
実際、スコセッシの長編デビュー作『ドアをノックするのは誰?』(1967年)でハーヴェイ・カイテルが演じた主人公は、スコセッシ自身をモデルにした町のゴロツキだが、自尊心を取り繕うために恋人に対して最低最悪の失言をしてしまう。いま改めてアーネストの最後の場面と比べると、両者が驚くほど似た失敗をしでかしているのがわかる。スコセッシとは、なんと一貫性のある監督なのか。

ただし『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は、アーネストの愚かさやウィリアム・ヘイルの尊大さが人種差別や歪んだ優越意識と結びつき、マイノリティへの搾取と虐殺を引き起こしたアメリカの黒歴史を浮かび上がらせる視線を有している。

「現実に起きた悲劇を内部から描く」というスコセッシの狙いについては、正直モリーよりも白人男性であるアーネストに力点が置かれたことで、決して十全には成し遂げられていない印象は残る。実際、作品に協力したオーセージ族の人たちも、完成した作品については賛否では片付けられない複雑な心境を表明している。それは、人間の弱さに惹きつけられてやまないスコセッシという作家の本領であり、また限界でもあるのだろう。いずれにせよ、徹底して個人の内面を掘り下げてきたスコセッシが、社会性を備えた巨匠へと成長したことを証明する作品であることは間違いない。(PART3に続く)
※本記事は4部構成になっております。
 

 

 
文=村山章 text:Akira Murayama
画像提供 Apple / 映像提供 Apple
元サッカー日本代表・槙野智章も注目する“アミノバイタル® アミノプロテイン”!ルーティンを維持する理想の相棒!
SPONSORED
2026.06.30

元サッカー日本代表・槙野智章も注目する“アミノバイタル® アミノプロテイン”!
ルーティンを維持する理想の相棒!

現役時代からカラダ作りに強いこだわりを持つ元サッカー日本代表の槙野智章。現在もそれは変わらず、毎日のルーティンやトレーニング後のケアが大切だという。そんな彼が今注目しているのは、“アミノバイタル® アミノプロテイン”。カラダと向き合い続け…

テカりに打ち勝つ美容液が決め手に!?アワードで選手たちのかっこよさを支えた〈SHISEIDO MEN〉!
SPONSORED
2026.06.21

テカりに打ち勝つ美容液が決め手に!?
アワードで選手たちのかっこよさを支えた〈SHISEIDO MEN〉!

シーズン中に活躍した選手並びにチームを讃える“B.LEAGUE AWARD SHOW 2025-26”。受賞者たちは華々しくランウェイを闊歩したが、男らしくスタイリッシュなビジュアルの舞台裏には、“テカり知らずの清潔感ある肌”も一役買って…

TAGS:   Health&Beauty
上質にしてエレガント、〈ブランパン〉で時を楽しむ。複雑機構こそ大人の愉悦 ムーンフェイズを手元に。
SPONSORED
2026.06.26

上質にしてエレガント、〈ブランパン〉で時を楽しむ。
複雑機構こそ大人の愉悦 ムーンフェイズを手元に。

“フィフティ ファゾムス”に象徴される本格ダイバーズとともに〈ブランパン〉のアイデンティティを体現するのが、ドレスウォッチの“ヴィルレ”コレクション。その魅力を十二分に楽しませてくれるのが、ムーンフェイズを備えたコンプリートカレンダーモデ…

TAGS:   Watches Urban Safari
独創的にして普遍の美しさを体現する〈ラドー〉。技術と革新。セラミックの造形美。
SPONSORED
2026.06.26

独創的にして普遍の美しさを体現する〈ラドー〉。
技術と革新。セラミックの造形美。

革新的な素材使いによって、手元のお洒落に独創性とスタイリッシュさをもたらしてくれる〈ラドー〉。その真骨頂となるのが、“アナトム”と“トゥルー スクエア”というふたつのコレクション。ハイテクセラミックを駆使した造形美が、新しい“時”の楽しみ…

TAGS:   Watches Urban Safari
“阿波藍”に彩られた特別な〈オシアナス〉。美しき日本の伝統色を、手元に。
SPONSORED
2026.06.26

“阿波藍”に彩られた特別な〈オシアナス〉。
美しき日本の伝統色を、手元に。

世界初のデュアルタイム搭載フルメタルクロノグラフ電波ソーラーウォッチとして2004年に誕生して以来、高い人気を誇る〈オシアナス〉。海に着想を得た“青”の世界観を追求し続けてきたその配色に、また新しい魅力がもたらされた。伝統技法を取り入れた…

TAGS:   Watches Urban Safari
〈エドックス〉の日本限定モデルは真っ黒ダイバーズ!大人のバカンス姿はオールブラックで引き締めを!
SPONSORED
2026.06.25

〈エドックス〉の日本限定モデルは真っ黒ダイバーズ!
大人のバカンス姿はオールブラックで引き締めを!

淡いトーンのリラックス感あるリゾート姿だからこそ、どこかに引き締める要素が必須だ。ならば〈エドックス〉の日本限定の“真っ黒ダイバーズ”時計はどうだろう? 余裕のある大人のサマーバカンスには、こんなステルス仕様な腕元の相棒が効果的!

TAGS:   Watches
〈エドックス〉×〈ムータ・マリン〉のコラボ時計第2弾が登場!夏男の腕に映える“海をまとう”タイムピース!
SPONSORED
2026.06.25

〈エドックス〉×〈ムータ・マリン〉のコラボ時計第2弾が登場!
夏男の腕に映える“海をまとう”タイムピース!

防水時計のパイオニアとして知られるスイスの老舗時計ブランド〈エドックス〉。そしてラグジュアリーな大人の海スタイルを提案する〈ムータ・マリン〉。そんな夏を象徴する2大ブランドのコラボ第2弾が実現。“海をまとう”デザインにタフな機能性が備わっ…

TAGS:   Fashion Watches

NEWS ニュース

More

loading

ページトップへ