『かごの中の瞳』『クレイジー・リッチ!』
ブレイク・ライブリー主演の心理ミステリー『かごの中の瞳』、アジア系の俳優ばかりが出演しているにも関わらず全米でヒットを飛ばしている話題作『クレイジー・リッチ!』をピックアップ!
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物語で選ぶ編①
『かごの中の瞳』
ムネアツなポイントは?
・男性にとっては安心できない作品!?
・妻の視力が回復ことで夫婦に亀裂が入る
・初めて見た夫の姿に落胆!?
・すれ違っていく夫婦の心理描写が絶妙!
テレビシリーズ『ゴシップガール』で一躍トップスターとなったブレイク・ライブリーが主演。そして『007/慰めの報酬』のマーク・フォースターが監督・脚本とくれば、作品の中身は保証されたようなもの。安心して背もたれに寄りかかって鑑賞したいところだが、男性にとってはそうもしていられないのが本作。『キング・オブ・コント』で優勝した3人組、ハナコの最後のオチが「女子、ムズッー!」と、女性心理の複雑さを嘆いたセリフだったけれども、まさにそんな気持ちにさせられる作品だからだ。
主人公ジーナは、子供の頃に遭った交通事故で視力を失ってしまう。しかし夫ジェームズの献身的な支えにより、幸せな結婚生活を送っていた。そんな中、角膜移植により片目の視力を取り戻すことに成功する。普通ならばココでハッピーエンドなのだが、本作はその先が果たして幸せな結末なのか? をサスペンスタッチで描いていくのだ。
再び外の世界を見ることができるようになったジーナは、はじめて見るジェームズの姿に感激するが、同時に想像していた外見と違っていたことに落胆してしまう。夫は、なんとも地味で平凡な中年男だったからだ。視力が回復したことで、好奇心と冒険心が目覚めたジーナは、髪をブロンドに染め、お洒落な服を着こなし、性にも貪欲になっていく。一方、ジェームズは内気で清楚だった妻が変貌していく様に戸惑い、次第に嫉妬と疑念に苛まれていく。
妻の視力が回復したことで、すれ違っていく夫婦の心理描写が絶妙な本作。男性ならば、理想の外見ではなかったと落ちこむジーナの表情や、これまで買い与えてきた地味な服をバシバシ捨てる場面になんともいえない切なさを感じてしまうはず。やはり男性にとって女性は「ムズッー!」な存在というわけだ。このほか、盲目のジーナの視点を幻想的な映像と音楽で表現したり、2人の関係を暗喩するシーンを挟みこむなどマーク・フォースターの独特なセンスも楽しめる。
ラスト、ジーナは舞台で歌を披露するのだが、それはジェームズに向けて歌っているもの。その後、エンドロールで流れる歌はジェームズからのアンサーソングとなっているので、最後まで注目して観てほしい。
『かごの中の瞳』
監督・脚本/マーク・フォースター 出演/ブレイク・ライブリー、ジェイソン・クラーク 配給/キノフィルムズ|木下グループ
2016年/アメリカ/上映時間109分
9月28日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
©2016 SC INTERNATIONAL PICTURES. LTD
物語で選ぶ編②
『クレイジー・リッチ!』
ムネアツなポイントは?
・ほぼ全キャスト、アジア系!
・付き合っていた彼氏がまさかの御曹司だった!
・“誰でも楽しめる”作りで口コミが広がる
・ミシェル・ヨーらアジアスターも出演
現在、ハリウッドで最大のトピックになっている話題作が、日本でも公開される。この『クレイジー・リッチ!』、全米で公開されると初登場1位。そこから、まさかの3週連続トップをキープした。なぜ“まさか!”かというと、これがほぼ全キャスト、アジア系のハリウッド作品だからだ。もちろん同じようなタイプの作品が1位になった記録は過去にない。まさに“事件”なのである。
NYに暮らす主人公のレイチェルは、経済学が専門の大学教授。同じアジア系のニックという恋人がいて、彼の親友が結婚式を挙げることになったので、一緒にシンガポールへ向かうことに。行きの飛行機は、なんとファーストクラス! レイチェルは知らなかったのだが、ニックはシンガポールの不動産王の御曹司だったのだ。当然、ニックの家族や友人の多くは、レイチェルに対して「なんで、あなたが恋人?」という冷たい態度。周囲の思惑に振り回されながら、2人の恋が展開していく。
家柄や格差を乗り越える、『ロミオとジュリエット』や『プリティ・ウーマン』のようなストーリーだが、本作はヒロインが自立して、自分の意思もしっかり持っているところが清々しい。立場が違う人間同士の恋として、女性目線、男性目線の両方で共感できるところが魅力なのだ。実はこの物語、男性側の決意が重要ポイントになっており、全米でも最初はアジア系や女性観客の割合が多かったが、“誰でも楽しめる”巧妙な作りが口コミで広がった。
キャストには、ハリウッドで活躍するアジア系スターがズラリと顔を揃えた。大御所は、『グリーン・デスティニー』などのミシェル・ヨーで、御曹司のシビアな母親役。コメディリリーフとして『オーシャンズ8』のオークワフィナ、『ハングオーバー!』シリーズのケン・チョンが脇を固め、爆笑を誘う。そして日本生まれ、イギリス育ちで『エクス・マキナ』、『ラ・ラ・ランド』にも出演したソノヤ・ミズノの、抜群のスタイルと美しさに魅了されるはず。
それにしても中国系シンガポール人の一族のゴージャスな生活には驚くばかり。もちろん映画用に過剰に演出されているのだろうが、有名なホテル、マリーナ・ベイ・サンズの屋上プールでのパーティなど、とにかくスクリーンを眺めているだけでハッピーになれるのは確実。もちろんデートムービーとして最適なのは言うまでもない!
『クレイジー・リッチ!』
原作/ケビン・クワン 監督/ジョン・M・チュウ 出演/コンスタンス・ウー、ヘンリー・ゴールディング、ミシェル・ヨー 配給/ワーナー・ブラザース映画
2018年/アメリカ/上映時間120分
9月28日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
©2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND SK GLOBAL ENTERTAINMENT
文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito