現在、世界の映画界で最もセンセーショナルな作品を届ける監督といえば、ヨルゴス・ランティモスかもしれない。ギリシャ出身の奇才ながら、直近の2作はアカデミー賞作品賞に連続ノミネート。その新作と聞けば、映画ファンの興味をかき立てるのは確実。そして、予想以上に“ぶっとんだ”怪作に仕上げてきた!
ランティモスの前作『哀れなるものたち』はアカデミー賞にて11部門ノミネートで4部門受賞。その前の『女王陛下のお気に入り』は9部門ノミネートで1部門受賞。そんな正統な実績とは裏腹に、ランティモスの作風はとにかく“攻めている”のが特徴だ。新作の『憐れみの3章』は、その攻めの姿勢が一気に爆発した感じ! あまりに大胆で衝撃的な作りに、この天才監督のセンスに平伏すことになる。本作は3つの独立したドラマで構成されたオムニバス形式。3つのドラマとは、自分の人生を取り戻すためとんでもない任務に身を捧げる男、失踪した妻が戻ってくるが別人ではないかという疑惑、そしてカルト教団の新たな教祖探し……と、どれも危うい香りが満点。そして実際に観はじめると、目を疑うような展開が用意され、とんでもない世界に引きずり込まれる感覚を味わえる。
さらに本作で最もユニークなのが、キャストたちがそれぞれ“3役”を演じている点。エマ・ストーン(ランティモスの『哀れなるものたち』でアカデミー賞主演女優賞受賞)、ジェシー・プレモンス(本作でカンヌ国際映画祭の男優賞受賞)、ウィレム・デフォーといった演技派スターたちが、3つのドラマで、まったく違う役で登場する。しかも全員、リミッターを外した怪演。この特殊な演出によって、無関係な3つのドラマに繋がりも見えてきたりも……。そんな映画のマジックに、ランティモスは果敢に挑んでいる。冒頭に流れるユーリズミックスの『スウィート・ドリームス』から音楽の使い方はおしゃれなのに、映像では背筋も凍るショックを与えたりと、1秒先すら何が起こるかわからないのが本作の魅力。上映時間は2時間44分とやや長めだが、3つのパートに分かれているので体感時間は短い。世界に愛される奇才監督の挑戦状を、是非全身で受け止めてほしい!
『憐れみの3章』9月27日公開
製作・監督・脚本/ヨルゴス・ランティモス 出演/エマ・ストーン、ジェシー・プレモンス、ウィレム・デフォー、マーガレット・クアリー、ホン・チャウ 配給/ウォルト・ディズニー・ジャパン
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