今回は、ソフトバンクからFAで移籍し、今年から巨人の一員となった甲斐拓也に注目してみたい。
甲斐がレギュラーになった2017年から24年までの8年間で、ソフトバンクはリーグ優勝3回、日本一4回を記録した。チームの司令塔を担う正捕手が移籍したとなれば、ソフトバンクは今年も優勝できるのかが注目されるし、移籍先の巨人でも優勝に導けるのかが注目されている。
もしソフトバンクが優勝できなければ「甲斐の存在は大きかった」となるだろうし、巨人が優勝すれば、「やっぱり甲斐が来てくれたからだ」という評価になるだろうが、ソフトバンク、巨人共に逆の結果となれば、
「別に甲斐の存在どうこうではなかった。甲斐がいたからソフトバンクは優勝できていたわけでもないし、甲斐が来たって巨人は優勝できなかった」となってしまう。
巨人には岸田行倫、大城卓三、小林誠司ら捕手がそろっているだけに、甲斐を獲得したことはあまり意味がないと私は見ているのだが、甲斐自身の今年に懸ける思いは並々ならぬものがあるだろうし、野球人生の全てを懸けて臨む一年となるに違いない。
もう一方で注目したいのは、彼の打撃である。足を高々と上げて下から上にブンブン振り回す。彼は決して本塁打を打てるような打者ではないはずなのに、あんなに振り回すのは打てなくなる一方ではないかと、ソフトバンク時代から危惧していた。それが証拠に、本塁打の数も、21年までは3年連続で2ケタの本塁打を打っていたが、22年は1本、23年は10本と盛り返すも、24年は5本に終わってしまっている。
新天地、巨人ではどう変わるかを見ていたところ、さっそく春季キャンプ中に、阿部慎之助監督からスイングの指導が入った。おそらく阿部監督から見ても、これまでの甲斐のスイングでは「打てない」と判断したからに違いない。
メジャーのようにブンブン振り回すスタイルから脱却した甲斐の打撃成績は今年向上するのか。私は彼のこの点についても、いい意味で期待を裏切ってくれるのかどうか、シーズンを追って注目していくことにする。
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※この記事は『昭和な野球がオモロい!』から一部抜粋して構成しております。