韓国の黒歴史を描いた映画『ソウルの春』は痛烈批判を込めた作り手たちの気概に圧倒される!
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年に何本か、センセーショナルなドラマを届けてくれるのが韓国映画。この『ソウルの春』は昨年、韓国で国民の4人に1人が劇場で観たという特大ヒット作だが、“ここまで描いちゃって、いいのか”と、韓国映画の本気に平伏すしかない内容だ。その意味で、衝撃度もスーパー級な一作である。
今から45年前の韓国で、まさかこんな事件が起こっていたとは……。本作はフィクションを交えた部分があるものの、基本は実話。1979年、韓国のパク・チョンヒ大統領が暗殺され、民主化の機運が一気に高まるなか、軍の一派がクーデターによって新たな独裁者を立てようとする。韓国の民主化が圧殺されたこの事件は“粛軍クーデター”などと呼ばれ、黒歴史となった。そこに一切の忖度も入れず、強烈な批判も込めて描いた作り手たちの気概には圧倒されるばかり。その気概が映画のパワーにつながっていくのを、本作で実感できるだろう。陸軍内の秘密組織“ハナ会”を率い、新たな大統領の座を狙うチョン・ドゥグァンと、クーデターを何としても阻止しようとする首都警備司令官のイ・テシン。両者の熾烈な攻防は、思いもよらぬ結末へと導かれていく。
独裁政治を目指し、反乱を起こそうとするチョン・ドゥグァンと、軍人としての正義、信念に従って暴走行為を止めようとするイ・テシン。その構図は明らかに悪vs.善で、演じるキャストもそのムードを体現。テシン役が、『私の頭の中の消しゴム』などで知られる、正統派ヒーローがお似合いのチョン・ウソンなので、観ているこちらは彼の側に肩入れしてしまう。その分、後半の衝撃が大きくなるのも事実だ。非常事態に突入するソウル市街のシビアな現実、国防長官など政府の要人のだらしなさ、そして上司と部下のパワハラ関係など、時代や国を超えてアピールする点も多いし、相手側の電話の傍受するなど70年代当時のスパイ合戦のパートも見どころになった力作。“成功すれば革命。しかし失敗すれば反逆”と、後戻りできなくなる人間の本能に背筋が凍る人も多いのでは?
『ソウルの春』8月23日公開
監督/キム・ソンス 脚本/ホン・ウォンチャン、イ・ヨンジュン、キム・ソンス 出演/ファン・ジョンミン、チョン・ウソン、イ・ソンミン、パク・ヘジュン 配給/クロックワークス
2023年/韓国/上映時間142分
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