ここ数年、世界の“ある地域”の映画が注目を集めるケースが目立つ。それは……北欧。奇怪な祝祭を描いたスウェーデンの『ミッドサマー』や、人間と羊がミックスされた子供が登場するアイスランドの『LAMB/ラム』は、日本でも予想外のヒットを記録した。その北欧からまたひとつ、“問題作”と呼んでもいいスリラーがやってきた。
この『イノセンツ』は、ノルウェーの映画。郊外の団地を舞台に、子供たちの不思議なパワーがとんでもない事態へと発展していく。主人公は9歳の少女イーダ。団地に引っ越してきたばかりの彼女は、ベンという少年と仲良くなる。そしてイーダの姉で、自閉症のアナと親しくなったのは、少女アイシャだった。アイシャにはテレパシーのような能力があり、口のきけないアナと心を通わせることができたのだ。さらにベンは、物体に触らずに動かす念力を持ち、4人は不思議なパワーを通して絆を深めていく。最初は子供たちにとっても無邪気な“遊び”の感覚だった特殊能力。その遊びがいつ暴走に変わるのか? 映画を観るわれわれも、危険な予感と緊張感に囚われ続け、やがて衝撃の瞬間を目にすることに……。
特殊なパワーをもつ子供たちと聞けば、映画ファンなら『X-MEN』を思い出すはず。しかしハリウッド大作とは違って、本作が身近なスリルとして迫ってくるのは、何でもない影が“おばけ”に見えたり、動物や虫への行為など、子供時代の感覚をうまくストーリーに絡めたからかも。団地というシチュエーションも絶妙で、子供たちの自宅の距離感が、それぞれの特殊能力の使い方に関係していたりする。そして何より、子役たちのあまりに自然な演技に驚嘆。とくに自閉症のアナの感情表現は、本作の成功のポイントになっている。ノルウェーの国民性は、真面目で控えめ、相手に気を遣い、時間に正確……など日本人と共通点が多いと言われており、そこにも本作にハマる理由があったりして!? 感覚的な親近感、ぜひ確かめてほしい!
『イノセンツ』7月28日公開
監督・脚本/エスキル・フォクト 出演/ラーケル・レノーラ・フレットゥム、アルヴァ・ブリンスモ・ラームスタ、ミナ・ヤスミン・ブレムセット・アシェイム、サム・アシュラフ、エレン・ドリト・ピーターセン、モーテン・シュバラ 配給/ロングライド
2021年/ノルウェー、デンマーク、フィンランド、スウェーデン/上映時間117分
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