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CULTURE カルチャー

2018.04.18


『カリフォルニア・ガール』×今月のテーマ オレンジカウンティ

ベトナム戦争に大統領暗殺、ヒッピー文化にロックとセックス。これら1960年代を表すキーワードは、西海岸にどんな影響を与えたのだろうか? オレンジカウンティを舞台にした本作。主人公であるベッカー兄弟の言動は雄弁だ。読後感には、魅惑的に笑うオレンジのピンナップガールの印象が一変するはず。西海岸ミステリーの現在地を探るにもおすすめの1冊だ!


現代の実力派ミステリーテラーによる
’60年代のオレンジカウンティが舞台の名作!

著者のT・ジェファーソン・パーカーは2001年の『サイレント・ジョー』で、アメリカ文学のミステリー最高峰の賞であるエドガー賞(MWA/アメリカ探偵作家クラブ賞)を受賞。そして、′04年発表の本作も同賞を受賞する栄誉を果たした。ふたつの作品に共通するのは、主要人物の真実に迫る真摯で堅実、あるいは鬼気迫った姿勢だ。ミステリーにおける要石とも呼べる登場人物たちの言動に引きこまれているうちに600ページ超えの長編を読破してしまう。

特に本作『カリフォルニア・ガール』は、万人に読みやすいテーマとはお世辞にもいえない。表題や、舞台となるカリフォルニアのオレンジ工場からは、いわゆる“西海岸ボーイ・ミーツ・ガール”な物語(たとえば、同じ時期の同じエリアで繰り広げられていた、映画『アメリカン・グラフィティ』的な青春活劇)を想像する人も多いのでは? そんな予想はすぐに打ち破られるが、それでもページをめくる手が止まらないのは、この作品が史実に沿っているからだろうか? 物語はオレンジ出荷工場の廃屋で、ヴォン家の次女・ジャニルの死体が見つかることから動き出していく。ベッカー兄弟はその真相を暴こうとするが、真相にはなかなかたどりつけない。真犯人とその動機の輪郭が判明していくたびに、登場人物たちは厳しい決断を迫られる。そのあたりは、ミステリーというよりもドラマの要素が大きいだろう。

この作品の時代設定は1968年。当時のアメリカは、それまでの純粋無垢な星条旗万歳な時代が終わりつつあった時期。ベトナム戦争やヒッピー文化、そして大統領暗殺など、反体制がキーワードとなる時代だ。そして舞台は西海岸のオレンジカウンティ。現在であれば、陽光差しこむ“ザ・南カリフォルニアな場所”、あるいは、海外ドラマにも登場する高級住宅地というイメージだろうか? しかしながら、作品に登場するこの街は、そんな一筋縄にはいかない。ポジティブな対象としてではなく、“変わりはじめてしまった土地”といわんばかりの、陰や鬱のイメージを帯びた描き方をされているのだ。「丘の中腹に広がる貧民街を通り過ぎ、さらに闘牛場と癌治療の専門病院を通り過ぎると、断崖と荒海を見おろす海岸沿いの道に出た」といった描写や、「まわりに分譲住宅が次々にあらわれるようになると、彼らの家はかつて美しかった叔母のように急速に老けていった」などの描写は、ジェファーソン作品ならではの街の息吹を伝えるものだ。

物語は終わりに近づくにつれて、さらに熱を帯びていく。幼い頃に見た原風景を胸に正義を見つめる刑事、ジャーナリズムを追う記者、赦しを問われる牧師。異なる立場のベッカー兄弟だが、それぞれが抱える矜持のどこに共感とカタルシスを受けるかは、読み手に託されることになる。ミステリーでありながら啓発の役割も持つ傑作であることは間違いない。

 
Information

●『カリフォルニア・ガール』
T.ジェファーソン・パーカー 著
七搦理美子 訳
早川書房 952円

雑誌Safari5月号 P295掲載

文=竹田聡一郎 text : Soichiro Takeda
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