日本のJAXAによる月面探査機SLIMが高精度な月面着陸に成功。月への関心がますます高まっている。そんな絶妙なタイミングで登場したのが〈オメガ〉の新作スピードマスター ダーク サイド オブ ザ ムーン アポロ8号。かつて命懸けで月への航路を開拓した宇宙飛行士たちの情熱と勇気を、最新のメカニズムとデザインに宿した1本となっている。
〈オメガ〉はスイス時計の列強ブランドのなかでも圧倒的な知名度を誇る。その要因のひとつとなっているのが、同社とNASA(アメリカ航空宇宙局)の関係だ。〈オメガ〉は1965年にNASAの公式装備品として認定され、以降、宇宙空間における船外活動は“スピードマスター”の着用が義務付けられた。その事実が脚光を浴びたのは1969年に行われたアポロ11号計画で人類が初めて月面着陸に成功した際、スピードマスターが公式装備として用いられたことだったが、その前年に行われた、前哨戦とも言うべき、月の軌道を周回するアポロ8号計画でもクルーは全員スピードマスターを着用。〈オメガ〉は一連のミッションに多大な貢献を果たしていた。
その、通称“ムーンウォッチ”の系譜に連なる最新作が『スピードマスター ダーク サイド オブ ザ ムーン アポロ8号』。実はこのモデル、同名のモデルがアポロ8号計画から50周年を迎えた2018年に発表されていて、本作はさらなる新技術を投じた集大成的アップデート・バージョンとなる。
最大のポイントは、刷新されたムーブメント。新型のCal.3869はムーンウォッチ伝統の手巻き式機構を踏襲しながら、2015年以降同社が拡充を進めているスイス連邦計量・認定局(METAS)によるマスター クロノメーター規格に準拠する。マスター クロノメーターは世界的な精度規格として知られるスイス公式クロノメーター検査協会(COSC)の基準に準拠していることが前提で、その精度を担保した上で、さらにケーシングした状態での精度や1万5000ガウスという強力な磁場に耐えうる耐磁性能など、時計を実際に使う際に問われる資質を8項目にわたって精査する。カタログ上のスペックではなく、あくまで実用性を高めるための仕様といえるだろう。
このムーブメントの身上は、これだけではない。ポイントはブラック仕上げのメインプレート全体に施された、月面を仔細に表現したレーザー加工のレリーフ。陽酸化アルミニウム製のブラック・スケルトンダイヤルから月の表面の様子を眺めることができ、さらに、サファイアクリスタル製のケースバック側の面は、アポロ8号計画の成功まで誰も目にすることのなかった月の裏側(ダークサイド)が再現されている。この意匠により、アポロ8号計画で人類が得た成果の本質が、コンセプチュアルに謳われている。
さらに、9時位置のスモールセコンドにも注目。指針はNASAのサターンⅤロケットをかたどった精巧な3Dのミニチュアで、グレード5のチタンを回転レーザー加工で成形し、ホワイトのニスで着色したのちレーザーで調整、ブラックの部分をカラーリングしたもの。特許出願中で、このモデルの白眉と言えるディテールだ。
ケース径44.25㎜、手巻き、セラミックケース、パンチングラバーストラップ、50m防水。220万円(オメガ)
ロマンチックな宇宙空間を内包するかのようなケースは軽量で強靭、かつ美しく高級な質感を誇るブラックセラミック製。さらにベゼルに刻まれるタキメータースケールはスイス高級時計の伝統手法であるグラン・フー・エナメルで、クロノグラフの指針に用いられるビビッドなイエローが小粋なアクセントとなり、緻密な構図に、スピードマスターの歴史と革新性が俄かに渾然一体となって結実する仕組みだ。
ケースバックには、ミッションで宇宙船が月の裏側に突入する直前、司令船操縦士のジム・ラベル(2年後、絶体絶命の事故から奇跡の生還を果たしたアポロ13号に搭乗した歴史的ヒーロー)が地上の管制官に向けて話した言葉“WE'LL SEE YOU ON THE OTHER SIDE―あちら側でまた会おう”が刻まれる。
月面着陸がホットワードな今。こちらの時計があれば「SLIMは、このあたりに着陸したんじゃないかな?」なんて、話を盛り上げることもできそうじゃない!?
●こちらの記事もどうぞ!
【時計】大人好みの本格志向に唸る〈シチズン〉プロマスターSKY
●オメガ
TEL:0570-000087