2024年はカリフォルニア・セントラルコーストで大人の冒険を!【後編】
思考や価値観をもっと柔軟にする、大人の冒険旅“カリフォルニア・セントラルコースト”の後編。大自然あふれるカーメルバレーからさらに南下し、自由でポジティブな暮らしとカルチャーが育まれるパソロブレス、サンタバーバラの街へとクルマを走らせよう。
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パソロブレスの街中で、日本人旅行者の姿を見かけることはほとんどない。だが、このユニークなスモールタウンは一見の価値あり。なぜなら自然とカルチャーのグッドバランスが根づいた理想的なロケーションであり、小さな町に美的感覚が凝縮された、どこにも似ていない場所だから。
ダウンタウンシティパークという公園周辺一帯が、パソロブレスの中心地。街のアイコン、オークの実を模したクロックタワーを囲むように、アンティークストア、アイスクリームショップ、グロッサリー、雑貨屋など、ユニークでセンスの光る個人経営の店が立ち並んでいる。
ワインのトップデスティネーションであるだけに、街にはたくさんのテイスティングルームが点在。ブティックワインを気軽に試すなら、ルーム・ホッピングをするのも楽しいだろう。また、素朴な佇まいでありながら美食を味わえる隠れた名店があるのも、パソロブレスの魅力。たとえばこちらのフィンカ。バハ・カリフォルニアとテキサススタイルのモダン・メキシカンをカジュアルに食べられるレストランだ。歴史的な農家を改装したかわいらしい一軒家だが、その実力は長年ミシュラン・ガイドに掲載されているほど。
2人の共同経営者とその家族が営むという背景があるからか、店内はアットホームな雰囲気。スタッフもみな気さくで、星付きという格を驕る雰囲気は全くない。新鮮な地元食材を使い、フレンドリーで心地よいサービスで近隣の人々に奉仕することで、パソロブレス・コミュニティの一員であり続けているのだ。
薪で焼いたタコスやセビーチェ、冷たいビールやワインを片手に、焚き火の灯るパティオでくつろぐ時間はなんともピースフル。思わず時間を忘れて長居してしまう安心感もある。はじめて訪れた街なのに、心休まる居場所を見つけた幸福感に包まれるだろう。
もう一軒、訪れてほしいのが、ジェフリーズ・ワイン・カントリー・バーベキュー。パソロブレスはワインのほかローカルクラフトビールの生産も盛んで、街中にはブリュワリーをたくさん見つけられるのだが、路地にひっそりと佇みながらも、ひと際賑わっているのがここ。クラフトビールとプレミアム・ローカルワインを嗜みながら、グルメ界で何度も受賞歴のあるマック&チーズやスモーク・ベビーバック・リブ、パエリアを味わうことができる。
オーナーのジェフリーさんは、「ゲストとローカルの接点の場であることはもちろん、地元ワイナリーやブリュワリーが共存できる場にしていきたい」と言う。競い合うのではなく、お互いを助け合うビジネスこそ時代なんだと。パソロブレスの街で小さく個性的な店があり続けられるのは、このような地道な行動を続ける人がいるゆえんだと納得。
パソロブレスの立ち寄りスポットとして、毎週末行われるファーマーズ・マーケットも押さえておきたい。豊かな農業地帯で採れた野菜や果物のほか、焼きたてのパン、クコの実のようなパワーフードなどが軒先をあざやかに彩っている。
歩いていると気づくのだが、店の人はもちろん地元住民たちもみな警戒心がなく、フレンドリーに接してくれる。「なにを買った?」「どこから来たの?」という会話が自然と生まれるうちに、旅の思い出はどんどん色濃くなっていく。
思えばコロナ禍を経て、身近にあるものや人々に注目し、個人経営の店を支援するなど、コミュニティとの関わりを意識する人も増えたのではないかと思う。旅においても、今したいのは表面的にエリアを巡る過ごし方ではなく、現地コミュニティとの繋がりをもたらすような体験なのかもしれない。
1800万坪と広くブドウが栽培されている、世界に名高いワインカントリーであるパソロブレス。西側のサンタルチア山脈によって海の影響が遮られることから、昼夜の気温差が激しくなるため質の高いブドウが育つという。
ここ、ダオ ビンヤード&ワイナリーもそのひとつ。秀でた魅力はなんといっても、広大な山脈とワイナリーを360度に見据える天空ワイナリーであること。開放的なアウトドア空間を上質な美的感覚で取り入れた広いテラスは、陽気にワインを嗜む大人たちで日々席が埋め尽くされている。
ここで造られるワインは、土壌・地形・気候・日照時間・気温まで奇跡的に揃った好条件で育てられた、カリフォルニアでも類を見ない希有なテロワール。でありながら、緊張感とは無縁な大自然の真ん中で、フレンドリーなソムリエとの会話を楽しみながら味わうカジュアルさが最高。
“カリフォルニアワイン”というと、ナパやソノマ、メンドシーノを誰もがイメージする中で、いろいろなジャンルのアルコール生産者が入り乱れるユニークな場所、パソロブレスの名を知っておくのは確実に嗜好の楽しみが広がりそうだ。
カリフォルニア・セントラルコーストを味わううえで体感しておきたいのが、ワイルドな海岸線だ。切り立った断崖、透き通る太平洋が成すダイナミックな景観は、心と思考を必ず解放してくれるはず。ただ、ドライブで車窓から眺めるだけではもったいない。“大人の冒険旅”がテーマである中、体中で感じるにはゴルフが最適解。
サンドパイパー・ゴルフクラブはオーシャンフロントの絶景ホールが多く、リンクスゴルフを楽しむのにもってこい。海や風を感じながらカラダを動かす時間は想像以上にリフレッシュ効果を高めるだろう。また、地元の方や別荘で休暇を過ごす、気さくで品のあるゴルファーが訪れるので、気持ちよくプレイできるのも嬉しい。ホールアウト後、クラブハウスからとろけるような夕景を眺めれば、デトックスは完了だ。
クルマは最終目的地のサンタバーバラへ。ここまで通ってきた他エリアに比べると最も大きい街であるが、多くの人が「ここに住みたい」と思えるクオリティ・オブ・ライフが詰まっているのがこの地の特徴ではないだろうか。
まずアコモデーションに選びたいのは、穏やかなイースト・ビーチの向かいに位置する、マーモンテ・ホテル・イン・ジ・アンバウンド・コレクション・バイ・ハイアット。海沿いのメインストリートに面した便利な立地とは裏腹に、どこか隠れ家のような雰囲気を持ち合わせているのは、低層の館であること、そして、前身の“ビスタ・マー・モンテ”時代から残された古き良きを残しながら、コンテンポラリーに仕上げられた巧妙なリノベーションによるところ。
3エーカーの敷地内には、潮の満ち引きを反映するように設計された、屋内から屋外へと無理なく流れる動線が広がる。むき出しの梁天井、テラコッタタイルの床など、自然環境に溶け込みながら美的感覚に訴えかける要素もふんだん。環境面を中核においた卓越したデザインが、ゲストの心を揺り動かしていく。
客室内は、クラシカルな内装やウッドの開き窓など、ノスタルジックで洗練されたインテリアが施されている。窓を開け放ち、太平洋に沈みゆくサンセットを望める希少な空間だ。ホテルのレンタサイクルで海岸沿いのサイクリングロードを走り抜けるのも、ちょっとした冒険になるだろう。思い思いにビーチで過ごす人々の様子に触れるうちに、この土地のライフスタイルに溶け込んだ錯覚にもなるだろう。
ホテル内のレストラン、コスタキッチン&バーでのディナーも格別。エグゼクティブ・シェフのネイサン・リングルが考案したクリエイティブな地中海料理は、カリフォルニアワインに絶妙にマッチする。
ハイエンドでありながら、肩肘張らないリラックスした雰囲気があるのは、コージーなインテリアや腕利きシェフによる美しくも気取らない料理、そして海沿いのポジティブなムードのせいかもしれない。
部屋の窓から太陽が差し込む朝、ふと外を眺めれば海岸線をジョギングする人々がちらほら。健康的で快活な暮らしを実践するライフスタイルに、なんだか刺激をもらってしまう。これが、“アメリカで一番美しい街”といわれるサンタバーバラの魅力のひとつかもしれない。もちろん、街の魅力は食にもおよぶ。
スペイン風のヒストリカルな建物群の中に、数多のショップが軒を連ねるダウンタウン。ここには選択肢に迷うほどレストランがある。が、旅行者としては限られた時間の中、少しでも多くの店や味に出会いたいもの。そこでおすすめしたいのが、地元ガイドの方による案内で、6軒のレストランやカフェを巡るフードツアー。
ワイン・テイスティングからはじまり、メキシカン、イタリアン、インドネシア料理、トルコのスイーツショップ、イタリアン、アイスクリームと、3時間にわたってさまざまなフードを食べ歩く。ガイドブックやSNSの情報からでは得られない、地元住民が推す隠れ名店ばかりだ。
ガイドの話を聞きながら巡ると、メキシコやヨーロッパ文化の要素から現代のミックスカルチャーまで、食文化のルーツを深く掘り下げていく感覚に。まだ注目を集めていない食文化に光を当てることで、文化の秘密が解き明かされていくという面白みがあるのだ。偶然居合わせる他の旅行者と一緒に巡るのも楽しさ満載。次第にそれぞれが満腹になってくる中、声を掛け合いながら食べ切る中で、ちょっとした連帯感も生まれてくるから不思議だ。ツアーの終わりにはそれぞれのSNSを教え合い、友だちの輪が広がることも。
そしてもう一軒、グルメスポットを紹介しておきたい。サンタバーバラの夜に欠かせないミシュラン・レストランが、ザ・ラーク。屋外テラスをメインダイニングとした開放感ある造りでとてもカジュアルであるのに、セントラルコーストの最高級食材にスポットを当てた創作料理に舌鼓を打てる。
シェアすることを前提とした家庭的なメニューも、安心感がある。サンタバーバラの最高の生産者によるワインを片手に、大人たちが幸せに満ちた表情でハイレベルな食事を楽しめる一軒だ。こうして、心と胃袋を幸せ満タンにして旅を締めくくれば、完璧!
さて、カリフォルニア・セントラルコーストの旅、いかがだっただろう? 大自然の中、クルマを走らせながら地域の資源に触れ、地元を愛し旅人を喜んで招き入れてくれる人たちと交流することで、日増しに視野は広がっていくに違いない。そして、人生を豊かな目線で見つめられるようになることを約束したい。2024年、凝り固まった価値観や意識を拭い去り、もっと前向きで冒険的な自分に出会いたいなら、是非ともこの旅を実践してほしい。
●カリフォルニア観光局
URL:https://www.visitcalifornia.com/jp/
●パソロブレス観光局
URL:https://www.pasorobleschamber.com/visit-paso/
●サンタバーバラ観光局
URL:https://santabarbaraca.com/
photo & text:Yuki Miyahara