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2018.07.18


さぁ、子供の頃の夢を叶えようか。子供と一緒に。

2017年末、とあるラジオ番組の新年特番の対談企画で、一気に僕の中の価値観に変化が生まれた。対談相手は塚原久幸さん。栃木県で〈ハーレーダビッドソン〉の人気ショップを経営している男だ。



子供が幼稚園に入り、生活設計はじめ家族に関わるこれからのこと。そんな心配を抱えながら、ちゃんと日々の仕事をこなす。高校生の頃のウキウキ感とはほど遠い……。

まあ、父親なんてこんなものでしょう。

仕事には責任があるから、努力はしている。でも、仕事ではなく、“責任ないもの”に対して努力は?そんな余裕ない……。こんな回答をするのはあの日までの僕である。

その、“あの日”とは?

2017年末、とあるラジオ番組の新年特番の対談企画で、一気に僕の中の価値観に変化が生まれた。対談相手は塚原久幸さん。栃木県で〈ハーレーダビッドソン〉の人気ショップを経営している男だ。

対談前の僕は、漠然とこんなことを考えていた。
「まあ、ワイルドな世界の話なんだろう。でも、こんな僕だって、16歳で中型二輪免許をとって、スポーツタイプのバイクに乗りツーリングも散々してきた。バイクの話ならイケる。でも、ハーレーは、またワイルドな別世界。そんなワイルドな話に耳傾けてみようじゃないか。」

ところが、いざ収録で対談がはじまると、この塚原久幸という男が口にしたのは、ワイルドとは無縁の“家族”の話だった。

意表をつかれた。ぜんぜんワイルドじゃない。〈ハーレーダビッドソン〉というのはワイルドの塊ではなくて、昔から受け継がれているバイク作りにかけた1つの家族の物語とヒストリー。そして、それに関わるひとりひとりの家族の歴史もまたハーレーの世界観なんだと。家族に対する責任に包まれている男にとっては、これほど興味を引くものはない。

ふと、我に返る。自分はどうだろうか。日々の生活の細々したことばかりに目を向けて、小さな悩みを大きなものに妄想化してしまってなかったか。仕事の夢以外のプライベートの夢、それを語れるかっこいい男でありたいと改めて感じた瞬間。その連続だった。

対談が終わって、レギュラープログラムの番組、生放送4時間。僕の前には、いつもの優秀なアシスタント、高賀茂沙緒里(かもちゃん)がいる。そんな彼女に、さっき塚原さんから聞いたばかりの話を、堂々と語っている僕がいた。かもちゃんは、そんな僕に向かって、「今日はイキイキしてますね!」なんてことを言ってきた。

それもそのはずだ。「教習所に一緒に行こう!」と、番組スタッフや同じパーソナリティの仲間を誘っている僕がいたのだ。幸いなことに、その生番組のコーナーでは、いろいろなことにチャレンジする企画が頻繁に組まれている。「そこでなんとしてもやりたい!」。勝手ながら番組企画として、すでに大型二輪免許を取得する企画イメージが僕の中に湧いてきてしまっていた。

とにかく、仕事上要求されたことではなく、なんの必要性、必然性もないうえで、自分からなにかにチャレンジするという久々に味わう感覚が嬉しかったのである。これって大学生以来、いや、高校生以来かも。

嬉しい。

年末の仕事もすべて片付け、あと何日かで新年を迎える家族が寝静まった夜の時間。水割りを片手に1人、ネットで〈ハーレーダビッドソン〉の歴史について調べてしまっている自分がいた。そりゃ僕だって中型免許で〈カワサキ〉乗りだったし、〈ヤマハ〉FZR-RR、そして日常使いでは〈スズキ〉ジェベルというオフ車に乗り続けていた。二輪車から離れていないという自負はあった。

それが今回は、なにかが違う。

ウイスキーを独り味わいながらアマゾンで『ハーレーダビッドソン伝説』なる本を見つけポチっとやってしまう。さらに、正月明けには読んでみたいと、打田稔氏の『ハーレーダビッドソンの世界』という1冊なんかも。そんな調子でハーレーのファミリーの世界観、脈々と受け継がれているその本体、マテリアルにぞっこん。
 


数日後、新年明けて次の行動は、具体的に大型自動2輪免許の取得だ。それを目標、目的にした。

僕はタイミングにも恵まれていた。こんな僕にしてくれちゃった塚原さんが、番組企画としても提案をしてくれていたからだ。僕も早速ディレクターに提案、相談し、番組としても実現することに。教習所は毎週水曜日に通える、栃木県自動車学校。ここは教習所で〈ハーレーダビッドソン〉という鉄の馬があるというではないか。当然期待膨らむ。

自分の中の密かなイキイキ感。それらのひとつひとつが、原点となるキーワード“家族”へと向かっていくのを感じた。その理由は、やっぱり“子供”だ。まあ、どこも3歳くらいの子供がいたら、子供の名前を出して「○○が、こうしたがってるからさぁ』なんてのが、お父さんの密かな喜びを実現させるための説得材料になってたりするんじゃなかろうか?

それも、バイクなら許されなかったことが、ハーレーなら許される!そんな理論が浮上。

この2つをフル活用しはじめる。

まずおそらく、他のメーカーのバイクでは、大型免許取得なんて許されなかったであろう。それが、1人の男として、そして親として、夫として、なにかが変わりはじめている僕に、家内もよい兆候を感じはじめていたのかもしれない。大型免許、普通二輪免許を持っていれば、費用は10万円ほど。その決裁権をもっているのは、もちろん家内だ。

ところが、あっさりと免許取得の決済がおりた!!!!!!!!

飛び上がるほど嬉しい。

そして、ハーレーのイベントにも出かけてみたいと思った。教習所、つまりは私有地で、普通二輪免許があればハーレーに試乗できるというようなイベント。そんなイベントだって、これまでの僕にだったら、家内は「1人で行ってきたらー」で終わっていたかもしれない。しかし、家族で行きたいのだ。

計画があった。

家族で、祖父の家があった祐天寺に出かけた帰り、さりげなく僕のクルマは、都内にある〈ハーレーダビッドソン〉のショップに立ち寄るという計画。あくまで、突発的に思い立ったかのように。提案してみる。(笑)
「ちょっと、寄っていい? なんかハーレーのショップが帰り道途中にあるみたいで」

後ろの席をバックミラーでさりげなく確認。家内の表情に曇りはない。これはイケル! ちょっと家内もどんなバイクなのか、興味があるみたいだった。「ああー、いんじゃない」。その言葉に胸をなでおろす。その日の最大の難関、目的をクリアした瞬間だった。運転席で喜びを押し殺しながら、心でガッツポーズ。クルマは、駒沢通りから環七を大田区方向へと進んでいった。
 


初めて訪れる場所だ。

おもいっきり、部外者感に包まれちゃったらどうしよう。僕も家内も苦手な雰囲気だったら、どうしようか? 我が家一家、ワイルドな服じゃないし……。

娘が見つける。「あったー!」

実際にハーレーのショップに家族で初めて足を踏み入れる。さわやかな挨拶。バイク屋然とはしておらず、そこは百貨店のアパレルショップかのようなファッションアイテムがいっぱい。セレクトショップにでも来たかのように、バイク以外のアイテムがこれでもかと。しかも、品よく並べられている。

淹れたての珈琲も自由に飲んでよいようになっている。ソファがあって、ファッション誌が数冊おいてあり、くつろいで過ごしていいようだ。これは、珈琲好きな妻へのポイントは高いぞ!(笑)家内の言葉は「なんかおしゃれな美容院、ヘアサロンみたい」だった。

おおおおー、意外にも家内はここを、この空間を気に入ったみたいだ! やったぜ!!

たとえるなら、一般のカーディーラー(もろ販売店)に対して、高級外車のディーラー(サロン)のような空間ではないか。まあ、考えてみれば、そもそも〈ハーレーダビッドソン〉は高級外車。ゆえに、女性でもこういう店舗演出ならば、興味を持って時間を過ごしてもらえる。

もはや心配はない。家内はハーレーのアパレルに夢中である。その頃僕のほうはといえば、ハーレーのXG750のタンデムシートに3歳の娘を乗せてスタッフに写真を撮ってもらう。スタッフは快く、撮影してくれていた。乗れるようになる……。免許取得までまだまだ先ではあるが、乗ったときの自分をイメージするのは自由。それになんといっても跨る、写真撮るのはタダ。(笑)

娘、大喜びである。これは家内の顔もほころぶ。ファミリーみんな笑顔である。やるな、ハーレーの世界観。我が家、一家が得体の知れぬハードルに苦労することなく、溶けこんでいる。この調子で行けば、イベントにだって出かけられるぞ!!
 


二週間後。

とある休日。世間の多くは休みであるが、僕は仕事……という名のもと、ハーレーイベントへ参加。もうこの頃には番組の企画としても、イベントに行く必然性が出来上がっていて、この時に感じたのがやはり(ハーレーダビッドソン=ファミリー)という構図。

ハーレーのイベントに家族連れで参加すると、そこはすでにファミリーでの参加者も多く、そんなみなさんが、ファミリーのように新参者である我が家族に優しい。本場アメリカで味わうであろう(あくまで想像だが)本格的BBQや、でき立ての石釜ピザを存分に食べたり。腹いっぱいだ!

そして何種類ものハーレーに親子でまたがり、またまた写真撮影。これには家族も大喜び。



人生初の、ハーレーのエンジンに火を入れる!なんて経験をして、もちろんXG750ストリートを試乗。

なんだ、この乗りやすさは! シフトが気持ちよく入る。「ガチャッ」ではなく「カショッ」ってな感覚。疲れない。それでいながら、鼓動はちゃんと感じる。試乗を終えて、興奮気味にインプレッション語る僕を、家内は微笑んで見ていた。

なんだか、僕っていいお父さんしてるじゃん。(笑)

ファミリーの話からスタートしたハーレーとの出会い。それが、ちゃんとファミリーへとフィードバックできているではないか。なかなかよい調子だ。

この頃に気づきはじめたことがある。独りよがりでかっこつけている大人と、ちゃんとかっこよく生きている大人。やっぱり違うんだなと。それって具体的にどうと、まだ僕には言えないが、なにかに現れちゃう。ハーレーを通して、はっきりと言える男に変身したいものだ。

今回の初心者としての格言。

世の中すべてのバイクは2つに分けることができる。それは、ハーレーか、ハーレーでないか。どちらもが魅力的だが、ハーレーのライバルはハーレーの中にいる。

岡田 眞善|Okada Shinzen
現在Nack5の金曜日の朝の番組『RADIO PHANTOM』をはじめ、Radio Berryなどでも活動するラジオDJ。自ら取材した多種多様な情報を眞善流の切り口で発信している。かつては、企業の『女性応援課』の課長に任命された経歴を持つ。趣味は自転車、バイク、カメラ、ヨット。世界帆船レース日本代表でチームキャプテン、世界二位に導く。


Director’s EyE by FKD

少年のような笑顔を、僕は今、少年以外で久しぶりに見ている……。その男は今年で44歳。世間的には「中年」と呼ばれるであろう1人の男。彼の名は、岡田眞善、ラジオDJである! 彼は今まさに、そんな少年のような顔つきだ。彼との付き合いは、この4月で3年めに入るが、そんな表情は初めて見る。どうだろう、美しい女性を目の前にしたとき以上とでもいえば、わかりやすいだろうか。そんな彼を、何十年も若返らせたもの……。それは、男のロマン「バイク」である。昨年末、とあるラジオ番組の企画で、〈ハーレーダビッドソン〉についての対談企画があった。そこで彼の前に座った男こそ、眞善を少年に変えた張本人、栃木県壬生町「ハーレーダビッドソン塚原」の社長、塚原久幸。塚原は番組の中で、ファミリーについて熱く語り、ハーレー愛を眞善にぶつけた。収録を終えた眞善の表情……。それは、紛れもなく“少年のような笑顔”だった。この日を境に、岡田眞善という中年、いや、少年のハーレー道がはじまった。そして今、その道のスタートラインに立っている!

JOQR AM1134
KININARU Director
Fukuda Yuki

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