【小酒部泰暉】限られたチャンスからプレイタイムを奪取!
強豪アルバルク東京の主力を担い、日本代表でも将来を嘱望されているシューティングガードの小酒部泰暉。抜群の得点能力を誇る若きスコアラーが、Bリーガーとしてブレイクする足がかりとなった試合について語る。
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- アスリートの分岐点! vol.35
TAIKI OSAKABE
TURNING POINT
2020年12月5日
Bリーグ 2020-21 B1リーグ戦 第11節
VS 琉球ゴールデンキングス
チームの主軸の座!
現役大学生Bリーガーとしてアルバルク東京に加入し、プロ2年めの2020-21シーズンは“新人賞ベスト5”を受賞。実力者が揃う強豪チームにおいて、主力を担う選手となった小酒部泰暉。日本代表でも、主軸としての活躍に期待が集まる存在となっている。そんな小酒部がキャリアの分岐点とする試合は、“新人賞ベスト5”を受賞する活躍で頭角を現しはじめた2020-21シーズン第11節の琉球ゴールデンキングス戦。シーズン序盤からプレイタイムの確保に苦しんできた中で、数少ないチャンスをものにした一戦だ。
「初年度から当時のルカ・ヘッドコーチからの信頼を得るという部分で厳しいところがあって。勝利がほぼ確定し、点差が離れてしまった試合の最後とかでしか使われず。ずっと悔しい思いをしてきました。そうした中でこの琉球戦では、プレイタイムこそ8分15秒ほどでしたが、本来の自分のプレイをすることができた。まだあまり知られていない選手ということでノーマークなところもあったかもしれませんが、自分の持ち味であるディフェンス。そこから入って攻撃に繋げていくプレイ。また、リバウンドなどでチームに貢献することができた。この試合でヘッドコーチの信頼を掴むきっかけになったと、個人的にはそう感じています」
この試合を機にすぐにプレイタイムが増えたわけではなかったが、試合の重要な局面や時間帯でのプレイが徐々に増えた。シーズン後半にはエースの田中大貴が負傷で戦線離脱したことで、先発の機会が巡ってきたことなどが、主力選手となる足がかりとなっていった。自分本来の持ち味を発揮するには、乗り越えなくてはならない壁がいくつかあったという。
「まず、当時のアルバルク東京はチームバスケとしてシステマチックな部分が重要視されていたのですが、特に初年度はそうした部分を自分に落とし込めていませんでした。たとえば、セットプレイばかりに頭を使ってしまい自分のプレイができない。状況判断が遅くミスに繋がってしまったり。そうした部分は本当に苦戦していました。あと、フィジカル面やプレイの質という意味でも足りないものが多かったと思います。同じポジションの田中大貴さんと練習のときから一緒にやらせてもらっていたのですが、まず歯が立たなかったですね。“ピック・アンド・ロール”ひとつとっても質が全然違って。コートの外から見ていても、本当に勉強になりました」
チームの主軸として戦う3年めの昨シーズンは、デイニアス・アドマイティス新ヘッドコーチを迎えた新体制で戦い、レギュラーシーズン終盤まで東地区での優勝を狙える位置をキープ。全体順位5位でチャンピオンシップに進出し、負傷者が続出する中で戦い抜き、セミファイナル進出まで激闘を繰り広げた。小酒部は怪我に苦しんだ時期もあったが、40試合中19試合で先発に選ばれ、平均22.05分のプレイタイムで7.6得点、2.5アシストを記録。世代屈指のスコアラーとして、安定した活躍を見せた。
「怪我人が多く、苦しいシーズンではありましたが、全員がステップアップしてやり抜くことができたシーズンでした。結果として優勝は逃しましたが、そこの部分では収穫は大きかったと思います」
ヘッドコーチも代わり、アルバルク東京の伝統である堅い守備から失点を最小限に抑える戦術を貫きながら、新しいスタイルにも挑んだ。
「システマチックなスタイルを武器としながら、コートに立った自分たちがどうアジャストしていくのかという部分も重要になるスタイルに変わりました。そこは自分としてはやりやすい部分がありますし、チームとしても1年めでここまで結果がついてきたことはよかったと思います。また、自分自身ができる部分と、まだまだ伸ばせる部分がより明確になったシーズンでもありましたね」
日本代表としての活躍にも期待が集まる小酒部だが、2018-19シーズンに2連覇を果たして以来、タイトルを逃してきたチームに強いこだわりがあるようだ。
「やっぱり、まずはチームとして優勝することができていないので、そこの部分はこだわって優勝を目指すべきだと思っています。2023-24シーズンもアルバルク東京でプレイできることを本当に嬉しく思っています。プレイできる感謝の気持ちを忘れずに、怪我をせず、フルシーズン戦い抜ける選手であることが一番の目標。そして、チームのためにもっといい判断ができる選手になりたいですね」
バスケットボール選手
小酒部泰暉
TAIKI OSAKABE
1998年、神奈川県生まれ。高校時代は全国大会に出場していない無名選手だったが、神奈川大学の幸嶋謙二ヘッドコーチに見いだされ急成長。大学3年の2019年にアルバルク東京加入。2020-21シーズンは新人賞ベスト5を受賞し、チームの主力選手としての地位を確立。
TAMURA'S NEW WORK
グループホームひまわり
「今回は、施設長や働いている方にこの施設がどんな場所でありたいのかという思いをヒアリングさせていただき、作品に落とし込んでいきました。僕が作品を描くことで、こういった施設があることをより多くの人に知ってもらえたら嬉しいです」
アートの力で多くの人を応援したい
咲き誇るたんぽぽの花から、大空に向かって綿毛が舞っていくスケールの大きな壁画。田村がこの作品を描いたのは、京都にあるグループホームの壁面だ。
「グループホームひまわりは、共同生活をしている知的障害や精神障害のある方に様々な支援をし、社会に巣立っていくことをサポートする場所です。作品を描いた壁は、ここを利用する人が必ず目にする場所にあるのですが、見る人を勇気づけたり、頑張るぞという気持ちになれるようなアートを描きたい。そんな思いを表現しました。たんぽぽの綿毛が舞うようにグループホームのみなさんが世界に飛び立ち、そこでまたあざやかに咲き誇ってほしい。そんな気持ちを込めています」
描いて嬉しい出来事もあったという。
「アートの力で多くの人を応援したいという思いで活動していますが、ここで生活している方が作品を見て僕のファンになってくれたと聞いて。応援するつもりが応援してもらった気持ちでいっぱいです」
アーティスト
田村 大
DAI TAMURA
1983年、東京都生まれ。2016年にアリゾナで開催された似顔絵の世界大会であるISCAカリカチュア世界大会で、総合優勝。アスリートを描いた作品がSNSで注目を集め、現在のフォロワーは10万人以上。その中にはNBA選手も名を連ねる。Instagram:@dai.tamura
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illustration : Dai Tamura text : Takumi Endo photo by AFLO