大切な人に捧げる行為がなによりも貴重な体験!万年筆が紡ぎ出すのは特別な時間!
世界最古の筆記具メーカーであり、色鉛筆の代名詞でもある〈ファーバーカステル〉。その経営を250年以上も継承してきたドイツの伯爵家の9代目当主を務めるのが、チャールズ・フォン・ファーバーカステル伯爵だ。小学校でその使い方を学ぶほど万年筆が浸透しているドイツで育った彼だが、それでもこの筆記具に特別な思いを抱いているという。果たして、その思い入れとは!?
- SERIES:
- ビジネスエリートの愛する万年筆! 第36回
PROFILE
1980年、スイス出身。アメリカ・テキサス州の南メソジスト大学で経済・経営学を専攻した後、コロンビア・ビジネススクールでMBAを取得。2009年に帰国し、ドイツの経営戦略コンサルティング会社である〈ローランドベルガー〉で主にリテール関連プロジェクトを担当した。’13年から、〈ファーバーカステル〉に勤務し、’15年からは、〈ファーバーカステル伯爵コレクション〉の責任者を務めている。
最愛の人への手紙
レオ、カーラへ
これから2人が大きくなったらファーバーカステルの10代目として、おじいちゃんから受け取った一族の伝統を大切に、次の世代に引き継ぐことになるね。たとえば、謙虚であること。まわりの人には敬意を持って接すること。いろんなことに興味を持って、自立すること。2人が人生の素敵な旅をできるよう、いつもそばで見守っているよ。
̶愛をこめて 父より
万年筆は個性や思いを伝えるツール!
「効率やスピードが重視されがちな現代において、誰かのために時間を使うということ自体がかつてないほど貴重なものになってきているような気がします。SNSのようなデジタルを使ったリアルタイムのコミュニケーション全盛の今、万年筆を使って時間をかけて手紙やカードを書くことは、特別な価値があるのかもしれません。私自身もバースデーカードやお悔やみの手紙を書くときのように、大切な人に対して思いを伝えたいときに心をこめて使っています」
そんなふうに万年筆に対する考え方を語ってくれたのは、〈ファーバーカステル伯爵コレクション〉の責任者を務めるチャールズ・フォン・ファーバーカステル伯爵。それと同時に、万年筆を持つこと自体が個性を表現する行為のようになってきているとも感じているという。
「万年筆には、胴軸の素材やペン先といったディテールに多彩な選択肢があります。そこに自分の好みを投影することは、テイラーでシャツを仕立てるときにカフスや襟型を選ぶような感覚とも似ているところがあります。それを所有することもそうですが、どんなものを選ぶかというところで男性としてのパーソナリティをアピールできる。誰しもが普段使いしていないアイテムだからこそ、そこに特別な意味合いが生まれるし、面白さもあるのではないでしょうか」
その思いは、伯爵の万年筆選びにも表れている。伯爵の愛用品は、伯爵コレクションにラインナップされている“クラシックマカサウッド万年筆”だ。
「なによりも胴軸に使われている3種類のエボニーの美しさに魅了されています。木材の特徴である木目には、ひとつとして同じものはなく、育った自然環境によって多彩な個性があります」
しかも、このコレクション自体は8代目当主であった伯爵の父親が立ち上げたものなので、思い出もひとしお。家族愛を大切にする伯爵のパーソナリティを象徴するアイテムでもあるようだ。
愛用の万年筆
個性豊かな木目がお気に入り!
楽器材としても知られるマカサウッドの重厚感と美しさに魅せられているという1本。ペン先は18金で、ガンメタリックに彩られたキャップと同系色のルテニウムコーティング。胴軸に刻まれたフルートと呼ばれる縦溝は、伯爵コレクションのアイコン的なデザインだ
カラフルでデスク映えする色合い!
伯爵が9代目の当主に就任後、新機軸として開発したコレクション。これは新色のバートンオレンジで、波模様を象ったギロシェ柄が胴軸に刻みこまれている。ペンケースやノート、ウォレットなどもシリーズとして展開していて、トータルコーディネートを楽しむことも
デスクまわりには
心が安らぐ実用品を!
フェルトの部分に、筆記具や名刺を自由に挿しておけるスグレモノ。伯爵コレクションの人気アイテムで、鼻を高く上げた象は、幸せを呼ぶお守りのような縁起物でもあるんだとか
消しゴム付き鉛筆に、キャップ兼エクステンダー、鉛筆削りが一体化した“パーフェクトペンシル”。伯爵が手掛けた製品で、その太さにこだわったという。肌身離さず携行している
COMPANY DATA
FABER-CASTELL[ファーバーカステル]
伯爵家の伝統を受け継ぐ国民的な筆記具ブランド
1761年にドイツ・ニュルンベルク郊外で創業。代々、伯爵家が経営する高級筆記具ブランド。本社隣には伯爵家の城があり、月1回は場内ツアーを開催するなど、街のランドマークになっている。1階はカフェテリアで社員がランチやミーティングに利用することもある。
雑誌『Safari』2月号P212・213掲載