『グリーンランド−地球最後の2日間−』6月4日より全国ロードショー
製作・出演/ジェラルド・バトラー 監督/リック・ローマン・ウォー 脚本/クリス・スパーリング 出演/モリーナ・バッカリン、デビッド・マンソン 配給/ポニーキャニオン
2020年/アメリカ/上映時間119分
ジェラルド・バトラーが演じるのは、建築技師のジョン。最初は彗星接近ということで、家族や近所の人たちと“世紀の天体ショー”というノリを楽しんでいたのだが、突如、軌道を変えた彗星が遠く離れたフロリダに激突。やがて48時間後に、最大級の彗星が地球とぶつかることが明らかになる。
この手のパニック映画は、各国のトップや有能なエキスパートが集結して大災害と闘うパターンと、主人公の家族の運命にフォーカスするパターンがある。本作は、明らかに後者。ジョンの一家はアメリカ政府によって数少ない“緊急避難者”に選ばれたのだ。空軍基地へ向かい、そこで輸送機に乗ればいい。つまり“ノアの方舟”のようなもの。しかし基地に行くまでに、想像を絶する試練が待っていた……。
パニック映画なので「これは、ありえない!」という描写があるのは当然だが、本作の場合、観ているこちらに余計なことを考えるスキを与えない。それくらい次々と事態が急展開していくのだ。ジョンの息子が病気でインシュリンの投与が必要な状況や、周囲の“選ばれていない”人との対立もあって、カウントダウンの脱出劇は一瞬も緩みがない。多くの要素で、ディザスター映画への期待をクリアする一作!
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『Mr.ノーバディ』6月11日(金)よりロードショー
監督/イリヤ・ナイシュラー 脚本/デレク・コルスタッド 出演/ボブ・オデンカーク、コニー・ニールセン、RZA 配給/東宝東和
2020年/アメリカ/上映時間92分
映画の冒頭で、なにかとんでもないことをやらかしたような、ボロボロ状態の主人公が登場。「何者なのか?」と尋問され、「ノーバディ=何者でもない」と答える。そこから物語は過去にさかのぼり、このハッチという中年男の日常がつづられる。
月曜日、火曜日……と、自宅と仕事場を行き来するルーティーンが、テンポよく展開。ゴミ出しや料理なども喜んでこなし、家庭ではよき父親というハッチ。だが、自宅に泥棒が侵入。息子が命の危険にさらされても、なんの抵抗もできなかった彼が、その後、どんな運命をたどるのか?
ここからは、できるだけ前情報を入れずに観れば、自称“ノーバディ”ハッチの隠れた秘密と悲壮な覚悟に、最後の最後まで驚きと興奮に浸って並走できるはずだ。
ハッチを演じたボブ・オデンカークは、人気ドラマ『ブレイキング・バッド』『ベター・コール・ソウル』の弁護士役で知られる。肉体派の印象からは遠い彼が、今回はガラリとイメチェン。俳優としての変貌も、ハッチの運命と重なる。この役のために2年間も肉体トレーニングを積んだだけあって、アクションは見ごたえ十分。
そこにプラスして、年齢を感じさせる痛々しさや、もどかしさも表現し、リアリティも完璧。だから、観ているこちらも前のめりになっていくってわけだ。さらにブラックなジョークや、やや脱力するヘンテコなネタ、仲間の痛快な連携、敵の恐ろしさ、名作のオマージュなど、アクションエンタメのツボを巧みに配分。
『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』6月18日より全国ロードショー
製作・監督・脚本・出演/ジョン・クラシンスキー 出演/エミリー・ブラント、キリアン・マーフィー、ジャイモン・フンスー 配給/東和ピクチャーズ
2021年/アメリカ/上映時間97分
2018年公開の前作『クワイエット・プレイス』は、“音を立てると襲いかかってくる”という、盲目の恐ろしい敵を相手に、サバイブする物語が展開。コミュニケーションは手話で、外を歩くときも裸足……と、その斬新な設定がスリラーやホラーを観慣れた人の度肝を抜き、夢中にさせた。
大ヒットを受けて作られたこの続編では、前作で父親を失った主人公一家、母と子供3人(しかも1人は赤ん坊)の闘いは、当然のごとく過酷を極めていく。まず驚くのは、恐るべき敵が出現した”きっかけ”が描かれること。ここは前作では曖昧になっていたので、地球全体がどんな状況なのかもよくわかる。つまり裏を返せば、前作を観てない人も、この続編からすんなり物語に入りこめるというわけだ。
音を立てずに生き残ろうとする主人公たちのテクニックは、明らかに上達。しかし赤ん坊の泣き声は止められないなど、とにかく全編、緊張の糸がとぎれない。そして、要所でのドッキリ演出がタイミングよく繰り出されるので、“お約束”と感じつつも、主人公たちの味わう恐怖感&緊張感を一緒に体感してしまう。上質スリラーの見本のような仕上がりだ。
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『ブルー・ミラクル』 ネットフリックスで配信中
監督・脚本/フリオ・キンタナ 出演/デニス・クエイド、ジミー・ゴンザレス 配信/ネットフリックス
2021年/アメリカ/視聴時間96分
メキシコの孤児院が経営危機となり、院長のオマールは、このままでは子供たちがストリートチルドレンになってしまうと心配していた。その街では毎年、ビスビーズ・トーナメントが開催される。釣りの世界ではスーパーボウルと言われる大会だが、今年は直前の嵐のために海外の有力チームが不参加。そこでオマールは子供たちとの参加を決意する。
優勝すれば賞金は数百万ドル! かつて優勝経験もあるというアメリカ人のウェイドと組んで、釣りの経験ゼロのオマールや子供たちが、巨大カジキを狙う。実力はありそうだが、うさんくさいウェイド。彼のボロボロの船。子供たちのケンカ……と、ポンコツチームの奮闘ストーリーは、あの『がんばれ!ベアーズ』以来、映画では定番。ただ本作は実話が基になっているので、強引な展開にも嘘くささが感じられない。
主人公のオマール、それぞれ屈折感も抱える子供たちのドラマもエモーショナル。しかも、その話をより感動的に導いてくれるのが、背景の海の美しさだ。空撮も駆使した、カジキを求める釣りの映像に、思い切り夏気分が味わえる。極上のリゾート地の心地よさも感じられるはずだ。
キーパーソンとなるウェイド役はデニス・クエイドだが、メジャーリーガーに挑む中年男を彼が演じた『オールド・ルーキー』が、本作ともシンクロ。この人、再起にかける男をやらせたら最高だってことを、ここでも証明してくれる。そんなハマリ役と子供たちの関係が、ストレートに心に突き刺さるのは間違いない。配信作品だが、サマームービーにぴったりな良心作だ。
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