ネットフリックスの話題のホラー!
『ザ・コール』は、どんでん返しだらけ!
ラブロマンスからホラー、社会派ドラマまで、韓国発コンテンツの勢いが止まらない。昨年の11月からネットフリックスで世界配信され、高い評価を集めている映画『ザ・コール』もその中の1作。もともとは劇場公開が予定されていた作品だが、コロナ禍の影響により、配信スタイルでの提供が選択された。
主人公ソヨンは、幼い頃に火事で父親を亡くしていた。そして、その原因となった母親をいまだに許せずにいた
手掛けたのは、今回が長編デビューとなる新鋭監督イ・チュンヒョン。作品の出発点となったのは、2011年のイギリス映画『恐怖ノ黒電話』。1990年生まれのイ・チュンヒョン監督は同作から“時代と時代をつなぐ電話”という設定を引用し、韓国スリラーらしい物語を構築していった。
1999年に生きているヨンスク。電話を通じて、時代を超えた交流がはじまる
物語の始まりは、2019年。20年前に父親を火事で亡くした女性ソヨン(パク・シネ)が、いまや無人となった実家を訪れることに。スマホを失くしたソヨンは仕方なく、家の物置にあったコードレス電話を使おうとする。
しだいにソヨンはヨンスクとの電話が楽しみになる
すると、電話の向こうからは見知らぬ女性の声が。その女性が生きている時代は1999年で、ソヨンが今いる家で暮らしているらしい。不可思議な現象に戸惑いながらも、電話の女性ヨンスク(チョン・ジョンソ)とソヨンは、時を超えた会話を通して距離を縮めていく。
あらすじのみ追うとほっこりした印象を受けるし、実際、ともに28歳のソヨンとヨンスクが電話越しに親しくなっていく姿は微笑ましい。ソヨンのいる時代の進歩を知ったヨンスクが目を輝かせたり、K-POP今昔話で盛り上がったり。
しかし、冒頭から終始不穏な空気が充満する作品世界は、そのキュートなやり取りに笑みをこぼすことなど許さず、すぐさま意地の悪いスリラーの様相を呈していく。
ヨンスクは、継母から激しい虐待を受けていた。というのも、霊媒師である継母は、彼女が将来とんでもないことを引き起こすと予見していて……
そもそも、過去と未来を結ぶ物語では、ままならない現実が意地悪く突きつけられがちだ。アベンジャーズのヒーローたちはタイムループのセオリーに振り回されるし、日本でのリメイク版も話題の韓国ドラマ『シグナル』もそう。アイアンマンたちや『シグナル』の刑事らは過去を変えることで新たな未来と対峙し、ときにカオスに陥った。
1999年にいるヨンスクが未来を改変したおかげで、ソヨンの現実がよい方向へと変化。火事で死んだ父親も蘇る。しかし、それが恐怖のはじまりだった
『ザ・コール』も例外ではなく、過去にいるヨンスクは当初こそ未来にいるソヨンのため、しだいに自分のため“歴史の改変”に手を染めていくのだが、本作が恐ろしく、またユニークなのは改変するヨンスクが狂気の殺人鬼であるところ。敏感に一転二転する事態が悪夢のように、暴走するヨンスクと彼女を食い止めようとするソヨンの戦いへと変化していく展開が見事だ。
悪夢へといざなうヨンスク役のチョン・ジョンソは、『バーニング 劇場版』で名匠イ・チャンドンに見出された新人。改変のたびに死体を積み上げる最悪な役どころがはまっていて、今後への期待も高まる。
次々と事件を起こし、殺人鬼へと覚醒していくヨンスク。さらには幸せそうなソヨンを妬み、未来を改変し、攻撃を仕掛ける
迎え撃つソヨン役の人気女優パク・シネも、なりふり構わない熱演で新境地を披露。両者の攻防が続く中、さらに驚くべきは物語の着地点だ。ラストシーンの“その後”まで、注視したい。
『ザ・コール』
原案/セルジオ・カシー 監督・脚本/イ・チュンヒョン 脚本/カン・ソンチュ 出演/パク・シネ、チョン・ジョンソ、キン・ソンリョン、イ・エル 配信/ネットフリックス
2020年/韓国/視聴時間112分