【まとめ】映画でオトコを磨け!
傑作ダンディズム映画35選
大人たるもの、まわりから尊敬される人間にならないと。では、どうしたらよいのか? まずは、傑作映画でその生き方を学ぶのもひとつの方法。そこで、参考にしたい大人たちが登場する作品をセレクト。これを見て、オトコの魅力を磨いてみてはいかが!?
Lesson01 ダメな大人にならないため男の生き様映画5選!
男としてどうあるべきか、そのすべてが詰まっている!
頑固一徹、いぶし銀のような魅力を放つクリント・イーストウッドの主演作。大人の男のダンディズムと日常におけるこだわりが全編にちりばめてある。まずかっこいいのが日課。自動車工を定年まで勤め上げた主人公コワルスキーは、毎日ヴィンテージカーのグラン・トリノをピカピカに磨き上げている。亡くなった妻のことも一途に愛していたなど、本物と認めたものを愛し抜く性分は男として見習っておきたいところだ。
物語はコワルスキーと隣に引っ越してきたアジア系移民一家の少年タオとの交流がメイン。未熟な少年に、大人のイロハを教えるところも生き方として惹かれるのだが、1番はクライマックス。コワルスキーがタオ一家とトラブルを起こすギャングに業を煮やし愛用のライフルを持って立ち向かう場面だ。
老人VSギャング集団。どう見ても劣勢なのだが、立ち上がらずにはいられないという、この魂にとにかく心打たれる。当然、本人も承知のうえで、ヒゲを剃り、頑なに行かなかった教会へ赴き懺悔するのだ。この先は本編を観てほしいのだが、このコワルスキーが長年にわたってハリウッドを生き抜いてきたイーストウッド自身と重なって見えることもあり、イーストウッドによる男気指南書ともいえる作品なのだ。
ボロボロになっても立ち上がる姿に男を感じる!
主人公の姿にミッキー・ロークの人生を重ね合わせずにはいられない作品で、かっこ悪さをさらけ出した姿が胸を打つ人間ドラマ。主人公ランディは、かつてメジャー団体で活躍したが、今はステロイド剤の射ちすぎでボロボロになった中年プロレスラー。若手レスラーやプロレスファンからリスペクトされる一方、普段はスーパーマーケットで働かざるをえないほど落ち目になっている。
心臓の手術を受け引退を決意するが、どうしてもリング上で感じた高揚感を忘れることができない。そのうえ、不器用な生き方しかできないため、大好きな娘の約束をすっぽかしては嫌われ、勤務中のスーパーマーケットではファンに見つかり、恥ずかしさから店をグシャグシャにしてしまう。そんなつもりじゃないのに、同じ過ちを繰り返してしまう。誰しも、こんなときがあるだけに、ランディの気持ちが痛いほど伝わってくるはずだ。
ラスト、ランディはボロボロのカラダながら命懸けでリングに上がる。そこには天職に巡り合ってしまった男の喜びと哀しみが見てとれる。‘80年代にフェロモン系男優として一世を風靡したミッキーだが、その後は低迷。破産、離婚、整形手術の失敗……と辛酸を舐めわけだが、本作でベネチア映画祭金獅子賞を受賞しカムバックする。まさにミッキー自身のセミドキュメンタリーを観ているかのようでもある。
昭和的な生き方も男としては憧れる!
麻薬犯罪の撲滅に執念を燃やす刑事たちを主人公にした実録アクション映画。NY市警の薬物対策課所属のベテラン刑事ポパイが麻薬組織を追い詰めていく姿がとにかく圧巻!すべてを麻薬組織壊滅に注ぐポパイの生き方は、働き方改革がうたわれる昨今では時代錯誤かもしれないが、そこまで熱狂できる職を見つけられたという点では羨ましく思えるはず。
ジーン・ハックマン演じるポパイはひたすらNYを走り回り、容疑者たちを次々と検挙していく。なかでも麻薬組織が放った殺し屋とポパイとが地下鉄とクルマとでチェイスを繰り広げるシーンは、映画史に残る名場面だ。ポパイの鬼気迫る捜査ぶりに、刑事という職業に対するプライドがビンビンと伝わってくるだろう。
これと決めたものにすべてを捧げるポパイの生き様に男として憧れるわけだが、続編『フレンチ・コネクション2』では、それに加え男の意地を見せつけてくれる。組織の手に落ちたポパイが麻薬漬けになってしまうのだが、そこから立ち直ろうと懸命になる。この姿も、また胸が熱くなる名シーンだ。
他人の命を、命懸けで救うという生き方!
一介のビジネスマンとしてナチスドイツと渡り合い、1200人ものユダヤ人の命を救ったオスカー・シンドラーを主人公にした感動作。一歩間違えれば、自分自身も国家反逆の罪で処刑されるところを、ビジネスの世界で培った交渉術でギリギリの綱渡りを進めていく生き方が、男としてグッとくるポイントだ。
第2次世界大戦中、ドイツ国内では誰も逆らうことができなかったナチスドイツを相手に、ドイツ人実業家のシンドラーは軍需工場の労働力として強制収容所送りになっていたユダヤ人たちを雇い入れる。最初は営利目的で安価なユダヤ人に目をつけたシンドラーだったが、次第にユダヤ人の悲惨な状況を知り、収容所の鬼所長アーモン・ゲートとお互いの腹を探り合いながら人命救助に目覚めていく。
結局ユダヤ人救出によって全財産を使い果たしてしまうも、戦後も多くの人たちからシンドラーは愛され続けることに。権力を濫用し、悪の道に溺れていったアーモン・ゲートとは実に対照的だ。ユダヤ系米国人であるスティーブン・スピルバーグ監督のクールに抑えた演出もお見事。
ロマンと信念を持って生きる、それがオトコ!
人生の途中で道に迷ったときに観直したいのがコチラ。主人公はトウモロコシ畑を営む平凡な中年男レイ。ある日、レイは畑の中で「それを造れば、彼は来る」という不思議な声を耳にし、畑の真ん中に野球場を造ることを思い立つ。周囲から変人扱いされるも、レイは人生の折り返し点にいることを自覚し、心の声に従うことを決意する。
完成した野球場に現れた戦前の名選手シューレス・ジョーは「ここは天国かい?」とレイに尋ねる。まさに夕暮れの日差しを浴びたグランドは天国のように美しいのだ。亡くなった父と不仲だったことを気にしていたレイだが、野球場を造ったことで父が憧れていた世界に触れ、夢を見ることの大切さに気づく。大人の男ならば流行やまわりの声に流されず、生き方も自分流を貫くべき。そんなことを教えてくれる作品だ。「直感は大事にしたほうがいいわ」とレイを励ます妻アニーのセリフも実に印象的だ。
Lesson02 オトコの冒険映画5選!
『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』
製作年/1981年 監督/スティーヴン・スピルバーグ 主演/ハリソン・フォード 冒険先/南米ジャングル、ネパール、エジプト、ギリシャのクレタ島
痛快アクションでココロをリフレッシュ!
ブルホイップ(牛追いムチ)を武器にナチス軍を相手に勇敢に戦う一方、蛇だけは大の苦手という主人公インディ・ジョーンズが活躍する冒険映画の最高峰。人類の歴史を覆す大秘宝を求め、南米の秘境を皮切りに、米国→ネパール→エジプト→ギリシャのクレタ島と地球をぐるっと一周する大冒険へと繰り出していく。
冒頭の大玉に追いかけられるシーンからはじまる数々の冒険と、ジョン・ウィリアムズの軽快なテーマ曲が日常を忘れさせてくれ、インディとともに冒険の旅へトリップした気分になれること必至。クライマックスでは神と交信できるというユダヤの秘宝“聖櫃(アーク)”の驚きの中身も明かされ、最後までハラハラドキドキの連続。これなら月曜からも、リフレッシュして臨めるはず!
製作は『スター・ウォーズ』のジョージ・ルーカス、監督はスティーヴン・スピルバーグ。少年が夢見る世界を愛してやまない2人の巨匠が最強タッグを組んだ、最上級のエンターテイメント作品。冒険家にして考古学教授である“永遠のヒーロー”インディに扮するのはハリソン・フォード。当時39歳、ダンディさが全身からほとばしっていた時期であり、よれよれのソフト帽とサファリシャツ姿なのだが、それが絶妙でかっこいいのだ。
ノスタルジックな気持ちが明日の活力に!
凶暴な犬がいる私有地を横切り、欄干のない橋を渡り、底の見えない沼へ足を踏み入れる。主人公たちの行く手に控えているのは、誰もが少年時代に味わったドキドキな体験ばかり。観る者は、リヴァー・フェニックス演じるクリスらと一緒に行動しているような気分になっていく。
さらに、森の中で過ごす一夜、年上の不良たちとの対決と、大人の男になるための通過儀礼が待ち構えている。人生は度胸だめしの連続、そんなことを教えてくれる作品だ。仕事でちょっとした壁にぶつかったときなどに、見直してみてはどうだろうか?少年時代に一緒にバカをやった仲間たちの笑顔が思い出され、壁を乗り越える活力を与えてくれるに違いない。そうすると、さらにひと皮むけた大人へと成長できるだろう。
少年時代のイノセントさと故郷の懐かしい親友たちとの友情を思い出させてくれる不朽の名作。4人の少年たちが、森の中にある死体を探しに出かけ、わずか2日間ながら子供から大人へと成長を遂げていく姿を名匠ロブ・ライナー監督があざやかに描き出している。23歳の若さで夭折した伝説の俳優リヴァー・フェニックスの白T&デニム姿がまぶしい。
信じる者は救われるエンディングにやる気がアップ!
冒険映画のお約束といえるのが、古来言い伝わる秘宝伝説を信じるか否か。主人公ベンは先祖代々語り継がれてきたおとぎ話を信じ続けることで、崩壊寸前だった家族の絆を取り戻すことに成功する。実際に財宝探しに夢中になりすぎ、人生を棒に振るトレジャーハンターたちが実在するだけに、ハッピーなエンディングは嬉しくなってくる。週末に観れば「月曜から頑張ろう!」な〜んて前向きな気分にさせてくれるだろう。
独立宣言書に記された暗号を見つけ出す方法、100ドル紙幣のデザインの中に隠されたヒントなど、ベンたちと一緒に謎を解明していく過程が実に楽しい。クライマックスの地下迷宮も一見の価値あり。信念を持って仕事に取り組めば、かけがえのない仲間や生涯の伴侶も見つかる、そんなことを教えてくれる作品だ。
製作は『パイレーツ・オブ・カリビアン』を大ヒットさせたジェリー・ブラッカイマー。ニコラス・ケイジ演じる歴史学者ベンは、中世のテンプル騎士団が隠した財宝の数々だけでなく、命懸けの冒険を通じて知的な金髪美女もゲットする超美味しいキャラクターだ。ワシントンの公文書館に厳重に保管されている“合衆国独立宣言書”の裏面に秘宝の隠し場所が記されているという虚実ないまぜになった歴史ミステリーが堪能できる。
未知の世界に踏みこむ勇気がもらえる!
ちょっとおマヌケだけど、好奇心いっぱいの4人の少年たちの探検隊“グーニーズ”が活躍するコメディタッチの冒険映画。喘息持ちのマイキーたちグーニーズが、屋根裏部屋でたまたま古地図を見つけたことから、伝説の海賊が隠したとされる秘宝探しに乗り出す。
『Safari Online』読者にとっては、何度も観てきた懐かしの作品かも。年上の女性への憧れやギャング一家とのドタバタ劇を織りこみつつ展開する物語に、未知の世界へ足を踏むこむ冒険心=男のロマンの大切さを思い出させてくれるに違いない。まさに心の栄養ドリンク的な1作だ。
お菓子を介して仲良くなったチャンクと心優しき怪力男スロースとの友情に、思わず涙がポロリ。1980年代に大人気を誇った歌姫シンディ・ローパーがノリノリで歌う主題歌「グーニーズはグッドイナフ」も気分を盛り上げてくれるナンバーだ。明るく、大らかさが漂う’80年代テイストが映画全編に散りばめられている。
砂漠の冒険活劇に笑って、怖がって、気分爽快!
恐怖と笑いがほどよいバランスで配合された冒険ファンタジー。古代エジプトにまつわるオドロオドロしい呪いと古代遺跡に残された仕掛けをくぐり抜け、主人公たちは3000年の眠りから目覚めたミイラ男と対決する。人間の精気を吸ったミイラ男が徐々に復活していく姿や砂嵐が巨大な顔になって襲い掛かるシーンなど、最先端のCG技術が生かされた場面は見応えあり。
次々と襲ってくるミイラ軍団との息もつかせぬバトルは、現実を忘れるくらいの没入感が味わえる。それもそのはず、人気ホラー作家のクライヴ・バーカーやゾンビ映画で知られるジョージ・A・ロメロらが脚本段階で参加。死者を蘇らせる魔導士やゾンビ化した民衆が襲い掛かるシーンで、手腕を発揮しているのだ。
死者復活のための生贄に選ばれたヒロインのレイチェル・ワイズを救い出すため、ブレンダン・フレイザーが“死者の都”ハムナプトラへ向かう後半戦はさらに敵と戦いまくり。あまりに夢中になりすぎて、かえって疲れちゃったなんてことにならないように! ?
Lesson03 続出するパワハラに喝! 麗しき男たちの師弟映画5選!
『クリード チャンプを継ぐ男』
年長者が若者に手を差しのべる好例!
ボクシング映画の“伝説”『ロッキー』シリーズの中で、もっとも師弟愛に浸れるのがスピンオフ作品の本作。主人公ロッキー・バルボアは年齢を重ね、自らはボクサーとして完全引退状態。孤独な日々を送る彼の前に現れたのが、かつてのライバルにして盟友だったアポロ・クリードの息子、アドニスだった。
本作の師弟愛がドラマチックなのは、教える相手が自分の家族やアカの他人ではなく、親友の息子という微妙な距離感にあること。アドニスはアポロの死後に生まれたので、チャンピオンだった父の記憶がない。それゆえ、ロッキーは“教え子”との関係に葛藤する部分が多い。しかしながら、悩める若者に手を伸ばし、ともに闘い(ロッキーは重病が判明!)、あきらめない心を教えこんでいく。その様は、年長者としてあるべき姿を観る者に教えてくれる。あの”歴史の男”も、こうだったらよかった!?
自分が習得したテクニックやボクサーとしての精神を、後進の才能に継がせようとする姿に、『ロッキー』のファンならずとも胸が熱くなるはず。スタローンは、本作でアカデミー賞助演男優賞にノミネート。アドニス役のマイケル・B・ジョーダンも迫真の演技で応え、師弟愛のドラマはじつにエモーショナル! 過去の『ロッキー』シリーズへのオマージュや、信じがたいカメラワークによる試合シーンも見どころだ。
主観を排除するフェアな姿勢が大事!
メジャーリーグというスポーツ界を舞台にしながら、この映画が描くのは、監督とプレイヤー、先輩と後輩のような“体育会”的関係ではない。メジャーリーガーからスカウトに転身したブラッド・ピット演じるビリー・ビーンは、オークランド・アスレチックスのゼネラルマネージャーに就任。弱小球団で資金も少ないアスレチックスを立て直す奮闘が描かれる。
本作でビリーがこだわるのは、選手のオールマイティな能力ではなく、個々の得意な部分を輝かせること。データを駆使し、ホームランではなく”出塁率”を重視したりと、チームにとっての必要性を選手に“感じさせる”ことに成功する。勘を頼りにする古参スカウトの反発にも、ビリーはデータ主義の参謀ピーターと心中する覚悟で挑んでいく。ここの師弟関係に、実に熱いドラマが展開される。
客観的なデータをもとにするため、方針と合わなければベテランでもリストラするビリー。そのやり方は一見、非情とも取れる。しかし、弟子が自分の指導から離れると嫌がらせをしたり、自分の地元だけ有利な判定をするようなリーダーよりははるかに公平かも。データ主義が浸透すると選手たちも発奮。アスレチックスは結果的に奇跡の連勝をなしとげる。連勝記録の更新を怖くて見られないなど、“師”の側の心の弱さも描いていて、共感度は高いだろう。
差別を排除し、正当に評価する理想の上司!
NASAに勤務する3人の黒人女性を主人公にした本作は、1960年代が舞台。最先端のNASAですら人種や男女の差別意識が色濃く、3人は仕事が優秀でも正当に評価されない。自分たちだけで闘っても、なかなかこじ開けられない扉。それを開いてくれるのが、ケビン・コスナー演じる理解ある上司ハリソンだ。
3人のうち、複雑な計算を得意とするキャサリンは、新たに配属された白人男性ばかりの部署で才能を発揮する。だが、有色人種用のトイレは800mも離れたビルにあり、コーヒーポットも白人用は使えないなど仕事に支障をきたす。そんな実状をハリソンが打ち破るエピソードが、あまりに爽快!
さらに黒人女性ばかりの計算部でスーパーバイザーを務めるドロシーは、自身の昇進問題と葛藤しながら、同じ部署のメンバーをまとめ鼓舞するなど、あちこちに上司と部下、師弟のエピソードが登場する。NASAを陰で支えた主人公たちの功績は、後の世代の道を切り開いただけでなく、この映画を観た現代のわれわれにも勇気を与えることになった。映画自体が“人生の師”として学べるレベルなのである。
進むべき道をやさしく教えてくれる師の姿に憧れる!
本当に自分はこの道を進んでいいのか? 才能はあるのだろうか? そんな迷いを感じたとき、冷静な判断と経験をもとに、やさしく背中を押してくれる。それが理想の“師”なら、本作の登場人物はまさに当てはまるだろう。16歳の黒人少年ジャマールが、友人にそそのかされて侵入した老人のアパートに、創作ノートが入ったリュックを置き忘れる。戻ってきたノートの文章は、赤字で添削されており、その老人がピュリツァー賞も受賞した有名作家だと発覚する。
作家に文章を教えてもらうジャマール。その関係は師弟関係の理想像だが、一方で文章が急速にうまくなった彼に、学校の教師は疑いの目を向ける。こちらの関係は、パワハラの様相もちらつく。同じ人生の師の立場として、作家と教師のコントラストが絶妙だ。本作はガス・ヴァン・サント監督で、やはり麗しき師弟関係を盛りこんだ名作『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』を撮っている。2作とも、ラストシーンとその余韻が絶品なので、是非観比べてほしい。
自分の上司が年下だったら? そんなときはご参考に!
どんな世界にも“教える”側と、“教えられる”側が存在するが、多くの人が経験するのが、仕事上での上司と部下の関係だろう。場合によっては、年齢とその関係が逆転することもある。アン・ハサウェイとロバート・デ・ニーロ共演の本作は、まさにその典型例だ。
通販サイト会社の女社長ジュールズの下で働くことになったのは、シニア・インターン制度で採用された70歳のベン。仕事上ではもちろん社長と部下という関係だが、人生の経験は当然、ベンの方が豊富。仕事やプライベートで問題にぶつかるジュールズを、ベンは“人生の師”としてサポートする。
肝心なときは手を差し伸べるが、ふだんは一歩下がって相手を見守る。そんな“ジェントルマン”なベンの姿は、ある意味で理想の上司だろう。ベンを演じるデ・ニーロ自身と重ねると、さらに感慨深い。若い時代は過激な演技や役作りも得意としてきた彼が、年齢を重ねていぶし銀の存在感をみせる。アン・ハサウェイとの共演では、俳優同士の美しき師弟関係も感じられて、微笑ましい限り!
Lesson04 人生に迷ったらマイケル・マン監督作を観ろ!男の美学がわかる映画5選!
『ヒート』
男なら、何事にも“プロ意識”を持って挑め!
ロバート・デ・ニーロ演じるギャングのボス、ニール。そしてアル・パチーノ演じるLA市警刑事のヴィンセント。ともに自分の仕事に過剰なまでのプライドを持った、プロ中のプロだ。そのうえ、名優同士がハイレベルの熱演を披露。絶対に譲れない男のプライドを表現したこの『ヒート』は、ハードな男の世界を体感させてくれる。
そんな男のプライドの中でも我らが参考にすべきは、 “プロ意識”の高さだ。強盗集団を率いるニールの場合、たとえば白昼、銀行へ押し入るシーンでは、その大胆かつ冷静な動きに犯罪者ながら“仕事人”としての完璧さが光る。それを象徴するのが、家具が一切置かれていない彼の自宅だ。この理由は、「30秒フラットで高飛びできるよう面倒な関わりを持つな」という言葉にある。要は、危険が押し迫ったときに身一つで逃げられるように。そして、大切な人がいたらその人まで巻き込まないように……っていう彼の哲学なわけ。犯罪者だということを除けば、その生業にストイックに向き合う姿勢やプロとしてのあり方は、男として学ぶべきところがある。
そしてヴィンセントもまた“仕事に憑かれた男”だ。仕事に没頭するとほかの事を忘れて行動してしまう性格。その代償として、家庭を失うという男の悲哀も突きつけられるのだ。この主人公2人を中心に『ヒート』に出てくる男たちに共通するのは、損得に関係なく、カラダの中から湧き出してくる“本能”が原動力になっているという点。実際には、まわりに迷惑をかけるので真似できないが、その本能のままに行動できる男らしい心意気だけは持っておきたい。
男なら、約束を守る有言実行な人間になれ!
愛する女性のために、自らの命を差し出す勇気はあるか? この『ラスト・オブ・モヒカン』でダニエル・デイ=ルイスが演じるモヒカン族のホークアイは、要所で究極の決断を口にする。イギリス軍指揮官の娘で、愛する女性のコーラが火あぶりの刑に処せられそうになると、代わりに自分を火あぶりにしてくれとまでいうのだ。その自己犠牲の精神は、マイケル・マン映画の中でもトップクラスだろう。
主人公ホークアイの原動力はなにかといえば、シンプルに“約束や誓いを守ること”である。イギリス人開拓者の息子ながら、アメリカ先住民のモヒカン族に育てられたこともあって、自分の言動への責任感や覚悟が半端ない。コーラが連れ去られるときのホークアイのセリフがすべてを物語っている。「何があっても生き延びるんだ。そうすれば俺が見つけてやる。どんなに時間がかかっても、どんなに遠くの場所にいても、必ず見つけ出す」。有言実行の男に誰もが惚れるはずである。
男なら、一歩踏み出す勇気を持て!
殺し屋ヴィンセントを客として乗せてしまったことで、恐ろしい任務に付き合わされるタクシー運転手マックスの一夜を描く作品。マックスは、12年間タクシー運転手を務めている平凡な男。いつか会社を立ち上げるという夢も持っているが行動に移さないまま現在に至っていた。一方、ヴィンセントは「最も優先すべきことへ一切の迷いなく最短距離で進む」というルールを己に課して生きてきた凄腕の殺し屋。つまりは、本作は負け組と勝ち組の対比が構成の妙味となっている。
男の美学となると、ヴィンセント側に注目しがちだが、ここはあえて市井の人マックスからそれを見出したい。当初、彼はとんでもない男から逃げることだけを考えていた。が、殺しの標的が書かれたデータがあることを知る。そして、標的がわからなくなるよう破壊するなどの反撃にではじめる。で、クライマックスには、最後の標的アニーを、身を呈して守り、ヴィンセントと激しい銃撃戦まで行う。危険な目に遭うことで、自分自身を究極まで追いこみ、彼はようやく逃げることから1歩踏み出す勇気を得たというわけだ。
「変化のない日常から抜け出したい」、「なにか特別なことはないか」、とマックスのように日々漠然としたなにかを待っている人は多いのではなかろうか。でも、それを現実にするには、まずは行動に移すことが大事。マックスは、ヴィンセントとの出会いで “目の前にあるものから決して逃げない”という男としての踏ん張りを学んだ。ハードボイルドの世界に壮絶なアクションを用意するという、マイケル・マン監督らしいテーマが貫かれた一作だ。
男なら、度胸を据えて立ち向かえ!
麻薬組織に潜入捜査をしていたFBI捜査官が殺害された。情報漏えいを疑うFBIは、捜査に関与していないマイアミ特捜課ソニーとリコに漏えいルートの割り出しを依頼。2人は麻薬の運び屋に成りすまし、組織との接触を図ろうとする……。潜入捜査という過酷な任務が男ゴコロをくすぐる一作。オリジナルのテレビシリーズ版も手掛けていたマイケル・マンが、雰囲気を一新させ、ハードボイルド映画に仕立てている。
当然ながら、そんな2人を潜入先の組織は警戒。現場を取り仕切るイエロは疑いの目を向け、詰問してくる。そこでのソニーとリコの駆け引きが実にお見事。慌てず、騒がず、自らを説明。それでも脅してくる相手に、手榴弾を片手に握りしめ、覚悟を示す。この一歩も引かない度胸のよさに男らしさを感じずにはいられない。
男たちがしのぎを削る世界が得意なマイケル・マン作品にあって、本作はコン・リー演じる美女イザベラとソニーが恋物語を展開。珍しくラブシーンも多いのだが、でも観せたいのはそこではない。愛した女性を組織から逃がすために命を賭けるなどの、男の熱い生き様、そしてみなぎるスピリットだ。人生の中でピンチは何度も訪れる。つい逃げたくなるが、そこは度胸を据えて立ち向かいたい。そこにそこ男の美学があると、この映画は教えてくれている。
男なら、仲間を思いやれ!
大恐慌直後の1930年代。あざやかな手口で銀行強盗をし続け、社会に不満を募らせる大衆の人気を得た人物がいた。それが、実在の犯罪者ジョン・デリンジャーだ。仲間を裏切らず、女性に優しい。そして、“利益を独占する銀行を襲っても、弱者の市民からは絶対に強奪しない”、そんなポリシーを持っていた。その主人公をチャーミングに演じたのが、ジョニー・デップ。マイケル・マンが描いた犯罪者の中でも、このキャラは妙に人間味がある。
特に男として見習いたいのが、仲間を思いやる気持ちだ。インディアナ州刑務所に服役している仲間を相棒レッドとともに脱獄させたり、警察の監視下にある恋人ビリーを命がけで迎えに行ったり。一般的に犯罪者といえば、仲間を裏切ってでも生き延びるイメージが強い。しかし、このデリンジャーは自分よりも仲間を優先するのだ。なぜならそれがポリシーだから。自分の中の“誓い”や“ポリシー”を大切にする点は、マイケル・マン映画に共通する醍醐味だろう。
ちなみにデリンジャーを追う、FBI捜査官のパーヴィスはあえて冷血な仕事人として描かれる。こうやって、善が悪に、悪が善に見えるというパラドックス、つまり善悪のモラルを崩していく点もマイケル・マン監督の真骨頂だ。
Lesson05 “頼れる男”といわれるためのレスキュー映画5選!
『ザ・ブリザード』
救助に大事なことは、“捨て身の覚悟”と“千載一遇の機会を逃さないこと!”
1952年、未曽有のブリザード(暴風雪)がアメリカ東海岸を直撃! 巨大タンカーが座礁して真っ二つになり、32人の生存者が海の只中に取り残されてしまった(コレって実話)。この事故がとんでもなかったのは、あまりにも救出が困難な状況だったこと。風速40mの大吹雪、波の高さは20mもある。通常であれば救助に向かえる天候ではない。が、そんな中救出に向かったのがわずか定員12人の救命艇一艘。しかも、船のコンパスが壊れてしまい、乗りこんだ4人の湾岸警備隊員は運と勘だけで沈みゆくタンカーを見つけなくてはならなくなったのだ!
映画の中で男らしさを感じるのが、救出に向かう湾岸警備隊の勇気。正直、嵐の中でタンカーを探すのは命がけの行為。しかし、沈みゆく命を救うには、無謀ともいえる捨て身さで挑まないとできないことを救助隊は教えてくれる。さらに、12人乗りの救命艇で、生存者32人を救わなければならない窮地では、全員の乗船を即決。最後の1人が救助艇に乗ったあとタンカーが沈没。救助はワンチャンスを掴まなくてはダメ。迷っていてはいけないことを肝に命じておきたい。
そして一方、救助を待つ人たちの機転も胸に刻みたい。救助艇の目印となる灯台が、嵐による停電でダウン。それを知った人々は、クルマを持ち寄り、ライトを点灯させて船の向かう先を誘導したのだ。何が起こるかわからない災害時。頼りになるのは、恐れずに立ち向かう心意気と先を読む発想ということだ。
巨大地震での救助はヘリコプターが有効!?
サンアンドレアス断層が縦断するカリフォルニア州は地震多発地帯として知られている。そんな中、いまだ誰も体験したことがないレベルの大地震が襲ってきたら? そんな「もしも」をスペクタクル描写満載で描いたパニック超大作が『カリフォルニア・ダウン』。大都市ロサンゼルスが崩壊、サンフランシスコも崩壊。アメリカが誇るフーバーダムも決壊。そんな中、“ロック様”ことドウェイン・ジョンソン扮するレスキュー隊員が家族を救出するべく大奮闘する。
この作品で描かれる地震は超巨大レベル。想像を超える揺れに、高層ビルは次々と崩れ落ち、中には真ん中から裂けて崩壊するビルまで出てくる。逃げ惑う人々の上には瓦礫が降りかかるなど、さすがに地上では救助どころではなさそう。そうなると、「主人公のようにヘリコプターでのレスキューが現実的なのかもしれない」。実際、我々が住む日本も、南海トラフ巨大地震が懸念されているため、他人事ではない。避難ルートの確認や、食料の備蓄はもちろん備えておくべき。そのうえ、ドウェイン並みにヘリコプターの免許を取得しておけば、これほど“頼りになる男”いないかも!?
火災現場では、不用意にドアを開けてはいけない!
消防士となった兄弟の葛藤と絆を描いた感動作。同じく消防士だった父親の後を継いで消防士一筋でやってきた兄スティーブンと、新米消防士として現場に配属された弟のブライアン。2人が駆けつける火災現場シーンでのリアルな炎の表現がなんとも圧巻な作品で、話題となった。
この作品が教えてくれるのは、とにかく火災に際には「不用意に扉を開けちゃダメ!」ということ。火災で高温になった密閉空間の扉や窓を開けると、急速に酸素が流れこんで大爆発が起きる現象“バックドラフト”が襲いかかるからだ。
消防士でもないのに燃えさかる炎の中で救出活動する機会はまずないが、しかし万が一、火災現場での救助に直面したら、扉を開ける際には十分気をつけるべし。そのためにもまずは本作を観て心の準備をしておけば、いざというときにオタオタせずに済むはずだ!
混乱の中でも冷静さを失わないこと!
アメリカ沿岸警備隊のエリート養成学校を舞台に、“守護神”の異名を持つ伝説的な沿岸警備隊員ベンと新人訓練生ジェイクの絆と成長を描いたアクションドラマ。この映画が興味深いのは、新人ジェイクを1人前にするという物語だけでなく、教える立場のベンがジェイクを通じて過去のトラウマから立ち直るという点も織りこまれているところだ。クライマックスでの命を賭けた2人のレスキューシーンは胸が詰まること必至。
本作が教えてくれるのは、救助現場での心得。舞台こそ、嵐の中でのレスキューと現実ではなかなか遭遇しないシチュエーション。しかし、ケビン・コスナー演じる教官ベンが語る、「混乱の中でも冷静さを失うな」という教えは、あらゆるケースに当てはまる。劇中でも、事故に遭遇した救助者が動揺して暴れるため、救助作業の邪魔となる場面が出てくる。その際にベンは顔面を殴って黙らせる荒技を披露(⁉)。そこまでしなくともいいだろうが、万一の場面では、まず冷静になることが“頼れる男”の第一歩であることは間違いない。
どんな状況でも“最後まであきらめないこと”
1996年に発生した、エベレスト登山史上最悪といわれた大量遭難事故を映画化した作品。遭難したのは探検家ロブ・ホールが率いる登山隊。病理学者のベックのほか、日本の登山家・難波康子も参加していた。彼らの多くはエベレスト登頂には成功したのだが、ふとした判断の遅れから下山中に強烈な嵐に襲われて、立ち往生してしまったのだ。
遭難を知ったベースキャンプでは、登山ガイドのガイらがレスキュー活動に奔走。難所で身動きができないロブには、なんとか気力を振り絞って下山してもらわなくては! と、自宅で彼の帰りを待つ妻と衛星電話を繋いで会話をさせる。また、命からがらベースキャンプへ戻ってきたベックには、すぐに救助ヘリを要請。本来ヘリコプターを飛ばすことができないほどの高度だが、救助ヘリ側も命がけでフライトを敢行する。
この物語が素晴らしいのは、遭難者たちのサバイバルだけでなく、彼らを救おうとレスキュー活動する者たちの“最後まであきらめてはいけない”というメッセージがしっかりと描かれているところ。“頼れる男”は“あきらめない男”でもあるべきなのだ。
Lesson06 過酷な状況でもあきらめず生き残れ!大人のサバイバル映画5選!
『レヴェナント:蘇えりし者』
極寒を凌ぐ秘策はコレが一番⁉
時は1823年。毛皮で生計を立てるハンターのヒュー・グラスが、瀕死の重傷を負いながら、旅を続ける物語。主演のレオナルド・ディカプリオが本作でアカデミー賞主演男優賞を受賞しただけあって、狂気にも近い熱演がサバイバルを生々しく伝えてくれる。背景となるのは、過酷な大自然。しかも極寒の気候。さらに食料もわずかで、グラスは脚まで骨折する。自分の命を狙う集団もいたりして、映画史上 “生き残る可能性”が最小のシチュエーションといっていい。
クマと戦うという、冒頭から激烈を極めるグラスのサバイバル劇。なかでも、最もインパクトを与えたサバイバルが、夜の寒さをしのぐための信じられない秘策だ! 馬を走らせ、高い崖から落下したグラスはかろうじて生き残る。しかし、馬は絶命。そこで、極寒の夜を越すことになったグラスは、なんと馬の“体内”に入りこむのだ。馬の内臓に残った体温で暖をとるサバイバル術は、実はアイスランド映画『馬々と人間たち』にも登場する。意外や意外、コレって自然の中で暮らす人にとっては実用的⁉
洋上でのサバイバルは“日焼け”に要注意!
嵐によって沈没した船から奇跡的に助かったパイ。彼はかろうじて救命ボートに避難し、タイトルどおり洋上で227日サバイバルするというこの物語。パイの両親は動物園も営んでおり、救命ボートにはパイのほかに、シマウマ、ハイエナ、オランウータン、ベンガルトラも乗っていた。彼らは弱肉強食の本能を剥き出しにする動物だ。こうした状況には、少しばかり“幻想”もこめられている。しかし、最後に残ったトラとの闘いも含め、パイが強いられる運命は予想を超えていた。
救命ボートに緊急時のマニュアルガイドがあったことで、パイのサバイバル術はかなり論理的。雨水を貯めて飲み水を確保。手作りの竿で魚を釣って食料にする。流木でイカダを作り、トラとは一定の距離をとる……などなど。その中でも、洋上での大切なサバイバル術が、日焼け止めだ。漂流していたのは赤道近くなので、強烈な日差しが海面に照り返し、ほおっておくと全身の皮膚がヤケド状態になってしまう。布などを駆使した日よけが、食料や水と同じくらい必要だと本作は教えてくれる。これは、海によく行く波乗り好きはカラダですでに感じているかもしれないが、改めて心に留めておくといい注意点だ。
孤独な心を癒すためにモノに話しかけろ!
乗っていた貨物機が太平洋上で墜落し、なんとか救命ボートにしがみついて漂流。ようやく陸地に着くも、そこは動物さえいない無人島だった。同乗していた仲間は遺体で流れ着き、主人公チャックの孤独なサバイバル生活がはじまる。チャック役がトム・ハンクスであるということも大きな要因だが、ビデオテープやスケート靴、ドレスなどの漂着物を駆使したアイデアでサバイブする方法など、超シビアな状況ながら、いい意味での軽妙さふがあるのも本作の魅力。感情移入しやすいサバイバル映画だ。
とはいえ、無人島での生活は4年にもおよび、チャックは自殺を考える瞬間もある。肉体的にももちろんだが、精神的に追いつめられてしまうのだ。そんな状況でチャックの心の支えになるのが、ウィルソンである。人間の顔を描き、ウィルソンと名付けたバレーボールに、常にチャックは語りかけ、孤独な心を癒そうとする。限界状態では、どんな物でもいいから他者の存在が生きる勇気を与えてくれる、というわけだ。そのウィルソンとの別れのシーンは強烈に胸を締めつけられる。
大ピンチなら究極の決断は自分で下す!
なんとか肉体を動かせれば、生き残る術を見つけられるかもしれない。しかし、まったく動けない状況では、助けを呼ぶことすらできない。閉所での生死ギリギリの恐怖を体感させるのが、この『127時間』だ。ユタ州でキャニオング(渓谷でトレッキングやクライミング、水泳などを楽しむこと)の最中、滑落によって岩の間の小さな隙間で動けなくなってしまったアーロン。大声で叫んでも、周囲には誰にもいない。わずかな水と食料で耐えながら、彼はビデオカメラで自分を記録しはじめる。実話の映画化で、タイトルは彼が生還するまでの時間を示している。
さまざまなサバイバル映画があるが、本作ほどの“究極の決断”は珍しい。動けない原因は、岩に挟まった右腕。なんとしても生きて脱出したいアーロンは、持っていた小型ナイフで挟まった部分を切断しようと決意する! もちろんそんなに簡単に腕を切断できるわけはなく、想像を絶する過酷な痛みが待ち受け、映画を観ているこちらも気を失いそうな感覚に! たとえ肉体の一部を失ったとしても、命があってなんぼ……。サバイバルの極意がここにある。
自然災害の恐怖の中で生きる精神力を持つ!
2004年のスマトラ島沖地震は、大津波の被害もあって死者22万人という大災害となった。その津波に遭遇したスペイン人一家の実体験を基にした本作。津波のシーンなど映像はかなりリアルでショッキング。しかし、それゆえに一家の切実な運命が手に取るようにわかる。現実から目を背けない演出や演技が、感動を高める好例だ。両親役のナオミ・ワッツとユアン・マクレガーも真に迫る熱演を見せるが、実はこの作品の後、スパイダーマンに抜擢された長男ルーカス役、トム・ホランドの天才子役ぶりも必見だ。
そのルーカスと母親マリアが津波の中で決死のサバイバルに挑むシーンは、息もつけないほどの緊迫感。ものすごい勢いの濁流、猛突進してくる漂流物、水中の障害物などで、もはや自力では助かりそうもない。しかし、瞬間的な判断が生死をわけたりもする。ちなみこの映画の中で母と長男は、木につかまってまずは一命をとりとめる。母は重傷を負いつつも生きようとする。いつどこで遭遇するのか予測もできない自然災害。万が一、同じ状況になったら……と考えながら観てしまうが、この疑似体験こそサバイバル映画の本質だろう。
Lesson07 人生諦めるにはまだ早い!大人が夢を叶える映画5選!!
誰も成し遂げたことがないチャレンジをしてみない!?
新たな夢を描き、それに向かって突き進むのは、子供や若い世代がやること? いやいや、何歳になっても夢や野望を抱き続けるのは大切。そして大人になってから叶える夢こそ、人生をドラマチックにする。つまり映画にも最高のテーマになる、ってこと! その典型的な例が『グレイテスト・ショーマン』の主人公、P・T・バーナムかもしれない。身分違いのお嬢さまと結婚し、子供たちも生まれ、幸せな生活を送っていた彼だが、就職した貿易会社の倒産など不運が重なった挙句、ショービジネスの世界で、誰も成し遂げたことがないチャレンジへ向かうことに!
バーナムの魅力は、機転のうまさと“あきらめない”精神力。貿易会社の船が沈没したら、すぐに船の登録証を手に入れ、借金の担保にする。サーカスを始めてからは、周囲の悪評にもかかわらず、次々と奇策を繰り出して、観客からの支持をつかむ。もともと子供時代から夢見がちな性格のバーナムだったので、このサクセスストーリーには納得だが、物語の後半、すべてを失う大事件が起こっても、不屈の魂で立ち上がる姿に誰もが共感させられるはず。ヒュー・ジャックマンがバーナムの“人たらし”な面を名演しているし、ミュージカルというスタイルも夢を叶えるというテーマに最適な効果を上げている。
製作年/2014年 製作・監督・脚本・出演/ジョン・ファブロー 出演/ソフィア・ベルガラ、ジョン・レグイザモ、スカーレット・ヨハンソン、ダスティン・ホフマン
安定した生活を捨て、リスクも覚悟で新たな目標に突き進め!
やりがいのある仕事に就き、しかも優秀な能力を発揮し続ける。見方によっては夢が叶った理想の人生でもあるが、当人にとっては現状維持かもしれない。本作の主人公、キャスパーは、そのパターン。LAの人気レストランの料理長なのだが、メニューに口出しするオーナーと対立。しかもSNSで炎上騒ぎも起こして店を辞めるハメになってしまう。別れた妻の提案で息子とともに故郷のマイアミへ向かった彼は、キューバサンドイッチ(クバーノ)に魅了され、フードトラックでの移動販売を決意するのだった。
安定した生活を捨て、リスクも覚悟で新たに目標を作ること。そして結果的に、人生が輝き始める、という気持ちのいい流れに乗っていける一作。キャスパーのキャラクターが明るいうえに、彼の再起を助ける周囲の人物も温かみに溢れるのが好印象。疎遠だった息子との絆も、主人公のもうひとつの夢として捉えると感慨深い。本作の監督で自らキャスパーを演じるジョン・ファヴローは、『アイアンマン』でロバート・ダウニーJrのキャリアを復活させたが、そのダウニーJrがこの『シェフ』ではキャスパーにフードトラックを譲る役で登場。恩人であるファヴローの作品に、夢をサポートする役割を果たしたわけで、そんな関係も重ねながら観れば、夢を叶える大人たちのドラマは感動倍増だ。
製作年/2013年 監督/デヴィッド・フランケル 脚本/ジャスティン・ザッカム 出演/ジェームズ・コーデン、アレクサンドラ・ローチ、ジュリー・ウォルターズ
過酷で劇的な運命を“ゴット・タレント”で一発逆転!
スポーツやエンタテインメントの分野では、素質を発揮するうえで“旬”の年代がある。しかし常識に囚われていたら、せっかくの才能が永遠に埋もれてしまう……。というわけで、“夢を叶えるのは遅くても大丈夫!”と人気になったのが、視聴者参加型のオーディション番組だ。その先駆けである英国の“ブリテンズ・ゴット・タレント”で発掘されたのが、ポール・ポッツ。オペラ歌手を夢みていたが、容姿のコンプレックスなどで挫折。スーパーマーケットに就職し、市議員も務めたポッツだが、ボイストレーニングだけは怠らず、37歳の時、最後のチャンスとして挑んだ番組で優勝。世界ツアーもこなす大スターになった。
この映画で改めて驚かされるのは、ポール・ポッツのあまりに過酷で劇的な運命。腫瘍の切除手術や交通事故による骨折、治療費のための多額の借金など、とにかく踏んだり蹴ったりの人生。しかし苦難の連続でも、どこかのんびりしたポッツのキャラで、観ながら悲痛な気分にならないのが本作の特徴。妻のプッシュによる番組への応募や、携帯電話ショップでの仕事との両立など、ついに栄誉をつかみ、まさかの“あの人”の前で歌うことになるクライマックスは心を鷲掴みにされる。ポール・ポッツは性格的に弱気な面あり、夢を叶える能力や執念はそれほど強く感じられない。そんな人物がタイトルどおり、わずかなチャンスに懸けるので、観ているこちらも勇気をもらえるのだ。
製作年/2009年 原作/ジュリー・パウエル、ジュリア・チャイルド 監督・脚本/ノーラ・エフロン 出演/メリル・ストリープ、エイミー・アダムス、スタンリー・トゥッチ
夢を叶えるには根気も必要!
夢を叶えるうえで重要なのは“根気”かもしれない。一歩は小さくてもいい。とりあえず積み重ねていくことで新しい道が開けると教えてくれるのが『ジュリー&ジュリア』。小説家の夢をあきらめ、公務員として働くジュリーは、30歳を前にしてキャリアップする友人たちの姿に焦りを感じる。“このままではダメ。人生を変えたい”と自らを奮い立たせた彼女は、幼い頃、憧れていた有名料理研究家ジュリアの524ものレシピを、一年間ですべて作り、毎日ブログに載せるというチャレンジを試みる。
当初の作家という夢とは違うかもしれないが、大好きな執筆活動と料理を組み合わせるというアイデアによって、新たな方向性が生まれる。これは大人が夢を達成する、最適なプロセスかもしれない。本作ではジュリーのドラマだけでなく、料理研究家ジュリアの物語も並行して展開。1949年に夫の仕事のためにアメリカからパリへ移住したジュリアが、名門料理学校で学び、やがてTVにも出演する人気料理人となる。ジュリアも結婚後、大きな夢を叶えたわけで、2人の生き方がシンクロし、ダブルの達成感。そしてこの映画の原作は、モデルとなったジュリーその人。結局、彼女は一度あきらめた作家への夢を自伝小説として叶えたことになる。
製作年/2009年 監督/サーシャ・ガヴァシ 出演/スティーブン・リップス・クドロー、ロブ・ライナー、ラーズ・ウルリッヒ
低迷からの復活ロードは人生の応援歌!
ある程度の成功を達成した後に、残念ながらその地位を失えば “過去の人になる。その場合、復活への道はさらに厳しいが、だからこそトライする価値もある。そんな生き方を教えてくれるのが、このドキュメンタリー。1970年代に結成されたカナダのヘヴィメタバンド、アンヴィル。80年代前半までは有名だったものの、その後、人気は低迷。しかし創設メンバーで親友のスティーヴとロブは、給食の宅配や建設現場で働きながら、バンド活動を地道に継続。ようやくツアーの話が舞い込んでも会場はガラガラだったり、その現実はシビアなのだが、カムバックを模索する彼らの姿が、有無を言わさぬ感動を届けてくれる。日本でのシーンは胸アツものだ。
メタリカやガンズ・アンド・ローゼズのメンバーも登場し、アンヴィルからの影響を告白。本作の監督は、もともとアンヴィルの大ファンで、彼らのツアーにもローディーとして参加した経験があるので、メンバーも安心して素顔と本音をさらす。この映画が作られたのは2008年だが、アンヴィルは現在も活動中。良く言えば“しぶとい”。ちょっと否定的に表現すれば“あきらめが悪い”。しかしすべてを総合すれば“カッコいい”というのが最高の形容詞だろう。アンヴィルの夢は、まだまだ終わらない!
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photo by AFLO