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CULTURE カルチャー

2025.03.26


最恐の麻薬王が女性としての人生を歩む! 映画『エミリア・ペレス』監督インタビュー!

 

 


カンヌ国際映画祭での審査員賞と女優賞の受賞を皮切りに、米アカデミー賞では最多の13ノミネートを受けて2部門を制するなど、世界中の映画祭を席巻してきた『エミリア・ペレス』。麻薬王という過去と生まれ得た性別を捨て、女性として新しい人生を歩もうとする者の、数奇な人生をミュージカル仕立てて描いた注目作だ。金権と汚職にまみれた社会、それを主導する男権主義、その陰で抑圧される女性たち。現代の問題を鋭く見据えた物語は、確かな歯応えを感じさせる。

監督のジャック・オーディアールは、カンヌ映画祭パルムドール受賞作『ディーパンの戦い』(2015年)や、ヴェネツィア映画祭監督賞に輝く『ゴールデン・リバー』(2018年)などで知られるフランスの名匠。70代にして初めてミュージカルを手がけ、映像表現の新たな可能性に挑んだことも高く評価されている。彼はどんな思いで、『エミリア・ペレス』を生み出したのか? 横浜フランス映画祭のために来日したオーディアールに話を訊いた。

――これまでシリアスな作品を多数手がけてきたあなたがミュージカルを撮るのは意外でしたが、どんな経緯でミュージカルを?

「ミュージカルは以前から、ずっとやってみたいと思っていました。私の監督2作目『つつましき詐欺師』(1996年)を撮ったとき、音楽を手がけたアレクサンドル・デスプラと“オペラのような映画を作ろう”と話し合ったこともあります。結局、実現はせず、ここまで時間を要しました」

――ミュージカルシーンをつくるうえで、どんなことに気を配られたのでしょう?

「音楽のクレモン・デュコルとカミーユに伝えたのは、そのキャラクターの気持ちを歌うだけのミュージカルシーンにはしたくないということです。歌っていても、ストーリーを止めずに進行させ続けたかった。この物語には多くの要素があります。麻薬取引というリアルな犯罪の要素の一方で、センチメンタルな部分や過激な展開もある。その中で主人公エミリアや、彼女を助ける女性弁護士リタなどのキャラクターは変化し、深化していきます。その流れが止まることなく、続いていかなければならないと考えていました」

――アカデミー賞の歌曲賞を受賞した『El Mal」をはじめ多くの印象的な曲が詰め込まれていますが、曲つくりはどのように進められたのですか?

「基本的に作曲はクレモンです。カミーユが作詞を務め、私は彼女に歌い出しやキーワード、歌の内容について要望を出しました。なかには彼女がすべて作ってくれたものもありますが、基本的な作業はそのような感じですね。私はその歌に合わせ、ミュージカルではないシーンでも、リズムや雰囲気を優先して台詞をつくっていきました」

――カンヌ国際映画祭では4人の女優が一緒に女優賞を受賞するという快挙を成し遂げました。彼女たちとの共同作業について教えてください。

「それぞれに個性的で、それぞれに素晴らしさがありました。リタ役のゾーイ・サルダナはキャラクターの細かい部分まで知りたがり、追及する。私の意見にも注意深く耳を傾けてくれる真のプロです。エミリア役のカルラ・ソフィア・ガスコンは、自由に演技をさせるのが良いタイプで、向こうから積極的に意見を言ってくる。彼女の元妻ジェシカ役のセレーナ・ゴメスに対しては、自信を持たせるような演出を心がけました。現場はスペイン語や英語が飛び交っていましたが、私はスペイン語ができません。それでも英語とカルラ語、セレーナ語でコミュニケーションを取ることができましたよ(笑)。彼女たちとの仕事は本当に素晴らしい経験でした」
 
 

【プロフィール】ジャック・オーディアール/1952年4月30日、パリ生まれ。1994年に『天使が隣で眠る夜』で映画監督デビュー。同作でセザール賞を3部門受賞し、続く『つつましき詐欺師』(1996年)でカンヌ国際映画祭の脚本賞を受賞した。カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞した『預言者』(2009年)、同じくカンヌでパルム・ドールを受賞した『ディーパンの闘い』(2015年)、ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞に輝いた『ゴールデン・リバー』(2018年)などがある。

――主演のカルラ・ソフィア・ガスコンは実際に性別適合手術を受けたトランスジェンダー女優ですが、どのような経緯でキャスティングを?

「当初の脚本は映画とは異なり、キャラクターが皆若かった。エミリアは30歳で手術を受けるという設定でした。それに沿ってメキシコでキャスティングをしたのですが、ふさわしい俳優が見つからない。そんな中で、カルラとゾーイに出会い、初めてしっくりくるものを感じました。それはキャラクターの年齢の初期設定を間違えていたと気づかせるに十分でした。そこでキャラクターたちの年齢を引き上げたのです。人生を重ねてきた人ほど、そこにはドラマがありますから映画も面白くなる。エミリア役は実際のトランスジェンダーに演じて欲しかったので、カルラと会えたのは運が良かったとしか言いようがありません」

――この映画のテーマを考えたとき、もっとも大きいのは男性優位社会における女性の苦悩であると思ったのですが、そのようなテーマを扱ううえで気を配られたことは?

「社会の現実を図式化したいという思いはありましたが、それを強調するつもりはありません。この映画はメロドラマでもありますから。ただ、たとえばリタというキャラクターを考えたとき、メキシコに住む40歳の黒人女性が弁護士という仕事において、男社会の中で成功する確率は低いだろうということは自然と浮かび上がってきました」

――いつも力強い人間のドラマを作っていらっしゃいますが、どんな哲学をもって映画作りに臨まれているのでしょう?

「力強さを意識しているつもりはありませんが、どんな人間ドラマも挫折で終わるのではなく、第二の人生のチャンスがあってもいいと考えています。シナリオを書くときに気を付けているのは、決してキャラクターを俯瞰せず、彼らの目線で語ることですね。また、善悪を簡単に決めつけないこと。そして、どれほどの苦境に追いやられたキャラクターであっても自由でいて欲しい、ということです」

『エミリア・ペレス』3月28日公開
監督・脚本/ジャック・オーディアール 出演/ゾーイ・サルダナ、カルラ・ソフィア・ガスコン、セレーナ・ゴメス、アドリアーナ・パス 配給/ギャガ
2024年/フランス/上映時間133分

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取材・文=相馬学 text:Manabu Souma
©2024 PAGE 114–WHY NOT PRODUCTIONS–PATHÉ FILMS-FRANCE 2 CINÉMA
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