『マッドマックス2』
製作年/1981年 監督・脚本/ジョージ・ミラー 音楽/ブライアン・メイ 出演/メル・ギブソン、ブルース・スペンス、バーノン・ウェルズ
アウトローしかいない世界!
1979年の『マッドマックス』のヒットにより、2年後に作られたこの続編。製作費もアップしたことで、壮大な世界観が完成され、マシンなどの魅力も倍増された。シリーズの中でこの2作めを偏愛するファンも多い。前作から数年が経ち、石油不足によって荒廃した大地が舞台。ガソリンの争奪が繰り広げられ、暴走族が各地で脅威となるなか、生きる希望も失っていたマックスが、壮絶な戦いに巻き込まれていく。
暴走族が幅を利かせる世界観なので、マックスを含めて登場人物たちすべてがアウトローと言っていい。赤いモヒカン頭のウェズなど、見た目はもちろん、あらゆる行動が過激すぎる悪役たち。中でも暴走族を束ねる首領のヒューマンガスは、鉄仮面に革ベルト、マッチョな肉体が超インパクト。シリーズの最新作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のイモータン・ジョーとも比較したくなる。1980年代のアクション映画から、日本の漫画『北斗の拳』まで、本作にインスパイアされた作品も多い。
『未来世紀ブラジル』
製作年/1985年 監督・脚本/テリー・ギリアム 出演/ジョナサン・プライス、ロバート・デ・ニーロ
美女の救出劇は現実?
『12モンキーズ』の鬼才テリー・ギリアムによる、風刺とブラックユーモアに満ちたSFスリラー。舞台は体制が人々の情報を掌握している管理社会。情報省の小役人サムは、このところ自身が騎士となり、美女を助ける不思議な夢を頻繁に見るようになっていた。そんなある日、夢の美女とそっくりの女性ジルと遭遇。犯罪者となり当局に追われている彼女を、サムは情報改ざんにより助けようとする。
【ココからネタバレ】
ジルを無罪にして一度は結ばれるも、情報省に逮捕され、拷問されるサム。そのとき、彼と旧知の非合法の配管修理人が省を襲撃。救出されたサムはジルとともに逃げ切ってハッピーエンド……と思いきや、物語は拷問室に戻り、救出劇は廃人と化したサムの妄想であったことが判明する。救いのないエンディングだが、この衝撃こそがギリアムの目指した痛烈な社会風刺。アメリカではテレビ放映時、拷問室に戻る前で終わるハッピーエンド・バージョンも作られたが不評だったという。
『ガタカ』
製作年/1997年 監督・脚本/アンドリュー・ニコル 出演/イーサン・ホーク、ユマ・サーマン、ジュード・ロウ、ザンダー・バークレイ
適正者と偽り宇宙飛行士を目指す!
遺伝子操作によって優良な要素だけを持って生まれた“適正者”と、自然妊娠で生まれたことで能力や外見の劣る“不適正者”が存在する未来。ヴィンセント(イーサン・ホーク)は“不適正者”のハンデを抱えながらも宇宙飛行士になる夢を叶えるため、“適正者”であるジェローム(ジュード・ロウ)から生体IDを買い取る。こうしてジェロームになりすましながら、夢に向かう日々を送りはじめるヴィンセントだったが……。
公開から20年以上経った今も、大勢のファンに愛され続けるSFサスペンスの傑作。社会的な差別を受ける“不適正者”のヴィンセントが“適正者”になりすまし、苦闘を繰り広げる展開がスリリング。単なる“なりすまし”の枠を超え、生きることの意味や運命とは何かを考えさせる。
『12モンキーズ』
製作年/1995年 監督/テリー・ギリアム 出演/ブラッド・ピット、ブルース・ウィリス、マデリーン・ストウ、クリストファー・プラマー、デヴィッド・キース
ブラッド・ピットとブルース・ウィリスの共演作!
ウィルス・テロによって人類の大半が死滅した未来。囚人のコール(ブルース・ウィリス)は科学者たちの命令によって過去へタイムスリップし、事件の鍵を握る謎の組織“12モンキーズ”の実態を明らかにしようとするが……。『未来世紀ブラジル』で知られる奇才テリー・ギリアムが奇想天外な創造性を十二分に発揮したSFサスペンス。
本作をめぐってはウィリスとブラピがそれぞれ「自分のイメージからの脱却」を求めてギリアムに出演を直談判したことでも有名。特にブラピの役柄は謎の組織のリーダー格であり、精神科病棟で見せるケツ丸出し(ブラピのアイデアだとか)のエキセントリック&ハイテンションぶりは今や伝説として語り継がれるほど。役の習得のためボイスコーチに付いて舌と唇の動かし方を徹底的に鍛え上げたというから、その覚悟も相当なものだったようだ。本作の演技で彼は人生初のオスカー(助演男優賞)候補入りと、ゴールデン・グローブ賞受賞を果たしている。
『28日後…』
製作年/2002年 監督/ダニー・ボイル 主演/キリアン・マーフィ
速すぎるゾンビにとにかくビビる!
ホラー映画の人気ジャンルであるゾンビ映画界に革命をもたらした“高速ゾンビ”が怖さを倍増させる作品。それまでのゾンビたちは死体らしくノロノロとしか動けなかったのに比べ、本作のゾンビたちは動物実験によって人為的に生み出された凶悪ウイルスに感染した新種で、獲物を見つけると猛ダッシュで襲ってくる! 観ているこちらの心の準備ができないうちにバンバン襲ってくるので、とにかくビビる!しかも窓ガラスくらいは平気でブチ破るほどアクティブだし、噛まれたら数秒で感染してゾンビ化してしまう。待ったなしの恐怖なのだ。
本作を撮ったのは英国映画の鬼才ダニー・ボイル。『スラムドッグ$ミリオネア』では米国アカデミー賞に輝くなど、ドラマ演出の巧みさや映像センスのよさで知られている。そのため怖いだけでなく物語の面白さも備わっている。後半は高速ゾンビたちよりもさらに始末の悪い、残された人間同士のエグい争いにゾッとさせられる。平凡な若者ジムと勝ち気な黒人女性セリーナとの恋愛要素も盛りこまれているので、彼女と一緒にドキドキしながら楽しんでみては?
『ゾンビランド』
製作年/2009年 監督/ルーベン・フライシャー 脚本/レット・リース、ポール・ワーニック 出演/ウッディ・ハレルソン、ジェシー・アイゼンバーグ、エマ・ストーン、アンバー・ハード、ビル・マーレイ
ゾンビだらけの世界でやりたい放題!
人類の大半がゾンビになってしまった世界で、“生き残るための32のルール”を実践しながら生き延びてきたコロンバス(ジェシー・アイゼンバーグ)。やがて彼は最強のハンターやしたたかな美人詐欺師姉妹とともに、ゾンビがいないらしき夢の遊園地を目指すことに……。血ドパー! 内臓グチョー! のサバイバルに、青春ドラマやブラックコメディの要素を注入。ゾンビとはいえ人間の形をした生きものをザックザック殺していく光景からして不道徳に映る上に、生き残るためなら犯罪者になるのもノープロブレムな姿勢にも問題はある。しかしながら、それらを突き抜けたユーモアへと昇華させ、10年後に続編も制作された。
『ブレードランナー 2049』
製作年/2017年 製作総指揮/リドリー・スコット 監督/ドゥニ・ヴィルヌーヴ 脚本/ハンプトン・ファンチャー、マイケル・グリーン 出演/ライアン・ゴズリング、アナ・デ・アルマス、ロビン・ライト
ハリソンが再びデッカードを演じる!
舞台は2049年。人造人間の“レプリカント”が労働者として社会に溶け込む世界で、危険なレプリカントを探すのがブレードランナーと呼ばれる捜査官。その一人で、LA市警の“K”が信じがたい事件に巻き込まれていく。K役は『ラ・ラ・ランド』などのライアン・ゴズリングで、前作のブレードランナー、デッカードを演じたハリソン・フォードも登場し、過去の秘密が明らかに。荒廃した未来社会の風景、その衝撃は前作以上かもしれない。
アナ・デ・アルマスがKを自宅で待つ恋人、ジョイというキャラクターを演じている。毎日の仕事を終えたKに癒しを与え、家事もこなすジョイは、人間の女性そのものの外見ながら、実体はAI搭載のホームオートメーションシステム。いま何かと話題のAIが、未来ではこのジョイのような姿で現実になるのか……と妄想もふくらむ。ジョイはAIと言っても、感情をそれなりに表現。とくに無邪気さや内に秘めた悲しみをKに伝える瞬間は、人間とAIの微妙なボーダーラインに不思議な感覚にさせられる。
『クワイエット・プレイス』
製作年/2018年 製作/マイケル・ベイ 監督・出演/ジョン・クランシンスキー 出演/エミリー・ブラント、ミリセント・シモンズ
音に反応するエイリアンがいたとしたら!?
エイリアンに侵略され、荒廃しきった地球。わずかに生き残った人々は、音に反応するエイリアンの習性に注意を払いながら、静かに潜伏生活をおくっていた。
5人家族のアボット家も、この危機を何とか乗り越えていたが、末っ子がエイリアンに殺されたことから、堅固だった家族の絆は揺らぎ出していた。しかも、妻のエブリンは出産間近で、音を立てることなく、それをやり遂げなければならない。果たして、アボット一家の運命は!?
音を立てたら即死……という斬新な設定が好評を呼び、世界中で大ヒットを記録。公開待機中の続編も待ち遠しい、本格派のSFスリラー。
そもそも人間は、音を立てずに生活できるものなのだろうか? 会話は手話で何とかなるが、ただ生活しているだけでもノイズは生じる。
ましてや、出産時の女性は声を殺すだけで大変だし、何より生まれてきた赤子の鳴き声はおさえようがない。アボット家はそれにどう対処するのか!? 未来のサバイバルのためにも、必見。
『新感染半島 ファイナル・ステージ』
製作年/2020年 監督/ヨン・サンホ 出演/カン・ドンウォン、イ・ジョンヒョン、クォン・ヘヒョ
前作から4年後が舞台!
韓国に残った大量のドル紙幣を運び出す仕事を得たジョンソクは、4年ぶりに祖国へ戻り、想像を絶する世界を目にすることに……。荒廃した都市は、もちろんゾンビだらけ。しかし感染せずにサバイブした人間たちもいることに、まずびっくり! ジョンソクと共闘する一家、ゾンビを捕獲する軍人の集団など、強烈な行動に圧倒されまくる。
列車で移動する日常が、突然、ゾンビ世界と化す恐怖を描いた前作と違って、今回はすでに終末世界になっている状況。その意味では、ゾンビ映画というより、『マッドマックス』などのムードに近いかも。軍人たちが、捕らえた人間をゲームのようにゾンビと戦わせるなど、主人公の敵はゾンビというより、同じ“非感染”の人間。そのぶん、リアルに怖いのだ。
『マッドマックス : フュリオサ』
製作年/2024年 製作・監督・脚本/ジョージ・ミラー 出演/アニャ・テイラー=ジョイ、クリス・ヘムズワース、トム・パーク、ラッキー・ヒューム、リー・ペリー
アクションシーンは異常レベルの演出を用意!
『怒りのデス・ロード』で鮮烈なインパクトを残した大隊長フュリオサの物語。金属の義手を武器に戦い、短く刈り込んだ髪、そして目の周りを真っ黒に塗った外見で、主人公のマックスと同じく、ほとんど言葉を発しない。砦の支配者、イモータン・ジョーに囚われた女性たちを脱出させる彼女の勇姿に誰もが惚れぼれした。このフュリオサには、いったいどんな過去があったのか。少女時代にさかのぼり、激烈ともいえる運命が展開していく。『怒りのデス・ロード』でも少しだけほのめかされたが、フュリオサの故郷は“緑の地”と呼ばれ、“マッドマックス”の崩壊した世界の中ではオアシスのような場所。そこでの少女時代にフュリオサが見舞われる事件から、本作はエンジンがフルスロットル。イモータン・ジョーと覇権を争う暴君のディメンタス将軍という強烈な新キャラも登場し、われわれはまたしてもMADな戦いに没入させられる。
photo by AFLO