Safari Online

SEARCH

CULTURE カルチャー

2024.02.28

あの映画監督の得意技! Vol.11
アリ・アスターの不穏さと徹底した作り込み!


【Profile】アリ・アスター(写真右)/1986年7月15日生まれ、ニューヨーク出身。『ヘレディタリー/継承』(2018年)で長編映画デビュー。

映画ファン、とりわけ近年のエッジの効いた洋画をチェックしているファンであれば、アリ・アスター監督の名を知らない人はいないだろう。ある一家の呪われた運命を描く長編デビュー作『ヘレディタリー/継承』(2018年)でホラーの新次元を切り拓き、カルトな夏至祭にやってきた大学生たちの恐怖奇談『ミッドサマー』(2019年)では、狂気の祝宴を鮮烈に描き切った。強迫観念を抱えた男の心象風景をたどる2月16日に公開した新作『ボーはおそれている』でも彼ならではの、観客を不穏の渦に巻き込む演出は健在だ。本稿では、そんなアスター作品の魅力について語ってきたい。
 

  

 

『ボーはおそれている』(2024年)

アスターの長編3作品の共通点として、まず挙げたいのは、主人公が精神的な問題を抱えていること。『ヘレディタリー/継承』の主人公アニーは夢遊病に悩まされ、『ミッドサマー』のヒロイン、ダニーはパニック障害を抱えている。『ボーはおそれている』の主人公ボーは、まともな社会生活をおくれないほどの不安症である。いうまでもなく、映画における主人公は観客が気持ちを重ねることのできるキャラクター。そんな人物が心の病を抱えているという設定は、観客の内面を不安に陥れる点で効果的だ。恐怖に歪む彼らの表情をクローズアップした映像のインパクトと併せて、強烈な印象を残す。
 

  

 

『ヘレディタリー/継承』(2018年)の撮影風景

さらに注目したいのは、いずれの主人公も家庭の問題を抱えていること。『ヘレディタリー/継承』のアニーは不仲だった母との死別を経験した矢先に幼い愛娘の事故死という悲劇に直面。『ミッドサマー』のダニーは、妹が両親を巻き込んで自殺したという過去のトラウマを引きずっている。そして『ボーはおそれている』のボーは中年となっても、母親に対するコンプレックスから抜け出せない。社会の最小限の単位である家族の物語を主人公に背負わせることで、観客にとって彼らがより身近な存在となるというワケだ。
 

  

 

『ミッドサマー』(2019年)

凄惨な死というエピソードも、アスター作品には欠かせない。『ヘレディタリー/継承』の幼い娘の事故死、『ミッドサマー』で崖から飛び降り、頭を割られる老人の儀式的な死は、その描写を含めて観客の脳裏に生々しく焼き付いた。『ボーはおそれている』では、そのようなバイオレントな描写は控えめだが、母親が落下したシャンデリアによって頭を砕かれて亡くなった……という前半のエピソードがセリフで説明されるだけで、イマジネーションを刺激してくる。
 

  

 

『ミッドサマー』(2019年)の撮影風景

ざっとアスター作品の特色を語ってみたが、これだけだと陰鬱な作品ばかりと思われるかもしれない。しかし、アスターはビジュアルを徹底して作り込むことで、これらの物語をアートへと高めてみせる。たとえば、建造物へのこだわり。『ヘレディタリー/継承』での主人公の屋敷や、子供用ツリーハウス、ヒロインが作っているミニチュアハウスなどは、どこか異様な空気が漂っている。『ミッドサマー』での、さわやかな平原に建てられた簡素な宗教施設の佇まいも同様だ。『ボーはおそれている』では、主人公の退廃的なアパートにはじまり、彼を助ける夫婦のクリーンな屋敷、そしてモダンで冷たい空気を漂わせた実家の豪邸へと舞台を変える。それらの内装を含めた造型の作り込みを、絵的な風格に昇華させるのは映画の醍醐味でもある。

アスター作品の作り込みは物語の伏線として機能しているケースも少なくなく、ネット上では多くの分析記事を見ることができる。裏を返せば、それはアスター作品にハマってしまうファンが多いことの証明。新作『ボーはおそれている』は前2作以上にシュールな展開だけに多様な解釈ができるので、それに拍車がかかるかもしれない。恐怖に震えつつも目が離せない、アスターの“沼”に、ぜひ一度沈んでみて欲しい。
 

  

 

 
文=相馬学 text:Manabu Souma
photo by AFLO
世界最古の時計ブランド〈ブランパン〉が大阪に登場!ブランドの世界を体感できる限定ポップアップ“フィフティ ファゾムス コレクション”を開催
SPONSORED
2025.07.10 NEW

世界最古の時計ブランド〈ブランパン〉が大阪に登場!
ブランドの世界を体感できる限定ポップアップ“フィフティ ファゾムス コレクション”を開催

TAGS:   Watches
〈オメガ〉の“プロフェッショナルライン”に注目。復活した“レイルマスター”と 新色の“シーマスター”、心躍るふたつの名作。
SPONSORED
2025.06.27

〈オメガ〉の“プロフェッショナルライン”に注目。
復活した“レイルマスター”と 新色の“シーマスター”、心躍るふたつの名作。

〈オメガ〉を象徴するコレクションとして、1957年に創設された“プロフェッショナルライン”3部作。その中でも“レイルマスター”は、鉄道職員や電気技師といった強い電磁場が発生する場所で作業する人々を耐磁性の高さで支えた名作。そして、“シーマ…

TAGS:   Urban Safari Watches
〈ブランパン〉の名シリーズから新作登場。大人の休日にはシックなダイバーズを。
SPONSORED
2025.06.27

〈ブランパン〉の名シリーズから新作登場。
大人の休日にはシックなダイバーズを。

時計の人気トレンドにヴィンテージスタイルがある。1953年に誕生し、基本デザインを継承する“フィフティ ファゾムス”もそのひとつかもしれない。だがそこに懐古趣味はなく、常に新鮮な魅力を感じさせる。機能美という不変の価値があるからだろう。新…

TAGS:   Urban Safari Watches
リーダーにふさわしい〈グラスヒュッテ・オリジナル〉の一本。端正な機械式時計で仕事にも優雅さを。
SPONSORED
2025.06.27

リーダーにふさわしい〈グラスヒュッテ・オリジナル〉の一本。
端正な機械式時計で仕事にも優雅さを。

クルマやカメラなどドイツの工業製品の高い機能と品質は世界的に知られる。時計も例外ではない。〈グラスヒュッテ・オリジナル〉はその代表格だ。クラシカルなスタイルに決して派手さはない。だが漂う気品は、伝統に培われた揺らがぬ時計作りの哲学と美学を…

TAGS:   Urban Safari Watches
〈パネライ〉の傑作がさらなる進化。タフさと品格を併せ持つエレガントダイバーズ。
SPONSORED
2025.06.27

〈パネライ〉の傑作がさらなる進化。
タフさと品格を併せ持つエレガントダイバーズ。

歴史に裏打ちされた信頼性と機能。そして、存在感を放ちながら、品を保つデザイン性。そのすべてを兼ね備えた〈パネライ〉の“ルミノール マリーナ”は、知性と余裕をまとう大人にふさわしい腕時計だ。その傑作コレクションが今年、大胆な進化を遂げたとい…

TAGS:   Urban Safari Watches
〈エドックス〉の人気ダイバーズ時計が日本限定で登場!“とろやわ”ストラップで夏のビーチを満喫!
SPONSORED
2025.06.25

〈エドックス〉の人気ダイバーズ時計が日本限定で登場!
“とろやわ”ストラップで夏のビーチを満喫!

煌めく太陽に、白い砂浜、青い海。夏のビーチ遊びの季節がやってくる! ラフなビーチコーデの手元だって、やっぱり快適さを求めておきたい。そんな海遊びにはラバーストラップのダイバーズ時計が最適だ。そこでプッシュしておきたいのが〈エドックス〉の日…

TAGS:   Fashion Watches
〈ザ・ブセナテラス〉で過ごす憩いの時間!沖縄バカンスは贅沢でリラクシングなステイを!
SPONSORED
2025.06.25

〈ザ・ブセナテラス〉で過ごす憩いの時間!
沖縄バカンスは贅沢でリラクシングなステイを!

〈ザ・ブセナテラス〉は、日々の疲れを癒し、日常では味わえない贅沢な時間を過ごせる。充実したホテルの設備・サービス、海に面した立地を生かしたマリンアクティビティプログラム。ここは1泊2日くらいでは気づけない、魅力を秘めている。パートナーとと…

TAGS:   Stay&Travel
これでライフスタイルが見違える!新鮮アイテムでいつもの夏をアップデイト!
SPONSORED
2025.06.25

これでライフスタイルが見違える!
新鮮アイテムでいつもの夏をアップデイト!

いよいよ待ちに待った夏。バカンスを楽しみにしている人も多いだろう。たとえ予定がなくても、気温の上昇とともに気分をぐっと上げていきたい。そんなときに必要なのが、ライフスタイルをアップデイトするためのアイテムだ。これさえあれば、いつもとはひと…

サンダルは履き心地と見た目のよさで選ぶ!夏に大活躍するサンダルは、〈ロンハーマン〉別注が優秀!
SPONSORED
2025.06.23

サンダルは履き心地と見た目のよさで選ぶ!
夏に大活躍するサンダルは、〈ロンハーマン〉別注が優秀!

夏がやってくると気分も開放的になり、休日はお出かけモードに。街にショッピングに行くのもいいし、たまにはアウトドアで自然の中に身を置くのも気持ちよさそうだ。もちろん、ご近所を散歩する程度で、家でゆっくり過ごすというのも幸せ。で、そのどんなシ…

TAGS:   Fashion
〈ジラール・ペルゴ〉夏の限定モデルが登場!サマーバカンスの相棒は“懐色”の復刻ダイバーズで!
SPONSORED
2025.06.20

〈ジラール・ペルゴ〉夏の限定モデルが登場!
サマーバカンスの相棒は“懐色”の復刻ダイバーズで!

マニュファクチュール=自社一貫生産体制を2世紀以上も貫き続けるスイス、ラ・ショー・ド・フォンの名門時計ブランド〈ジラール・ペルゴ〉。そのコレクションはどれもクラシカルかつドレッシーで気品に満ちたもの。そんなイメージを、文字どおりあざやかに…

TAGS:   Fashion Watches

NEWS ニュース

More

loading

ページトップへ