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CULTURE カルチャー

2024.01.03

【新春インタビュー】1月5日公開『エクスペンダブルズ ニューブラッド』
スコット・ウォー監督「今回がシリーズ最終章となるのは間違いありません」



人気のアクションシリーズが新たにアップデートされる。その瞬間を目撃するのは、映画ファンの喜びだが、『エクスペンダブルズ ニューブラッド』は、まさにそんな一作。シルヴェスター・スタローンを中心にアクション映画のレジェンドたちが集結した『エクスペンダブルズ』は過去3本が製作され、しばらくブランクがあったものの、9年ぶりに作られたこの4作目で見事に復活。スタローンも登場しつつ、新たな主役の座はジェイソン・ステイサムへとバトンが渡された。
 

  

 

スコット・ウォー監督/1970年生まれ。スタントマンとして活躍したのち、2012年『ネイビー・シールズ』で長編映画の監督デビュー。そのほか手がけた作品に『ニード・フォー・スピード』(2014年)、『プロジェクトX -トラクション』(2023年)などがある。

ステイサムが演じるクリスマスとスタローンが演じるバーニー。傭兵軍団「エクスペンダブルズ」の2人が新たなメンバーも加えて、テロリストが所有する核兵器を奪還しようとする物語。トニー・ジャー、イコ・ウワイスらアジアのアクションスターも大活躍するこの新作で、元スタントマンであり、『ネイビー・シールズ』や『ニード・フォオー・スピード』で監督を務めたスコット・ウォーがメガホンをとった。スタローンとの関係や撮影の舞台裏などを彼が語ってくれた。

ーーあなたが「エクスペンダブルズ」シリーズに関わったのは今回が初めてですが、どのタイミングで監督を任されたのですか?

じつは、けっこうギリギリのタイミングです。製作が始まる4週間前にオファーを受けました。すでに決まっていた監督が創作上の意見の食い違いで降板し、私に連絡があったのです。『エクスペンダブルズ』の世界に関しては、何もかも詳しく知っているレベルではなく、一般的に親しんでいた程度でした。すでに完成された脚本を読んで、シリーズのトーンが維持されつつ、新たな“ひねり”がありましたし、何よりシルヴェスター・スタローンと仕事ができることに興奮しました。叶えたい夢のひとつが達成できたわけです。

ーースタローンがあなたを監督に推薦したのでしょうか?

そうなんです。スライ(スタローン)は、私の2012年の『ネイビー・シールズ』を好きになってくれ、それ以来、何か一緒に映画を作れないか模索してきました。私の前作『プロジェクトX -トラクション』ではジャッキー・チェンの相手にスライを想定していたのですが、スケジュールが合わず、その役をジョン・シナに任せた経緯があります。ですから“今度こそ”という願望で、私は監督候補リストのトップに入っていたようです。

ーーこの新作は、ひとつ前の第3作に比べ、ハードなシーンが増えた気がします。

『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』はPG-13(13歳未満は保護者の注意の下で鑑賞可能)で、バイオレンス描写もソフトな方向に進んでいました。私たちは1作目の『エクスペンダブルズ』(R指定/17歳未満は保護者同伴)の世界に戻そうとしました(結果的にR-15+指定/15歳未満は鑑賞禁止となった)。銃撃戦や大爆発という大がかりなアクションを観せながら、流血などバイオレンス描写を抑えることは逆に大変です。制限を外してもらったおかげで、かなり自由に演出することができました。
 

  

 


ーースタローンは『エクスペンダブルズ』の1作目など、彼自身の監督作も数多いです。あなたに現場で口出ししたりするのでしょうか?

スライと私は完璧な信頼関係があるので、撮影現場でも「ここは、どうすればいい?」など気軽に相談することができ、彼も本心から適切な回答を出してくれます。もちろんスライの監督としての力量を心から尊敬していますが、私もスタントマン出身という自負があり、私たち2人のコラボレーションで現場がうまく進んだのではないでしょうか。

ーー今回の実質的な主演はジェイソン・ステイサムです。彼と同様に、1作目から出演しているのがドルフ・ラングレン。彼らも『エクスペンダブルズ』の世界を知り尽くしています。

もちろん彼らのような大スターは、撮影現場でも大きな決定権を持っています。しかし尊敬の念を忘れなければ、私の声にもしっかり耳を傾けてくれます。そうしたやりとりで、彼らも私を信頼してくれるようになるのです。これは「相手に敬意を払うまで、自分もその敬意を得られない」という私の父からの教えで、それを守り続けているわけです。

ーードルフ・ラングレンには、ちょっと自虐的なシーンもありますが、喜んで演じてくれたわけですね。

ドルフのカツラに関するネタのことですね。たしかにあそこは映画の中でも笑える部分で、もちろんドルフは率先して演じてくれました。あのシーンはスタローンもセリフの変更を提案したりして、そのあたりは“お任せ”です。やはり彼らはシリーズ3作品すべてに出演した俳優ですから、監督の私も「カツラは、ちょっと……」と言えない立場でした(笑)。
 

  

 


ーーそして本作には新たに参加したキャストもいますが、その中でタイのアクションスター、トニー・ジャーが素晴らしい動きを見せてくれます。

信じられないレベルで、やるべき動きをこなしてくれました。私は前作でジャッキー・チェンのスタントチームと一緒に仕事をしましたが、その経験をトニーのレベルに引き上げて演出したのです。この作品ではトニーとジェイソン(・ステイサム)が並んで戦うシーンが最高の見せ場という気がしますね。

ーー船上でのバイクのアクションなど、どこまで実写で撮ったのかも気になります。

オートバイやクルマのアクションは、ほぼすべて実写だと思ってください。船の上でバイクがジャンプするシーンなど、スタントマンが実際に行っています。このあたりは私の好きな領域ですから。

ーーこれは聞きづらい質問ですが、ブルース・ウィリスへの思いを聞かせてください。彼は『エクスペンダブルズ』シリーズに出演したこともあるので……。

私はこれまでの人生で、スタントマンや監督として多くの映画に関わってきました。しかしブルースとは一度も一緒に仕事をしたことがありません。接点がなかったのが、むしろ不思議です。本作では、監督を依頼された時点で脚本に彼のキャラクターは登場していませんでした。ですから私にも“彼に出てもらう”という選選択肢はありませんでした。現在の彼について、ただただ悲しい気持ちです。

ーー「エクスペンダブルズ」の今後も含め、あなたのこれからのキャリアについて、どんな展望がありますか?

本作は英語のタイトルが『Expend4bles』と『4』の文字が入っていますが、fourの頭文字のfには、最後=finalの意味が込められています。つまり今回がシリーズ最終章となるのは間違いありません。私は監督として、あと10〜15本くらい映画を作りたいと思っていますが、アクションの要素は死ぬまで極めていきたいですね。私の父は初代スパイダーマン俳優(ニコラス・ハモンド)のスタントダブルを務めた人で、その血を受け継いでいるわけですから。

ーーでは最後に、日本の観客へメッセージをお願いします。

この映画のバトルの“振付”は最高に楽しいです。『エクスペンダブルズ』のメンバーの観納めとして、ぜひ映画館の大スクリーンで体験してほしい。繰り返しますが、今回が最後のチャンスなんですから!
※文中のPG-13、R指定などはアメリカ公開時のレイティング。

『エクスペンダブルズ ニューブラッド』1月5日公開
監督/スコット・ウォー 脚本/カート・ウィマー、タッド・ダガーハート、マックス・アダムス 出演/シルベスター・スタローン、ジェイソン・ステイサム、ミーガン・フォックス、ドルフ・ラングレン、トニー・ジャー、イコ・ウワイス、アンディ・ガルシア 配給/松竹、ポニーキャニオン
2023年製作/アメリカ/上映時間103分
 

  

 


 

  

 

 
取材・文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito
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