【傑作選】絶対に泣ける感動映画10選②
Safari Onlineで紹介してきた感動映画を10作品ピックアップしてご紹介。今回はその第2弾。
『こわれゆく女』
製作年/1975年 監督・脚本/ジョン・カサヴェテス 出演/ジーナ・ローランズ、ピーター・フォーク
夫婦の愛と葛藤の物語
工事現場で監督の仕事をしているニックと妻メイベルは3人の子どもたちを育てながら、はた目には幸せに暮らしている。しかし、メイベルは夫とのすれ違いから、情緒不安定に陥っていた。やがて常軌を逸する行動に走った彼女は精神病院に入院することに。数カ月後、メイベルはおとなしくなって帰宅するが、ニックの無神経な言動が引き金となり、彼女の自制心は壊れてしまう……。
ニューヨーク・インディーズの伝説ジョン・カサヴェテスが愛妻ジーナ・ローランズを主演に起用して放った、愛と葛藤の物語。愛し合っていても埋められない、夫婦の心の溝を浮き彫りにしながら、人妻のこわれゆく心をリアルに描写。一方で、そんな母が錯乱状態に陥ろうとも寄り添おうとする子供たちの一途さに心を揺さぶられる。大熱演を見せたローランズはアカデミー主演女優賞にノミネート。『刑事コロンボ』でおなじみのピーター・フォークによる、不器用な夫の好演も光る。
『ガープの世界』
製作年/1982年 原作/ジョン・アービング 製作・監督/ジョージ・ロイ・ヒル 出演/ロビン・ウィリアムズ、グレン・クローズ、グレン・クローズ、ヒューム・クローニン
数奇な人生がユーモアとともに描かれる!
夫はいらないが子どもはほしいという、看護師ジェニーのもとに生まれた男の子ガープ。女手ひとつで育てられた空想好きの彼は、小説の執筆とレスリング、セックスに興味を抱きながら成長。作家としては芽が出ないものの、恋人と結婚して幸福な家庭を築いた。しかし、ガープと妻のそれぞれの浮気がこじれて悲劇が起こる。一方、ジェニーは息子とは裏腹にベストセラー本を出したことで、フェミニストの闘士としてカリスマ視されるようになり……。
ジョン・アーヴィングのベストセラー小説を映画化。瀕死の兵士と無理矢理セックスして子どもを授かった、そんな母の愛を一身に受けて成長する主人公ガープ。性欲とフェミニズムの狭間で、ピンボールのように揺さぶられる彼の数奇な人生がユーモアとともに描かれている。製作から40年を経た映画だが、LGBTに関する議論が活発な今見直すと、新鮮に映るのでは? 当時映画界では芽が出ていなかったロビン・ウィリアムズの出世作でもある。
『さよなら子供たち』
製作年/1987年 製作・監督/ルイ・マル 出演/ガスパール・マネッス、ラファエル・フェジット
占領下の子供たちの友情に涙する
1944年、ナチス占領下のフランス。親元を離れ、カトリック系の寄宿学校に疎開している12歳のジュリアンは、転校生ジャンと知り合う。クラスに打ち解けようとしないジャンは、実は神父によって匿われたユダヤ人だった。その事実を知っても気にすることなく、ジュリアンは彼と親しくなり、彼らの友情は日増しに強くなっていく。だが、幸福な日々は長くは続かず、学校がユダヤ人を匿っていることを何者かが密告し……。
『死刑台のエレベーター』などで知られる名匠ルイ・マルが、自身の体験に発想を得て生み出した秀作。人種偏見とは無縁の子供たちの友情や、神父と生徒たちの信頼など、尊い人間関係を真摯に見つめる。一方で、それらを無情に引き裂いてしまう、戦争という現実。そんな悲劇が後の人生にあたえる影響をも視野に入れた、マル監督の深みのある演出が光る。子役たちの好演も忘れ難い。
『レインマン』
製作年/1988年 原作/バリー・モロー 監督/バリー・レビンソン 出演/トム・クルーズ、ダスティン・ホフマン、ジェラルド・R・モーレン
会ったことのない兄弟が心を通わせていく!
血のつながった兄弟となれば、どこかしら似ている部分がある。しかし映画で、兄弟を主人公にした場合、性格も含めて何から何まで“真逆”ということが多いかも。その典型的な例を挙げるなら『レインマン』ではないか。高級外車のディーラーで、見るからにモテ男のチャーリーに、父の訃報が届く。故郷に戻ったチャーリーは、300万ドルという多額の遺産が、会ったこともない兄のレイモンドに渡ると知って愕然。自閉症で施設に入っているレイモンドを連れ出したチャーリーは、LAに戻り、父の遺産を手にしようと画策する。
一度も会ったことのない兄弟ということで、血は繋がっていても育った環境が別だと、こんなに何もかも違うのか……と、本作は実感させる。最初はコミュニケーションも不可能だった2人が、旅を通して心を通わせる展開は、予想どおりとはいえ、絶妙なエピソードの積み重ねでシンプルに感動。トム・クルーズは当時、『トップガン』などでハリウッドのトップスターに立ったばかり。その勢いと、がむしゃらなムードがチャーリー役にぴたりとハマったうえ、本作は彼の新たな才能を開花させた。一方のダスティン・ホフマンは、自閉症のレイモンド役で、過剰さに陥らないギリギリラインで演技巧者ぶりを披露。ホフマンの主演男優賞のほか、アカデミー賞では作品賞など4冠に輝いた。
『ニュー・シネマ・パラダイス』
製作年/1989年 監督・脚本/ジュゼッペ・トルナトーレ 出演/フィリップ・ノワレ、ジャック・ぺラン、アントネラ・アッティーリ
泣ける映画の代表作!
映画ファンに“泣ける作品ランキング”を調査したら、確実にトップ3には入ると思われるのが、この作品。未見の人には教えられない(でも、なんとなく予想できる)号泣必至のラストだけでなく、要所にグッとくるシーンを用意している。それらが、映画を観る喜びと強烈につながっているから、何度も涙腺が刺激されるのだ。満席の映画館で人々が一緒に笑い、泣き、拍手するという光景は、新型コロナウイルスで“密を避ける”ルールとなった時代で観ると、本当に愛おしく感じられ、目が潤んでしまうはず。
イタリアのシチリア島の小さな村で、“トト”と呼ばれるサルヴァトーレ少年が、映画を大好きになる。村の映画館で映写技師として働き、映画監督へと成長した彼が、過去を回想する物語。ローマにいるトトが、母から恩人の死を知らされ、故郷の村へ帰ってくる。少年時代のトトを演じたサルヴァトーレ・カシオの、あまりに無邪気な表情に感動しない人はいないだろう。そしてエンニオ・モリコーネによる音楽は、映画史でも最高の仕上がり。ドラマや登場人物の心情との重なり具合が絶妙すぎて、メロディに反応して目頭が熱くなる、“パブロフの犬”的な作用を起こす!
『マイ・ライフ』
製作年/1993年 製作・監督・脚本/ブルース・ジョエル・ルービン 出演/マイケル・キートン、ニコール・キッドマン
生死を超える人と人の絆の強さに感動!
仕事で成功を収め、愛する妻ゲイルと幸福に暮らしている30代の男ボブに降りかかった悲劇――末期ガンの宣告。ショックを受けながらも、彼はゲイルのお腹にいる、まだ見ぬ息子に向けたビデオレターを撮りはじめる。そこには人生の教訓はもちろん、直接は教えてやれないであろうヒゲの剃り方も。しかし、精神的にも不安定になっていくボブは、死にたくないという気持ちをますます強くし、精神治療法に最後の望みを託す……。
『ゴースト/ニューヨークの幻』の脚本家ブルース・ジョエル・ルービンが監督を務めた人間ドラマ。自分がもしも余命宣告を受けたら、どうするか? 見る者は、まずそれを考えるに違いない。主人公が選択したのは、愛する家族に何かを残すこと。そこに生死を超える人と人の絆の強さが浮かび上がる。お涙頂戴に走ることなく、人間性を重視して物語を紡いだルービンの演出はお見事。マイケル・キートン&ニコール・キッドマンの演技派競演にも注目。
『フィラデルフィア』
製作年/1993年 製作・監督/ジョナサン・デミ 脚本/ロン・ナイスワーナー 出演/トム・ハンクス、デンゼル・ワシントン
考え方も境遇も違う2人の絆にグッとくる!
米フィラデルフィアの法律事務所で働くアンドリューは、ゲイでエイズ患者であることを隠している。そんなある日、仕事のミスを盾に取り、事務所は突然、彼を解雇。その実質的な理由が病気にあることを知ったアンドリューは法廷で争おうとするが、偏見から彼の弁護を引き受ける者はいなかった。同性愛嫌いの黒人弁護士ジョーもそのひとりだったが、やがてアンドリューに共鳴して弁護を務める。そして全米注視の裁判が幕を開けた……。
『羊たちの沈黙』のジョナサン・デミ監督が、トム・ハンクスとデンゼル・ワシントンを迎えて手がけた必見作。同性愛やエイズ患者に対する世間の偏見を告発しながら、ふたりの男の法廷での共闘を描く。考え方も境遇も異なるふたりの間に芽生える友情は、戦いが厳しくなるほどに強くなる。そんな彼らの心の結びつきにグッとくる力作。難病を体現したハンクスは本作でアカデミー主演男優賞を受賞。
『イングリッシュ・ペイシェント』
製作年/1996年 原作/マイケル・オンダーチェ 監督・脚本/アンソニー・ミンゲラ 出演/レイフ・ファインズ、ジュリエット・ビノシュ、クリスティン・スコット・トーマス、ウィレム・デフォー
許されぬ恋が男の運命を変える!
1944年、イタリアの野戦病院に全身大火傷を負ったパイロットが運び込まれる。身元もわからず“英国人の患者”と名づけられた、この男の看護に、戦争で恋人や友人を亡くした女性ハナが当たった。記憶を少しずつ取り戻した“英国人の患者”アルマシーが語る過去。英国地理学協会の依頼で、アフリカのサハラ砂漠の地図作りに当たっていた彼は偶然、出会った人妻と許されぬ恋に落ちる。それが彼の運命を変えるとも知らずに……。
アカデミー賞で作品賞など9部門を制した、ミステリアスなドラマ。こちらも主人公の過去を解き明かすことで物語が進む。砂漠での運命的な出会い、熱愛、不倫関係の発覚、そして悲劇へ。貴族の出であるアルマシーの運命の物語はドラマチックで、なおかつ反戦のメッセージも込められており、胸を打つ。彼の話を聞き、影響を受けていく看護師ハナにふんしたジュリエット・ビノシュは、みごとにアカデミー助演女優賞を受賞。
『ビューティフルマインド』
製作年/2001年 原作/シルビア・ネイサー 監督/ロン・ハワード 脚本/アキバ・ゴールズマン 出演/ラッセル・クロウ、ジェニファー・コネリー、エド・ハリス
夫婦の絆に涙する!
すべての真理を見つけるという、理想を追い続ける数学者の卵ジョン。名門大学院を卒業した彼は米国防省の暗号解読員として活躍するが、敵国の刺客の影に、つねに怯えていた。そんな彼の救いとなったのが、かつての教え子アリシアの存在。ジョンの不安定な精神状態は、やがて統合失調症と診断され、その病状は日増しに悪化していった。彼の妻となったアリシアは辛抱強く彼を救おうとする。
ノーベル賞を受賞した数学者ジョン・ナッシュの伝記に基づくヒューマンドラマ。周囲には変わり者と見られるだけで、じつは精神を深く病んでいた彼が、妻の献身的なサポートによって快方に向かい、絆の大切さを学んでいく。妻アリシアとは実際には離婚していた時期もあり、映画が史実と異なるとの批判も受けたが、離婚しても彼を見捨てなかったアリシアの献身は事実に基づく。主演を務めたラッセル・クロウはもちろん、アリシア役でアカデミー賞を受賞したジェニファー・コネリーの熱演にも注目。
『グラン・トリノ』
製作年/2008年 原案・脚本/ニック・シェンク 製作・監督・出演/クリント・イーストウッド 出演/ビー・バン、アーニー・ハー
頑固者が次第に心を許すさまにグッとくる!
大げさな感動は好まない。静かにしみわたる後味こそ、映画の魅力だ。そう考える人にオススメしたいのが、クリント・イーストウッド監督作。大スケールの事件を描いたとしても、その後味はどこか繊細で穏やか。ゆえに、しみじみと浸っていたくなる。こうしたイーストウッドの境地を実感できる最高の1本を選ぶとしたら『グラン・トリノ』だろう。
長年勤めたフォードの工場を辞め、妻にも先立たれたウォルト。愛犬と、愛車のグラン・トリノだけが心の支えで、周囲から見れば偏屈な男だ。そんな彼が、隣に住むアジア系のモン族の少年を助けたことで、意に反してその家族との交流がはじまる。
自分の意見を断固として曲げない主人公ウォルトは、絵に描いたような頑固老人。人種差別主義者であり、隣にアジア系が住んでいることも許せない彼が、その考えを変えていくドラマが、劇的ではなくじっくり描かれていく。その変化が、じつに心地よい。
カルチャーギャップ、年代ギャップによるユーモアも絶妙だし、何より、イーストウッド本人が演じるウォルトの感情の流れがナチュラル。ライフルを手にする姿は、彼の当たり役『ダーティハリー』が重なり、映画ファンの胸も熱くさせる。結末はかなりハードだが、息子カイル・イーストウッドの音楽とともにグラン・トリノが走る映像に、涙がやさしく頬を伝う。
【まとめ】絶対に泣ける感動映画45本!
https://safarilounge.jp/online/culture/detail.php?id=7863
●noteでも映画情報を配信しています。フォローよろしくお願いいたします!
https://note.com/safarionline