【傑作選】クリスチャン・ベール出演映画9選
『Safari Online』で配信してきたクリスチャン・ベールの出演作をまとめてご紹介!
『アメリカン・サイコ』
製作年/2001年 監督/メアリー・ハロン 出演/クリスチャン・ベール、ウィレム・デフォー、ジャレッド・レト
マウンティングしてくる奴に注意を!
主人公パトリックは裕福な家庭に生まれ育ち、エリート街道を歩んで投資会社の副社長に上りつめた27歳の青年。ナルシスティックなまでに肉体をケアし、完璧でないことは許せないタチだ。
そんな彼の前に、より完璧に近い青年が現われたことから運命の歯車が狂いだす。嫉妬に駆られ、イラ立ちに突き動かされて、道で偶然出会ったホームレスを撲殺する。以来、殺人衝動は止まることを知らず、彼の周囲には次々と死体が転がっていく。
全米でベストセラーとなった小説を、演技派クリスチャン・ベールの主演で映像化。主人公パトリックのアイデンティティは、自分が誰よりも優れていると思うことにあり、ステイタスを追求し続け、他人を見下しては悦に入っている。
それだけなら、ただのイヤなヤツだが、優生思想も手伝って殺人の欲求が加速。他人の命を奪ってでも、優位に立っていたい。ある意味、究極のマウンティングといえるサイコパス。周囲には絶対いてほしくないタイプだ。
『マシニスト』
製作年/2004年 監督/ブラッド・アンダーソン 脚本/スコット・コーサー 出演/クリスチャン・ベール、ジェニファー・ジェイソン・リー
不眠と苦境のピリピリ感が観る者にも伝わる!
工場で働く男トレバーは不眠症に悩まされ、1年にわたって眠ることのない生活をおくっていた。食欲もなく体はやせ細り、なじみの娼婦にも心配される始末。アイバンと名乗る新人の溶接工と出会った日、彼は不注意から職場で事故を起こしてしまう。“アイバンに気を取られた”と弁明するも、そんな人物はおらず、トレバーは工場で孤立を深めていく。しかし再びアイバンは姿を現わし、トレバーは真実を追求しようとするが……。
『アサイラム 監禁病棟と顔のない患者たち』など、サスペンスの分野で才気を発揮しているブラッド・アンダーソン監督の代表作。主人公トレバーが見ているものは現実か、幻想か!? 不眠症と苦境ゆえにピリピリとした感覚を増していく、彼の精神状態の描写がスリリングで、衝撃的な事実を明かす結末まで目が離せない。体重を30キロ減量してガリガリの体型で役に挑んだクリスチャン・ベールの熱演も話題となった。
『プレステージ』
製作年/2006年 監督・脚本/クリストファー・ノーラン 出演/ヒュー・ジャックマン、クリスチャン・ベール、スカーレット・ヨハンソン
突拍子もないトリックに呆然!
主人公2人はマジシャン。トリックを使うプロである。自慢のマジックの“トリック”はもちろん、映画全体のドラマにも“トリック”が潜んでいる。その意味では今回のテーマに最もふさわしい一作かも! 主演の2人がヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベールというのも、今作の魅力。育ちが良く、実直型のアンジャーがヒューで、奇抜な発想の天才型のボーデンがクリスチャンなのも、これまた適役だ。
アンジャーの妻が脱出マジックで命を落とし、その原因がボーデンであったことから、両者の確執と、マジシャンとしてのライバル関係は激化。
しかし、アンジャーの瞬間移動マジックを調べていたボーデンの目の前で、なんとアンジャーは水槽で溺死。ボーデンが殺人容疑で逮捕されてしまう…。
アンジャーの瞬間移動には、電気の技術を使って“自分を複製する”という驚きのテクニックが使われていた。さらにボーデンの死刑執行の日に、アンジャーが何者かに銃撃され、その相手がボーデン……と思ったら、双子の弟だった。ボーデンは双子でマジックをやっていたという、突拍子もないトリックが判明。
『ダークナイト』
製作年/2008年 出演/クリスチャン・ベール、ヒース・レジャー、マギー・ギレンホール
理論派にしか生み出せない傑作
クリストファー・ノーラン監督の作家性を表す言葉として“理論派”であることが挙げられる。物語のエモーショナルな要素も理論で解析するような作風は、ときに“理屈っぽい”と感じさせることもある。でも、“理論派”でしか撮れない傑作を1本挙げるなら、『ダークナイト』を置いてほかにない。
『ダークナイト』はノーランが監督したバットマン映画の2作めで、原作コミックにおけるバットマン最大の宿敵ジョーカーを登場させている。かつてはジャック・ニコルソンも演じたジョーカー役を、ヒース・レジャーがまったく新しいアプローチで怪演し、アカデミー助演男優賞に輝いた。
ノーランとレジャーが生み出したジョーカー像とは、カネや権力が目的ではなく、ただただ世の中をひっかきまわし、人間から醜い本質を引き出したいという超迷惑な“究極の愉快犯”。しかし犯罪が憎いという一心で、たった1人で悪党をボコって回るバットマンも、悪意と善意の違いだけで、やはり“愉快犯”とはいえないのか?
ジョーカーは、バットマンという存在が本質的に持っている矛盾をつまびらかにするカードの裏面である――という明確なコンセプトが『ダークナイト』の物語を哲学的かつ刺激的なものにしている。まさに“理論派”にしか構築できないノーラン節の真骨頂がこの映画には宿っているのだ。
『パブリック・エネミーズ』
製作年/2009年 製作・監督・脚本/マイケル・マン 出演/ジョニー・デップ、クリスチャン・ベール
大人なら、仲間を思いやれ!
大恐慌直後の1930年代。あざやかな手口で銀行強盗をし続け、社会に不満を募らせる大衆の人気を得た人物がいた。それが、実在の犯罪者ジョン・デリンジャーだ。仲間を裏切らず、女性に優しい。そして、“利益を独占する銀行を襲っても、弱者の市民からは絶対に強奪しない”、そんなポリシーを持っていた。その主人公をチャーミングに演じたのが、ジョニー・デップ。マイケル・マンが描いた犯罪者の中でも、このキャラは妙に人間味がある。
特に男として見習いたいのが、仲間を思いやる気持ちだ。インディアナ州刑務所に服役している仲間を相棒レッドとともに脱獄させたり、警察の監視下にある恋人ビリーを命がけで迎えに行ったり。一般的に犯罪者といえば、仲間を裏切ってでも生き延びるイメージが強い。しかし、このデリンジャーは自分よりも仲間を優先するのだ。なぜならそれがポリシーだから。自分の中の“誓い”や“ポリシー”を大切にする点は、マイケル・マン映画に共通する醍醐味だろう。
ちなみにデリンジャーを追う、FBI捜査官のパーヴィスはあえて冷血な仕事人として描かれる。こうやって、善が悪に、悪が善に見えるというパラドックス、つまり善悪のモラルを崩していく点もマイケル・マン監督の真骨頂だ。
『ザ・ファイター』
製作年/2011年 監督/デビッド・O・ラッセル 出演/マーク・ウォールバーグ、クリスチャン・ベール、エイミー・アダムス、メリッサ・レオ
ボクシングを通じた兄弟の絆に泣く!
プロデビュー後、14連勝など華々しい記録を打ち立てた、実在のボクサー、ミッキー・ウォード。一度は引退を考えた彼に、復活のきっかけを与えたのが、兄の存在だった。それは、同じく実力を認められたボクサーながら、麻薬に溺れ、逮捕もされた異父兄のディッキー・エクランド。この『ザ・ファイター』は、複雑な兄弟関係にある彼らが、苦闘を繰り返しながら頂点に立とうとする姿を、ド迫力のボクシングシーンとともに描いていく。強烈でセンセーショナルながら、直球の感動も届ける渾身の“兄弟映画”だ。
闘志ムキだしのスタイルが持ち味のミッキー。ボクシングへの純粋な情熱も劇的に描かれるのだが、それ以上に『ザ・ファイター』が切実なのは、家族ドラマ。彼のファイトマネーを当てにする強烈なキャラの母親、そして姉妹たち。ジャンキーであるディッキーをかばったために、ミッキーが見舞われるアクシデントなど、問題だらけの家族関係に胸を締めつけられる。ディッキーを演じるため15kgも減量したクリスチャン・ベールと、“鬼母”役のメリッサ・レオが、アカデミー賞で助演男優賞&助演女優賞のW受賞を達成。ボクシングと兄弟の絆、その両方でカタルシスがもたらされる骨太な一作。
『ダークナイト ライジング』
製作/2012年 出演/クリスチャン・ベール、マイケル・ケイン、ゲイリー・オールドマン
バットマンの印象をガラリと変えた!
『バットマン ビギンズ』に始まる3部作をまとめて、クリストファー・ノーランの代表作と言っていいだろう。これまでのティム・バートン作品などから、アメコミヒーロー、バットマンのイメージを一新。とことんダークでシリアスなヒーロー像を作り上げ、ヒース・レジャーのジョーカー、トム・ハーディのベインなど強烈な悪役も送り出した『ダークナイト』シリーズ。そのフィナーレを目にする意味でも必見の一作だ。
ジョーカーとの死闘を経て、絶望にさいなまれていたバットマンだが、恐るべきテロリスト、ベインの出現でゴッサム・シティが窮地に陥り、再び戦いに挑むことを決意する。空中戦やカーチェイス、アメリカンフットボールのスタジアムの崩壊など、アクション場面の演出・迫力はシリーズでも最高レベル。
前作『ダークナイト』では部分的だったIMAXカメラを多くの場面で使用し、アン・ハサウェイの怪しくセクシーなキャットウーマンも魅力的だ。賛否両論にわかれる結末も、ある意味でノーラン作品らしい!?
『バイス』
製作年/2018年 製作・監督/アダム・マッケイ 出演/クリスチャン・ベール、エイミー・アダムス、スティーブ・カレル
有能な側近が世界を安定させる!?
自国の先行きを決めるだけでなく、世界の運命をも左右するほどの権力の持ち主といえば、アメリカ大統領。ただし歴代の大統領を眺めると、「この人で大丈夫なのか?」という顔を見受けられるのも事実。
なかでも2001年〜2009年の2期を務めたジョージ・W・ブッシュは"残念"という評判が多い。そんなブッシュでも大統領職を続けられたカラクリのひとつは、副大統領(バイス・プレジデント)のディック・チェイニーの存在。彼は、世界を密かに牛耳る、まさに"影の大統領"だったというわけ!
この映画はチェイニーの若き日から、副大統領時代、さらにその後まで続くが、ブッシュのキャラクターが必要以上に"軽く"描かれたりして、皮肉やユーモアもたっぷり。
そんなブッシュを、調教するかのごとく、うまく動かしていくチェイニーの手綱さばきが鮮やか。人の前に立つ最高権力者より、有能な側近がいた方が、国および世界が安泰……というのは、現代社会の揺るぎない真実かも!? チェイニー役のクリスチャン・ベールを中心に、ブッシュのサム・ロックウェルら、揃いも揃った芸達者スターたちの演技は必見だ。
『フォードvsフェラーリ』
製作年/2019年 製作総指揮/マイケル・マン 製作・監督/ジェームズ・マンゴールド 出演/マット・デイモン、クリスチャン・ベール
臨場感ある迫真のレースシーンにボルテージMAX!
主人公は2人。元レーサーで、心臓の病気のためにカーデザイナーとなったキャロル・シェルビー(その名は“シェルビー・マスタング”などで有名)と、イギリス出身の最速を誇るレーサー、ケン・マイルズ。ともに天才型だが、性格はまったく逆。
論理的で冷静なシェルビーに対し、直情型で、信念を絶対に曲げないマイルズ。観ているこちらも、どちらかに感情移入するのは確実だろう。ときには子供のようにケンカをしながらも、同じ目標を見据えて友情を育んでいく2人。彼らの姿に、心が揺さぶられない人はいないはずだ。
1960年代のモータースポーツ界が再現される本作は、工場からサーキットのシーンまで、当時のレースカーが大量に登場。クラシカルだが、今見てもかっこいいデザインの数々に目を奪われっぱなし。〈フォード〉と〈フェラーリ〉の間で進む買収劇や、重役と現場の対立など、“企業ドラマ”としての見応えもある。
もちろんレースシーンのスピード感、臨場感も満点。全編、抜かりのない仕上がりにも感動。余計な小細工や、妙な新しさを避けて、どこか古きよきハリウッドの風格を保った“男の映画”の魅力に浸ってほしい!