Safari Onlineの人気記事『【まとめ】絶対に泣ける感動映画45本!』から、年始に観たい感動映画をよりぬき! まだまだ感動映画を知りたいという人は、リンクからアクセスしてみて!
『グリーンマイル』
製作年/1999年 監督/フランク・ダラボン 出演/トム・ハンクス、マイケル・クラーク・ダンカン
スティーヴン・キングの名作を見事に映像化した奇跡の3時間
『スタンド・バイ・ミー』『ショーシャンクの空に』と共に“泣けるキング映画”として愛される名作。1930年代の刑務所を舞台に、死刑囚と看守との間で巻き起こる忘れ難い日々を、長尺の中でゆったりと描き出した物語だ。”グリーマイル”とは緑色の通路のこと。囚人たちはそこを通って電気椅子へ向かう。いや、死刑囚だけではない。言うなれば看守も、家族や友人、その他のあらゆる人々も、いつの日か人生を歩み終えて死を迎える意味では、みんな似た存在なのかもしれないーーーそんなキングの深遠な問いかけが聞こえてきそうだ。
トム・ハンクス演じる看守は、”壊れたものを直す”という力を持った死刑囚の無罪を確信しながら、彼を救うことができない。それはまるで人間が抱える重い十字架のようでもあり、観るたびに「神よ、私にはこのグリーンマイルがあまりに長く思えるのです」の一言が様々な響きを伴って染み渡ってくる。そして胸に浮かぶのはマイケル・クラーク・ダンカンの無垢なる笑顔。彼が亡くなって今年でちょうど10年が経つ。
『イングリッシュ・ペイシェント』
製作年/1996年 原作/マイケル・オンダーチェ 監督・脚本/アンソニー・ミンゲラ 出演/レイフ・ファインズ、ジュリエット・ビノシュ、クリスティン・スコット・トーマス、ウィレム・デフォー
許されぬ恋が男の運命を変える!
1944年、イタリアの野戦病院に全身大火傷を負ったパイロットが運び込まれる。身元もわからず“英国人の患者”と名づけられた、この男の看護に、戦争で恋人や友人を亡くした女性ハナが当たった。記憶を少しずつ取り戻した“英国人の患者”アルマシーが語る過去。英国地理学協会の依頼で、アフリカのサハラ砂漠の地図作りに当たっていた彼は偶然、出会った人妻と許されぬ恋に落ちる。それが彼の運命を変えるとも知らずに……。
アカデミー賞で作品賞など9部門を制した、ミステリアスなドラマ。こちらも主人公の過去を解き明かすことで物語が進む。砂漠での運命的な出会い、熱愛、不倫関係の発覚、そして悲劇へ。貴族の出であるアルマシーの運命の物語はドラマチックで、なおかつ反戦のメッセージも込められており、胸を打つ。彼の話を聞き、影響を受けていく看護師ハナにふんしたジュリエット・ビノシュは、みごとにアカデミー助演女優賞を受賞。
『LION/ライオン 25年目のただいま』
製作年/2016年 原作/サルー・ブライアリー 監督/ガース・デイビス 出演/デブ・パテル、ルーニー・マーラ、ニコール・キッドマン、デビッド・ウェンハム
迷子になった5歳の少年の過酷な運命!
映画で感動する理由に、フィクションか、実話かは関係ない。ただし、実話と聞くと「こんなことが本当にあったのか?」という驚きが、感動にプラス作用を起こすのも事実。『LION/ライオン 25年目のただいま』は、まさにそんな一作。5歳で迷子になったインドの少年が、オーストラリア人夫婦に養子として迎え入れられ、サルーという名で成長。25年後、大人になった彼が、インドの家族への思いをよみがえらせ、何とか探せないか考えた末に、助けを借りたのはGoogle Earth(グーグルアース)! わずかな記憶を頼りに、サルーは自分が生まれた町を特定しようとする。
この『LION〜』は、いくつもの段階で感動がもたらされるスタイルになっている。まず前半は、インドの町で兄と離ればなれになったサルーの、過酷な運命に胸を締めつけられる。5歳の少年が数々の危険な瞬間に見舞われつつ、命が救われ、新しい家族が見つかるプロセスに引きこまれる。オーストラリアの大人のパートでは、サルーが過去にさいなまれながら、恋人との関係に悩む姿が、これまた切ない。そして、インドの家族との再会がどう実現するのか。そこで涙腺が崩壊するのは確実。オーストラリアの養父母の思いも丁寧に描かれるし、養母役のニコール・キッドマンらキャストの演技も誠実。実話感動映画として申し分ない仕上がりだ。
『コーダ あいのうた』
製作年/2021年 監督・脚本/シアン・ヘダー 出演/エミリア・ジョーンズ、トロイ・コッツァー、マーリー・マトリン、ダニエル・デュラント
耳の聞こえない家族たちの絆に泣ける!
主人公は、高校生のルビー。ろうあの両親と兄と生活し、ただひとり耳が聞こえる彼女は家族の“通訳係”だ。一家の仕事は漁業。高校で合唱クラブに入ったルビーは、歌うことの喜びにめざめ、顧問の教師も彼女の才能に気づき……という物語。まわりとのコミュニケーションのために、家族はルビーを頼るしかない。一方でルビーは、高校生活や自分の夢のために時間を使いたい。しかし家族も見捨てられないので、その葛藤に悩まされる。そんなルビーの立場を家族も十分に理解しており、本音と相手への愛で揺れ動くそれぞれのドラマが、暗くならず、基本は軽やかに描かれるので、かえって胸に迫ってくるのだ。
最大の見どころは、家族がルビーの歌をどうやって受け止めるかというエピソード。聞きたいのに聞こえないやるせなさなど、いくつかのステップが用意されるのだが、思わぬ方向から感動を誘う演出があったりする。これらの要素は下手したら、あざとくなるリスクも抱えるが、ルビー役、エミリア・ジョーンズの爽やかすぎる名演技に惹きこまれ、素直に作品に入りこんでしまう感覚。家族を演じるのが、実際に耳の聞こえない俳優たち(母親は『愛は静けさの中に』でオスカー受賞のマーリー・マトリン)なので、リアリティも満点だ。
『グリーンブック』
製作年/2018年 監督・脚本/ピーター・ファレリー 出演/ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ、リンダ・カーデリニ
真逆な2人のロードムービー!
実話の映画化と聞くと、すべて正確に再現されているかと思われるが、あくまでも映画は“作り物”。実際の出来事にインスパイアされ、かなり脚色された作品も多数。『グリーンブック』はその代表例だ。1960年代、人種差別の意識が色濃いアメリカ南部を、黒人ジャズピアニストのドクター・シャーリーがツアーで巡る物語。ピアニストのドライバー兼ボディガードとして雇われたのが、イタリア系のトニー。天才アーティストで裕福、知的で育ちの良さも感じさせるシャーリーに対し、トニーは気が短く、相手に遠慮しないタイプ。何もかも真逆な2人のロードムービーは、予想どおり彼らに育まれる絆にフォーカスしていく。
『グリーンブック』は基本、コメディ。とくに前半は、シャーリーとトニーのまったく噛み合わない会話やカルチャーギャップで笑わせていく。監督は『メリーに首ったけ』などのピーター・ファレリーなので、きわどいギャグも楽しさに変えるテクニックは抜群だ。しかしツアー先で、シャーリーが黒人であることから不当な扱いを受け、そこにトニーが不満を感じる中盤あたりから胸が痛む瞬間も相次ぎ、温かさと切なさが入り混じったクライマックスが導かれる。トニー役のヴィゴ・モーテンセン、シャーリー役のマハーシャラ・アリが、終盤にかけてドラマチックな演技の変化をみせ、感動を盛り上げる。トニーの息子が製作を手がけ、2人の生涯にわたった友情の事実が映画に刻まれた。
『私の中のあなた』
製作年/2009年 原作/ジョディ・ピコー 監督・脚本/ニック・カサベテス 出演/キャメロン・ディアス、アビゲイル・ブレスリン、アレック・ボールドウィン
ドナーとして生まれてきたアナの決断に心震える!
“泣ける映画”というのは、設定を聞いた段階である程度、予想がつくもの。逆に、泣かそうという“あざとさ”を感じ、引いてしまう人がいるのも事実だ。しかし時として、予想した感動の、さらに一歩先へ突き進んで心を揺さぶってくる映画もある。『私の中のあなた』はそんな一本だ。
主人公は、11歳の少女アナ。彼女には白血病を患う姉のケイトがいるのだが、アナはその姉のドナーになるべく遺伝子操作で生まれてきた。幼い頃から白血球やリンパ球を提供するなど、過酷な治療に耐えてきたアナだったが、腎臓移植手術の際、ついに「自分のために生きたい」と両親を相手に訴訟を起こす。
親の都合によって“デザイナーベイビー”として誕生したアナ。それだけでセンセーショナルで、アナの立場になって胸が締めつけられるのは確実。ただ本作は、ケイトの病気、家族がバラバラになりかけるアナの訴訟の先に、さらにエモーショナルな展開も用意している。そこで不覚にも泣かされる人が多いのだ。
アナ役のアビゲイル・ブレスリンは天才子役ならではの複雑な心情を見事に体現。そしてアナに無理を強いてきた母親役、キャメロン・ディアスのクライマックスでの演技が心にしみて、(キャメロンには失礼だが)そこも意外な感動のツボになっている。
『チョコレートドーナツ』
製作年/2012年 製作・監督・脚本/トラビス・ファイン 出演/アラン・カミング、ギャレット・ディラハント、アイザック・レイバ
偏見に立ち向かう姿に感動!
1979年、カリフォルニアに住むショーパブのパフォーマー、ルディは隣室の住人であるドラッグ中毒のシングルマザーの息子で、ダウン症の少年マルコを引き取ることに。ゲイの恋人で検事局で働くポールとともに、家族のような愛情に結ばれていく彼ら。しかし、世間の同性愛への風当たりは強く、マルコと引き離されたルディとポールは法廷で争うことを決意。そんなふたりに、さらなる逆風が……。
ゲイの男性が育児放棄された子供を育てた実話にヒントを得て製作された、疑似家族の物語。同性愛者への世間の偏見をリアルに見据えつつ、この逆風に立ち向かうゲイカップルの奔走を描く。彼らと、その“息子”となるダウン症児の強い絆は、胸を引き裂かれるような展開と相まって強烈な後味を残す。ちなみに、主人公ルディを演じた『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』の演技派アラン・カミングは、本作の製作以前に実際に同性婚をしている。
『海を飛ぶ夢』
製作年/2004年 監督:アレハンドロ・アメナバール 出演:ハビエル・バルデム、ベレン・ルエダ
生きることの意味を問いかける重厚作
抜けるような青空と、優しく照りつける陽光に彩られた眩い一作。海の事故で脊椎を損傷したラモンはもう28年ものあいだベッドで寝たきりの生活を続けている。顔にはいつも笑みを絶やさず、目を閉じればそこには無限の想像力が広がる。かくも本作には生命讃歌と呼ぶべき活力が満ち満ちている一方、ラモンは長きにわたって自らの尊厳死を求め続けている人物でもある。このパラドックスが彼の人間性をより立体的に浮かび上がらせていく。
彼は言う。「決して障がいを理由に死ぬのではない。私はあくまで一人の人間として、自らの意志で人生に終止符を打つ権利を得たいのだ」と。賛否は大きく割れる。スペイン国内の世論も揺れる。彼をサポートする家族や知人たちの中でも意見は分かれる。常に開放的なラモンの生き様を名優ハビエル・バルデムが力強く演じ、「生命とは?」「人生とは?」という崇高なテーマを観る者に柔らかく問いかけた感動作。アカデミー賞では外国語映画賞に輝いた。
『ビッグフィッシュ』
製作年/2003年 監督/ティム・バートン 脚本/ジョン・オーガスト 出演/ユアン・マクレガー、アルバート・フィニー、ジェシカ・ラング、ヘレナ・ボナム・カーター、マリオン・コティヤール
信じられない話はどこまでホント?
ホラ話を語っては、多くの人々を楽しませ、愛されてきた男エドワード。しかし、息子ウィルだけは嘘ばかりつく父を嫌っていた。そんなある日、エドワードの危篤の報を受けた彼は、妊娠中の妻とともに帰省する。巨人と出会った話、戦地でケタ外れの危険な任務に就いた話、そしてウィルの生まれた日に伝説の魚“ビッグ・フィッシュ”を釣った話。父は相変わらず、つくり物の冒険談を語り、ウィルをウンザリさせるが……。
異才ティム・バートンがダニエル・ウォレスの人気小説を映画化。作り話しばかりで、信じられない……そんな思いを父に抱いていた息子が、父の真意に近づいていく。エドワードの話のどこまでがホラなのか明確にはしていないが、そこには確実に“真実”が含まれている。そういう意味では、父の作り話に翻弄されてきた息子の成長談か。クライマックスからにじみ出る、その感動をじっくりと味わってほしい。
『13人の命』
製作・監督/ロン・ハワード 脚本/ウィリアム・ニコルソン 出演/ヴィゴ・モーテンセン、コリン・ファレル、ジョエル・エドガートン、トム・ベイトマン 配信/アマゾン プライム・ビデオ
奇跡の救出劇が胸を打つ!
2018年6月、タイ北部、ミャンマーの国境に近いタムルアン洞窟に、地元のサッカーチームの少年12人とコーチ1人が遊びに出かけた。しかし急な大雨によって大量の水が侵入。13人は洞窟の奥に取り残されてしまう。そのニュースを聞いて世界中から救援チームが駆けつけ、決死の救出劇が開始された。
発生から17日間を克明に描く本作は、最終的な少年たちの運命を知っている人にとっても、改めて手に汗握る緊迫感と、事件の衝撃度を伝えてくれる。少年たちが身動きできなくなったのは、洞窟の入り口から2500mの地点。そこに到達するまで、プロのダイバーでも6時間以上はかかる。まず少年たちの発見、さらに彼らをどうやって洞窟の外に出すかというミッションは、前人未到の過酷な“賭け”でもあった……。
洞窟の奥は酸素濃度がどんどん低下し、食料のなかった少年たちが衰えていく様子などもリアルに再現。洞窟内には、一人がかろうじて通過できるかどうかという狭い場所もあり、岩も突き出ている。わずかな油断で命が危うくなるスリルと、ダイバーたちの必死の動きで、観ているこちらも息苦しくなる瞬間が何度も!
ダイバー役の俳優も訓練を積んで水中撮影に臨んだ。救出で重要な役割を果たしたのが、洞窟探索専門のイギリス人ダイバーたちで、彼らをヴィゴ・モーテンセン、コリン・ファレルら有名スターが名演。ちなみにファレルは、別の新作(『イニシェリン島の精霊』)で次回のアカデミー賞にも絡みそうで、俳優として久々のブレイクの時期を迎えた印象だ。そして知られざる事実として心に響くのは、洞窟の外で何とか水の侵入を抑えようとする地元の住民たちの姿。彼らの無償の努力も、クライマックスの怒涛の感動を後押しする。
photo by AFLO