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CULTURE カルチャー

2022.11.05

ツメアト映画~エポックメイキングとなった名作たち~Vol.13
『トップガン』『トップガン マーヴェリック』が映画界に残したものとは?

 

 


そろそろラストスパートに入ろうとしている2022年。ウィズコロナ/アフターコロナ時代の中、一応の活況を取り戻した映画界において、覇権を取った作品は、まさかの『トップガン マーヴェリック』(監督:ジョゼフ・コシンスキー)であった。主演はご存じ、今年還暦を迎えたトム・クルーズ(1962年生まれ)。

全米では現時点、歴代興行収入ランキング第5位を記録し、世界興収ではトム・クルーズのキャリア史上初となる10億ドルを突破。全米と同じ5月27日に封切られた日本でも、『ONE PIECE FILM RED』(現在約180億円)や『劇場版 呪術廻戦 0』(138億円)といった国産アニメ勢力に、実写で唯一迫る130億円を突破(ちなみに『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』は95億円)。 

 
 

 


こういった万人向けのエンタメ映画は、玄人筋には往々にしてむしろ評価されにくいものだが、そもそも本作はアート系映画の祭典、カンヌ国際映画祭でプレミア上映(2022年5月18日)。おフランスでのシネフィル(映画狂)たちの熱狂から世界制覇へと離陸していった。まさしく興行も批評も無双の一本なのだ。

映画館でのロングラン上映が高い水準で続いていることから、予定されていたストリーミング配信がしばらく見送られたほど(現在は劇場公開の45日後から配信されることが通例となっている)。お手軽に観られるネットコンテンツによって、映画館の経営が苦戦を強いられるばかりか、旧来の映画フォーマット自体が駆逐されつつある今、堂々の劇場映画として大空を駆けていく“シネマの希望”でもあるわけだ。
 

 

『トップガン』(1986年)

これほどの活況、というか社会現象級の爆発は、おそらく誰も予想できなかったのではないか。特に遙か36年前のシリーズ前作に当たる1986年の『トップガン』(監督:トニー・スコット)のツメアトを知っている世代ほど、認識を限定するバイアスが大きかったように思う。

かく言う筆者のそのひとり。まず旧『トップガン』は、いわゆる映画マニアもうなる名作というより、時代を象徴するトレンディなヒット作という位置づけであった(1986年の全米興収No.1作品)。当時23歳のトム・クルーズをはじめ、ヴァル・キルマー、メグ・ライアンら青春スターたちの出世作にもなった。

とりわけトム・クルーズ演じる凄腕の海軍パイロット、ピート・ミッチェル――通称“マーヴェリック”の、〈ヘインズ〉の白Tシャツに、デニムはリーバイス501、そこにワッペンだらけのフライトジャケットを羽織り、〈レイバン〉のサングラスを掛けるというスタイルは、吉田栄作や加勢大周らにも影響を与え、アメカジの黄金形として定着。MTV絡みでがんがんヒットしまくったサウンドトラックも含め、丸ごと“80年代のポップアイコン”として、ノスタルジアの宝箱の中に仕舞われていたのだ。
 

 


なので『トップガン マーヴェリック』の冒頭、あの懐かしいケニー・ロギンスの『デンジャー・ゾーン』が流れた時点で鳥肌が立ち、36年前とほぼ同じ姿のトムが、〈カワサキ〉のバイクで走り出したところで「最高!!!!」と気分が爆上がりしたものの、それはあくまで中年限定だと肝に銘じていた。若者にうっかりこの素晴らしさを説いたらパワハラになると……。

おそらく映画館にも、“夫婦50割引”を利用するセミシニアくらいの世代が詰めかけ、「同窓会か!?」という様相になるのは間違いないと想定していたのである。実際、公開初動はそれに近い状況だったらしいが、やがて10代や20代の小僧(←失礼、敬意をこめて)までトムのかっこよさに魅了され、“追いトップガン”と呼ばれるおかわり鑑賞――熱心なリピーターを大量に生んでいったのは本当に驚いた。


もちろん企画はリブート系でも、映画としては新しい――IMAX上映を前提に、最先端の映像技術で撮られたフライトアクションの愉楽は大きいだろう。とはいえ、お話の内容はあくまで渋い。一見若い頃と変わらず、時を止めたようにも映る主人公マーヴェリック(“はぐれ者”の意)の姿は、まるでラストカウボーイだ。伝説の人と呼ばれながら、いまだキャプテン(大佐)として現場にとどまり、無人飛行機やドローンが主流の時代に、危険に身をさらして空を飛ぶ。

今回教官となったマーヴェリックは、後続の指導に当たり、事故で亡くなった元相棒の息子との因縁にも直面する。もはやパイロットは消えゆく種族だ――本作ではそんなことも言及される。戦闘機のエースパイロットがアメリカの栄光を背負って立つ存在だったのも、昔の話。劇中に頻出する星条旗が、どこかテーマパークや古着屋を彩る飾り物に見えてくる。それでもコックピットに乗り続ける男の宿業が語られていく。
 

 


要は時代おくれな男の、黄昏色の物語なのである。そういったセカンドライフ世代の枯れた哀愁もたっぷり漂わせつつ、ただし決定的な勝利のポイントは、一方でトム本人が“現役感”をしっかり保っていることだ。
それを象徴するのが、かつて付き合ったことのあった女性(現在はシングルマザー)、ペニー・ベンジャミンとのロマンス再燃。ペニーを演じるのはジェニファー・コネリー(1970年生まれ)。トム・クルーズとは初共演になる。まさに“夫婦50割引”的なカップルなのだが、ふたりともガチで綺麗。痛々しい感じが皆無で、清潔感もたっぷり。青春の残り香が漂うこのロマンス再燃に、結構本気でキュンとさせられてしまうのが凄い。少子高齢化社会における、新しい大人の“夢”を提供してくれた感すらある。これぞ良質のハリウッド映画ど真ん中!

ちなみに前作『トップガン』でのトムのロマンスの相手は、年上の教官だった。当時演じたのは、ケリー・マクギリス(1957年生まれ)。さすがに今回は出てこなかったな……。
 

 

『トップガン』(1986年)
 

  

 


副次的な反応としても、『トップガン マーヴェリック』効果で、トムが劇中で着ているフライトジャケット“G-1”と“CWU36P”の人気がファッションシーンで盛り上がっているようだ。実は36年前、日本では実際のモデルではなく入手のしやすい“MA-1”が流行したため、トムが着用しているのも“MA-1”だと思いこんでいる人が非常に多かった。筆者の身近なところで言うと、ウチの妻もそのひとりで、今回初めて「違うじゃん!」と気づいた模様。細かい小ネタではあるが、こういったアイテムの視認性の向上も、“トップガン現象”全体が高次にアップデートされたことの確かな一例だ。

『トップガン マーヴェリック』が新たに残したツメアトのおかげで、旧『トップガン』まで大きく株価上昇を果たしたのは、なんて幸福なことだろう。前作を手掛けた故トニー・スコット監督(2012年没)の笑顔が、スクリーンに浮かんで見えるようだ。敬礼!


『トップガン マーヴェリック』
製作年/2022年 製作・出演/トム・クルーズ 監督/ジョセフ・コシンスキー 脚本/アーレン・クルーガー、エリック・ウォーレン・シンガー、クリストファー・マッカリー 出演/マイルズ・テラー、ジェニファー・コネリー、ジョン・ハム、グレン・パウエル 

 
 

 

 
文=森直人 text:Naoto Mori
photo by AFLO
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