『ジュラシック・パーク』(1993年)
ローラ・ダーンを名バイブレイヤーと呼ぶと、『ブルーベルベット』から『インランド・エンパイア』まで、彼女をたびたび主人公やヒロインに起用してきたデヴィッド・リンチ監督らに嫌な顔をされそう。とはいえ、『マリッジ・ストーリー』でアカデミー賞助演女優賞、『ビッグ・リトル・ライズ』でエミー賞助演女優賞を受賞し、映画とドラマそれぞれの大きな賞を制覇しているのも立派な事実。これはもう、業界お墨付きの助演女優とも言えるのではないか。
『ブルーベルベット』(1986年)
『インランド・エンパイア』(2006年)
俳優のブルース・ダーンを父親に、女優のダイアン・ラッドを母親に持つローラは、まさにハリウッドのサラブレッド。自身も大勢の実力派俳優を輩出した名門、リー・ストラスバーグ演劇学校で演技を学んでいる。そうした真摯な学びもあってか単なる二世俳優の枠を超えるのは早く、前述のデヴィッド・リンチ作品などで注目の的に。1991年には『ランブリング・ローズ』で30年代アメリカ南部を生きる身持ちの悪いメイドを演じ、アカデミー賞主演女優賞にノミネート。世界的大ヒットを記録した『ジュラシック・パーク』シリーズには、古植物学者のエリー・サトラー博士役でメインキャストに名を連ねている。
第64回アカデミー賞に『ランブリング・ローズ』で出席したローラ・ダーン
『ビッグ・リトル・ライズ』(2017年)
『ビッグ・リトル・ライズ』シーズン2(2019年)
となるとやはり主役を張れる数少ない実力派女優の1人であるのも確かだが、だからこそ助演に回ったときの破壊力が半端ない。そのパワーに改めて気づかされたのが近年でいうと、高級住宅地で起きた謎の死亡事件を中心に物語が展開していく『ビッグ・リトル・ライズ』。事件に翻弄されるセレブママの1人、レナータをローラが演じた。いわゆる群像劇スタイルで構成されているため、レナータも見方によっては主役級なのだが出番がさほど多いわけではなく、主人公はニコール・キッドマンやリース・ウィザースプーンが演じていたママ友たち。しかも、レナータはクセの強すぎる圧迫キャラで、仲間に敬遠される役どころだった。しかしながら、ローラは彼女の厄介な仮面の下に潜む脆さを繊細に表現し、視聴者から愛される存在に。好評を受けて制作されたシーズン2にも登場した。
『マリッジ・ストーリー』(2019年)
『マリッジ・ストーリー』も存在感の放ち方としては同様の印象で、物語の中心にあるのは1組の夫婦の離婚にまつわるやり取り。ところが、妻側の敏腕弁護士として登場したローラが場をさらい、オスカー像もさらった。もちろん、だからといって物語が台無しになることはなく、演じたキャラの強烈さも作品の大事な要素。要するに、インパクトを残すべき役を安心して任せられる役者、それがローラ・ダーンと言えるかもしれない。ただし、あまりにも効力が大きいため、『ビッグ・リトル・ライズ』ならニコール・キッドマンやリース・ウィザースプーン、『マリッジ・ストーリー』ならスカーレット・ヨハンソンにアダム・ドライバーと、いわゆる主演にもパワーのある面々を揃えなくてはバランスが取れないのだが。
『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』(7月29日公開)
そんな“ローラ・ダーン効果”がまたまた光っていたのが、7月29日公開の『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』だ。『ジュラシック・パーク』の第1作と第3作に出演していたローラは、懐かしのエリー・サトラー博士役で登場。劇中で巻き起こる“陰謀”の核心に迫りながら、体を張ったアクションあり、恋のすったもんだ(?)ありの活躍ぶりを見せる。シリーズファンを満足させつつ、ゲスト出演には決して甘んじず、絶妙なさじ加減で。『ジュラシック・ワールド』シリーズ全3作の顔を務めてきたクリス・プラットや恐竜たちは、彼女に食われないよう気をつけていたかも!?
Laura Dern[ローラ・ダーン]
1967年生まれ。ロサンゼルス出身。ヒュー・ジャックマンと共演する『The Son(原題)』(2022年全米公開予定)が待機中。
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