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CULTURE カルチャー

2022.07.09

ふとしたことが大事件に発展する!
巻き込まれ映画5選!


『エネミー・オブ・アメリカ』

製作年/1999年 監督/トニー・スコット 出演/ウィル・スミス、ジーン・ハックマン

知らぬうちに極秘ファイルを持っていた!
妻へのクリスマスの贈り物を何にしようか悩んでいた弁護士のディーン(ウィル・スミス)は、ふとした思いつきでランジェリー・ショップへ立ち寄る。ここで気づかぬうちに、とある男から極秘ファイルを託されたことで状況は一変し、NSA(国家安全保障局)から地獄の果てまで追われる身に———。スピーディーなサスペンス演出で知られる名匠トニー・スコットが手がけているだけあり、NSAが盗聴、ハッキング、衛星監視システムを駆使して主人公を極限まで追い詰めていく超絶カメラワークは、いま見ても20年以上前の映画とは思えないほど臨場感がとてつもない。

一方、崖っぷちのスミスが謎の男ブリル(ジーン・ハックマン)に助けを求めてからは、映画が突如として”バディ・ムービー”へと転調を遂げ、相手の裏をかいた反撃に胸が高鳴りっぱなし。名優ハックマンは、かつて『カンバセーション…盗聴…』(74)でもこれと似た役柄を演じており、まるで二作が繋がっているかのような印象を味わえるのも映画好きにはたまらないポイントだ。 

 
 



『フランティック』
製作年/1988年 監督/ロマン・ポランスキー 出演/ハリソン・フォード、エマニュエル・セニエ

スーツケースを間違えただけなのに……!
学会に出席するためパリを訪れた医師とその妻が、不可解な事件へ巻き込まれる秀作サスペンス。長旅の疲れを抱えたままホテルにチェックインした二人は、どうやら自分たちが同型同色の他人のスーツケースを間違って持ち帰ってしまったことに気づき……とまあ、ここまでは海外旅行でよくある話だが、その後、ふと目を離した隙に、妻が忽然と姿を消してしまってからはミステリアスな展開の連続。警察や大使館も頼りにならない中、主人公が慣れない言語に苦労しながら真実へにじり寄る、いわゆる”ヒッチコック”スタイルの際立った一作だ。

特に注目したいのがポランスキー監督ならではの“水”の表現。物語の序盤で、妻が何かを懸命に訴えかける声は、シャワー音にかき消され全く聞こえない。その上、本作中でいちばんゾッとする場面では、なぜか背後にポタポタと水の滴る音が絶え間なく響く。かくも最初から最後まで身と心が湿り気を帯びていくような不気味さが、唯一無二の切迫感に拍車をかけている。 

 
 



『チェンジング・レーン』
製作年/2002年 監督/ロジャー・ミッシェル 出演/ベン・アフレック、サミュエル・L・ジャクソン

接触事故をきっかけに逆恨みデッドヒート!
人間ドラマの名手ロジャー・ミッシェル監督が、世界的ヒットを遂げた『ノッティングヒルの恋人』(99)の次作品として挑んだ予測不能サスペンス。ある日、二人の男がそれぞれの事情を抱えて裁判所へ急ぐ途中、思いがけず接触事故を起こしたのをきっかけに”人生のどん底”がはじまっていく。積み重なった苦痛に顔を歪めながら、彼らは思う。「すべてアイツのせいだ!!」。

そこから繰り広げられる、己の人格を投げ打った激突ぶりがすごい。ベン・アフレックがハッキングで相手の銀行口座を空っぽ状態に追いやると、やられた側のサミュエル・L・ジャクソンも躊躇なく相手の車のブレーキに細工を施す・・・などなど、鬼のような形相と「アイツが悪い!」の論理はエスカレートするばかり。でも、彼らは決して根っからの悪人というわけではない。二人が自分を省みて、掛け違えたボタンをきちんと修復できるのかが本作の重要なところ。まさに”迷える仔羊”とでも呼ぶべき等身大の人間像を、ベン&サミュエルが味わい深く演じている。 

 
 



『アフター・アワーズ』
製作年/1985年 監督/マーティン・スコセッシ 出演/グリフィン・ダン、ロザンナ・アークエット

立ち寄ったカフェで迎える不条理な夜
単調なパソコン業務を終えた主人公が、街角のカフェで一人の女性と出会う---。そんなロマンティックな風景が、いつしか不条理極まりない夜へと変わるブラックコメディ。ストーリーはずっと螺旋階段を登り降りしているみたいだし、登場人物もとびきりの変人ばかり。交わす言葉はみんなチグハグで、こちらの真剣な問いかけにちっとも向き合おうとしてくれない。そのくせ逆恨みして、なぜか主人公を執念深く追いかけ回す始末。まるでカフカ的な世界を80年代ニューヨークへ置き換えたかのような場面の連続である。

実は当時、スコセッシ監督は、長年温めた大作が一旦中止に追い込まれ、大きな挫折を味わっていた頃だった。そんな矢先にこの脚本と出会ったのはまさに運命。自身の混沌と不条理を投影するかのような本作を、驚異のバイタリティで、しかもごく低予算で撮り上げたのだとか。その結果、カンヌ映画祭では監督賞を受賞。巨匠に映画づくりの楽しさを再認識させた作品であることを思うと、この出口なしの不条理さがむしろ輝いて見えるはずだ。 

 
 



『ペリカン文書』
製作年/1993年 監督/アラン・J・パクラ 出演/ジュリア・ロバーツ、デンゼル・ワシントン

学生の書いた仮説が政府を揺るがす!
ワシントンD.C.で最高裁判事を狙った重大事件が相次いで発生。その犯人をめぐって様々な憶測が飛び交う中、一人の法学生が打ち立てた仮説“ペリカン文書”が秘密裏に関係者の手にわたり、いつしかFBIや大統領周辺をも揺るがす存在となっていく———。サスペンス作家ジョン・グリシャムが手がけた原作を、『大統領の陰謀』などで知られるパクラ監督が映画化。ひたすら点と線とを繋いで真実を追い求める緊迫のサスペンスとして、とても骨太な作りを構築している。

その前半では、仮説の正しさゆえに暗殺者の標的となるジュリア・ロバーツの逃避行が描かれ、数百人、数千人規模のエキストラを駆使した各場面のスケール感に驚かされっぱなし。また彼女がデンゼル・ワシントン演じる敏腕記者に共闘を求めてからは、映画がより堅実でエネルギッシュなエンジンを吹かせはじめるのも大きな見どころだ。政治、環境、ジャーナリズムなど様々なテーマを絡ませ、140分間走り抜けた先にはきっと、すべての謎が解けた納得感と、心地よい疲れが待っているはず。 

 
 

 

 
文=牛津厚信 text:Atsunobu Ushizu
photo by AFLO
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