『イコライザー2』『LBJ ケネディの意志を継いだ男』
デンゼル・ワシントンが19秒で世の悪を始末する『イコライザー2』と、暗殺されたケネディ大統領の後任として米国を率いた男を描く『LBJ ケネディの意志を継いだ男』をピックアップ!
- SERIES:
- 今週末は、この映画に胸アツ!
- TAGS:
- 今週末は、この映画に胸アツ! Culture
セレブで選ぶ編
『イコライザー2』
ムネアツなポイントは?
・様々なジャンルを演じられるデンゼルの技量
・マッコールのCIA時代の上司が殺される!
・ドラマ部分の深みが増している!
・クライマックスの死闘は19秒超え!
様々なジャンルを演じられるデンゼル・ワシントン
デンゼル・ワシントンといえば、深みのある演技でアカデミー賞主演男優賞にも輝いた名優。固定した役柄を嫌い、これまで実在の人物から、善玉、悪役と様々なジャンルのキャラクターを魅力的に演じてきた。そんな彼がアクションヒーローもイケると世間に知らしめたのが‘14年公開の『イコライザー』だ。ホームセンターを舞台に、DIY用品で敵を退治する展開はデンゼルの新たな一面を披露した。そして今回、その続編が公開となる。同じ役柄を嫌う彼だけに、『2』ではいい意味で観る者の期待を裏切る中身となっている。
CIA時代の上司が殺される!
デンゼル演じるマッコールは、元CIAの凄腕エージェント。昼はタクシードライバーとして世の悲喜こもごもを眺め、夜は法で裁けぬ悪党をわずか19秒で葬り去る闇の請負人として暮らしている。そんな彼のもとに、CIA時代の上司が殺害されたとの知らせが届く。独自に調査するうちに、敵は自分と同じ特殊訓練を受けたスペシャリストであることを掴む。
ドラマ部分の深みが増している!
本作が、“いい意味で裏切ってくれる”ポイントは、見応えのあるドラマ部分だ。前作同様、ついついアクションを期待してしまうのだが、そこは曲者デンゼル。続編とはいえ、同じ内容とはならない。特に昼間に展開する物語は人の機微が描かれていて実に味わい深い。同じアパートに住む青年マイルズとの交流は師と弟子といった関係。『タイタンズを忘れない』のように正義感ある役が似合うデンゼルが演じることで、胸に迫るものがある。
クライマックスの死闘は19秒超え!
とはいえ、アクションがもの足りないというわけではない。冒頭での列車内での攻防やタワーマンションでの格闘は、お決まりの19秒で手際よく始末。クライマックに至っては、嵐の中で19秒以上の死闘が繰り広げられる。監督のアントワン・フークアとは、『トレーニング・デイ』から4度めとなるタッグ。円熟味ある構成に、安心して身を委ねられる作品なのは間違いない。
『イコライザー2』
監督/アントワーン・フークア 脚本/リチャード・ウェンク 出演/デンゼル・ワシントン、ペドロ・パスカル、アシュトン・サンダース、メリッサ・レオ 配給/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2018年/アメリカ/上映時間121分
10月5日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
物語で選ぶ編
『LBJ ケネディの意志を継いだ男』
ムネアツなポイントは?
・米大統領が死亡した場合、副大統領が職を受け継ぐ
・ケネディ暗殺後、大統領になった男の物語
・政治思想が異なるケネディの側近となる
・ケネディ暗殺のシーンも描いている!
・ウッディ・ハレルソンの名演技!
米大統領が死亡した場合、副大統領が職を受け継ぐ
アメリカでは合衆国憲法によって、国のトップである大統領が死亡した場合、ただちに副大統領が自動的に職を受け継ぎ、国の指揮をとることになる。とはいえ近年、このケースは稀。しかしアメリカ大統領たる者、常に命は狙われている可能性がある。多くの人の記憶に焼きついているのが、1963年、ジョン・F・ケネディ大統領の暗殺だろう。
ケネディ暗殺後、大統領になった男の物語
そのケネディ政権の副大統領を務め、暗殺事件直後に大統領に就任した、リンドン・B・ジョンソンの物語。国民的人気を誇ったケネディと違って、はっきり言って、あまり語られることのなかった人。政治家として、ケネディとはまた別の才能にあふれていた彼の素顔を、今作は実にテンポよい演出で語っていく。監督は『スタンド・バイ・ミー』などの名匠、ロブ・ライナー。
政治思想の異なるケネディの側近になる
北部出身でエリートであるケネディと、南部出身の成り上がりといわれたジョンソン。彼らは民主党の大統領予備選で争い、ケネディが勝利。同じ民主党ながら政治思想は異なる彼らだが、ケネディはジョンソンを副大統領に指名する。「対立するより仕えさせた方がいい」という論理であり、面倒な相手を側近にするケネディの鋭い“感覚”に感心させられる。急進派のケネディに対し、ジョンソンは慎重派。議会の人間関係も熟知し、ケネディにシビアに意見する。映画なので美談に描かれているかもしれないが、大国のトップとしてこんな2人が共闘すれば理想的では……と、今作を観ながら実感するはず。
ケネディ殺害のシーンも描いている!
物語は、予備選からケネディ大統領就任、人種差別を撤廃する公民権法成立に向けてジョンソンや南部議員との駆け引きというメインストーリー。そして要所にあの暗殺の日が挟まれ、否応なく緊迫感を高めていく。もちろん衝撃の瞬間も描かれ、その直後のジョンソンの冷静さと、苦しみに引き裂かれる決断もドラマチックだ。この緊急時の判断も含め、忖度や駆け引き、曲げない信念など、政治に関係なく一般企業で働く人たちへの提言も感じられるのが、本作の大きな魅力。
ウッディ・ハレルソンの名演技!
ジョンソン役は『スリー・ビルボード』でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたウディ・ハレルソン。テレビ映りのいいケネディへの嫉妬や、人々に“愛されない”苦悩まで切実に名演する。そしてケネディの雰囲気を見事に再現したジェフリー・ドノヴァンなど、派手さはないが、キャストたちの真摯な名演技も必見。これだけの急展開が、97分にすっきりまとめられているのも好印象だ。
『LBJ ケネディの意志を継いだ男』
製作・監督/ロブ・ライナー 出演/ウッディ・ハレルソン、ジェフリー・ドノバン、ビル・プルマン 配給/ツイン
2016年/アメリカ/上映時間97分
10月6日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
(C)2016 BROAD DAYLIGHT LLC ALL RIGHTS RESERVED.
文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito