『ラスト・ブレス』水深91mで取り残された男を救え!
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日常生活ではほとんど味わえない肉体の“限界”。これこそ、映画で疑似体験したくなるものかもしれない。そんな事実を改めて教えてくれるのが『ラスト・ブレス』だ。どんな限界が描かれるのかは一目瞭然。呼吸のできない海の中で、人はどこまで命の希望があるのか。本作は実際に起こったアクシデントを基に、そこを解き明かしてくれる。
主人公たちの職業は“飽和潜水士”。世界中の海底に設置されたパイプラインや通信ケーブルの保守作業を行っている。予測不能の事態も想定し、彼らはつねにチームで作業をする。イギリスとデンマークの間にある北海のガス・パイプラインを補修するため、ベテランのダンカン、冷静なデイヴ、若手のクリスの3人が、水深91mへと向かう。しかし海上でサポートする船が荒波に流されたうえ、作業中に命綱が切れたクリスが取り残された。潜水服の緊急ボンベから酸素を吸うクリスだが、そのボンベは10分しか持たない……。クリスの居場所も特定できない状態なので、ダンカンとデイヴ、支援船の乗組員も大混乱。クリスが危機を迎えてから、画面には緊急ボンベの酸素残量、さらに無酸素状態の分数なども表示され、それだけで観ているこちらは呼吸が止まったような感覚に陥る。究極の深海サバイバル映画と言っていい。
なぜここまで潜水士たちの危機を実感できるのか? それは本作が“お仕事ムービー”としてリスペクトとともに描かれているから。冒頭から飽和潜水士がどのようにチームを組み、どうやって深海の作業に肉体を慣らしていくかを丁寧に見せてくれる。知られざるプロセスも紹介されるので、そこだけでも見ごたえがある作りだ。そして事故が発生してから、仲間の2人、支援船のメンバーが、それぞれのプロフェッショナルな知識と覚悟、さらに賭けに出る勇気を一瞬、一瞬の判断で繰り出す姿は、まさに胸アツもの! 一人の命を救うべきか。あるいはもっと大きな災害を引き起こしてしまうのか。その究極の選択もドラマチックに展開していく。“いま何が起こっているのか”だけに集中する演出によって、気がつけば瞬(まばた)きするのも忘れ、手に汗が滲み出ているはずだ。
『ラスト・ブレス』9月26日公開
原作/ドキュメンタリー『ラスト・ブレス』(メットフィルム) 監督/アレックス・パーキンソン 脚本/ミッチェル・ラフォーチュン、アレックス・パーキンソン&デヴィッド・ブルックス 出演/ウディ・ハレルソン、シム・リウ、フィン・コール、クリフ・カーティス 配給/キノフィルムズ
2025年/アメリカ・イギリス/上映時間93分
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