
映画は世界中の各国で作られているが、ときどき“こんな国の映画が、びっくりするほど面白かった!”という現象が起こる。この『Flow』は、ヨーロッパの東にあるバルト三国のひとつ、ラトビアの映画(フランス・ベルギーとの合作)。人口200万人弱という国から誕生したアニメが、映画界最大の祭典、アカデミー賞にも到達し、いま世界から愛されている。
2025年の第97回アカデミー賞。長編アニメ賞が発表された瞬間、ラトビア人監督のギンツ・ジルバロディスは喜びを爆発させた。ラトビアに初のオスカーをもたらしたのはもちろん、受賞作『Flow』が、ハリウッドメジャー大作アニメを退けての栄誉になったから。ディズニーの『インサイド・ヘッド2』やドリームワークスの『野生の島のロズ』に比べれば、『Flow』は製作費が2ケタも違う低予算! このハンデを乗り越えての快挙は、1年前の『ゴジラ-1.0』の視覚効果賞受賞とも重なった。『Flow』は、大洪水に見舞われた世界で、一匹のネコを中心に動物たちがサバイブする物語。そんな風に説明すると絵本のようなムードを予想するかもしれないが、今まで観たことのない世界に心も身体もどっぷり浸ってしまうのが、この『Flow』の魔力だ。
ネコの他にはカビバラ、犬、キツネザル、ヘビクイワシ(鳥)などが登場。彼らは多少、キャラクター的にデザインされつつ、セリフはナシ。鳴き声には、本物の動物の音が使われた。観ているこちらも動物たちの目線で冒険を擬似体験するわけだが、それぞれの特徴が生かされたエピソードで笑わせ、ハラハラさせ、思わぬ絆で感動させるという流れがスムーズ。人間は一切登場しないものの、人間の文化の形跡があり、どことなく不穏でスリリングな気分に誘われるあたりも大人向け。地球の異常気象や環境破壊といったテーマも見出せるけど、そこも押し付けがましくない。何より、スケール感たっぷりの映像に何度も息をのむし、大自然の中の動物たちの位置関係、距離感も見事に計算されて描かれるなど、今やアニメーションのレベルは世界どこでも同じなのだと実感してしまう!
『Flow』3月14日公開
製作・監督・脚本/ギンツ・ジルバロディス 製作・脚本/マティス・カジャ 配給/ファインフィルムズ
2024年/ラトビア・フランス・ベルギー合作/上映時間85分
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