そろそろ映画界は一年で最大のセレモニー、アカデミー賞へ向けた話題が増えてきた。今年も本命に近い作品が出揃ってきたが、そのひとつで、作品賞など11部門でノミネートされているのが本作である。これ、かなりの衝撃度!
監督はヨルゴス・ランティモス。前作『女王陛下のお気に入り』もアカデミー賞で作品賞・監督賞など9部門10ノミネートを達成。今や世界的巨匠であるが、かなり“クセつよ”系の監督。この新作でもセンセーショナルな描写がたっぷり用意される。基本設定からして強烈。妊娠中のベラが悲嘆にくれて自ら命を絶つも、天才外科医がお腹の中の胎児の脳を移植し、彼女を蘇生させる。肉体は大人で、精神は子供の状態というベラの、新たな人生が展開。外科医の屋敷には、犬と鳥が合体した生き物がいたりして、シュールな空間に放り出された感覚だ。
脳が赤ん坊のベラは、目にする物、耳にする物すべてが初体験。大人の肉体で反応するわけだが、本作がフォーカスするのは彼女が“性”にめざめるプロセス。エクスタシーを知る喜びを、演じるエマ・ストーンは一切の躊躇もなく、文字どおり肉体を張って熱演する。『ラ・ラ・ランド』ですでにアカデミー賞を獲っているのに、「ここまでやるか!」という役者の野心には恐れ入るばかり! 今回、彼女は再びオスカー像を手にするかもしれない。外科医役のウィレム・デフォー、ベラに求愛する弁護士役のマーク・ラファロら共演陣も、ストーンの演技を盛り立てる。ロンドンからはじまるベラの冒険は、映像もモノクロからカラーへと変わり、リスボン、エジプトのアレクサンドリアと移動。行く先々で純粋な心で多くのことを吸収し、パリでは目を疑うような行動にも出る。クラシカルな美術や衣装、小道具で別世界へ連れて行かれながら、どんな結末が待っているのか。そこも予想を超えてくる野心作だ。
『哀れなるものたち』1月26日公開
原作/アラスター・グレイ 製作・監督/ヨルゴス・ランティモス 製作・出演/エマ・ストーン 脚本/トニー・マクナマラ 出演/マーク・ラファロ、ウィレム・デフォー、ラミー・ユセフ 配給/ウォルト・ディズニー・ジャパン
2023年/イギリス/上映時間142分
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