物語で選ぶ編
ムネアツなポイントは?“まさかのガンダムVSメカゴジラがハリウッドで実現!”
『レディ・プレイヤー1』
スティーブン・スピルバーグ監督といえば、かつて『ジョーズ』でパニック映画を、『E.T.』で宇宙人との交流を、『インディ・ジョーンズ』シリーズで冒険活劇を、そして『ジュラシック・パーク』ではCGによる恐竜を……と、映画のジャンルや映像に革命を起こしてきた。そんな監督のスピリットを久々に感じさせるのが、この最新作『レディ・プレイヤー1』だ。VR(ヴァーチャル・リアリティ)で体感する驚きの世界が未知の体験に案内する、“映画”本来の目的を達成している。
専用のゴーグルとグローブを着ければ、世界中の誰もが入りこめる仮想空間“オアシス”。無限のように、様々な光景が広がるオアシス内の映像は、圧巻の一言だ。オアシスの創始者の遺言に従った“宝探し”の冒険は、まず、ニューヨークに似た仮想都市でのカーレースにはじまるのだが、このシーンのスピード感、ドライバー目線の臨場感は、われわれ観客もVRを体感するレベル。一気にオアシスの世界に引きこまれる。テンポ、ダイナミズムとも、アクション娯楽作の見本のようなこのシークエンスは、さすがスピルバーグ!
本作のように、自分の“意識”が別の空間のキャラクターを動かす設定は、過去にも『アバター』などの作品にもあったが、オアシス内のキャラクターは『アバター』のように生々しくなく、かといって“いかにもCG”ではない。リアル感と作り物感のバランスが絶妙。このあたりでもほかのアクション映画とは一線を画す、革新的ビジュアルが達成されたといってよさそう。
オアシス内に、’80年代を中心にしたカルチャーネタ(映画・音楽・漫画・人気キャラ)を発見できるのも本作の大きな楽しみで、ガンダムや『AKIRA』のバイクの活躍は日本人にうれしい(ウルトラマンなど、原作に登場しても権利の問題で出てこないキャラもいる)。特にガンダムVSメカゴジラなど日本では絶対にあり得ない対決がハリウッドで実現しているところはオタクならずとも大注目だ。しかし、それらをスルーしても、作品全体に’80年代映画の豪快で、ちょっと懐かしいテイストが充満しており、当時の映画にハマった人はノスタルジーに浸り、そうでない人は逆に新鮮に映るはず。『グーニーズ』や『スタンド・バイ・ミー』、さらにジョン・ヒューズ監督作のように、’80年代青春ストーリーの味わいも復活している。
革新的な映像と、映画の歴史への愛。その両方をスティーブン・スピルバーグは究極のスタイルで達成した。本作と『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』を、ほぼ同時進行で作ったなんて、やっぱりこの人、映画の天才である。
●『レディ・プレイヤー1』
製作・監督/スティーブン・スピルバーグ 出演/タイ・シェリダン、オリビア・クック、ベン・メンデルソーン、サイモン・ペッグ 配給/ワーナー・ブラザース映画
2018年/アメリカ/上映時間140分
文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito
©2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTSRESERVED
セレブで選ぶ編
ムネアツなポイントは?“ワイルド・オーリーこそ真の魅力!”
『アンロック 陰謀のコード』
甘いマスクから女性に支持されるイケメン俳優オーランド・ブルーム。その人気を決定づけたのが『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズで演じたエルフ族の王子レゴラス役だ。金髪のロングヘア姿で、弓矢を武器に華麗に敵を退治する様は、世界中の女性を胸キュンにさせたものだ。しかし、オーリーの魅力は、胸キュンだけでなくムネアツにもさせるって知ってた⁉︎
ノオミ・ラパス演じる主人公アリスはCIAの尋問官。囮捜査中のロンドンで、テロを企てる一味のひとりを拘束したとの報を支局から受け、急遽尋問を担当することに。ひととおりの尋問を終えた頃、アリスのもとにCIA本部からの電話が入る。その場にいる支局員たちは真っ赤な偽者だという。罠に落ちたアリスは激しい銃撃戦の末、セーフハウスへと逃れる……。
オーランド・ブルームは、アリスが逃げのびたセーフハウスへ忍びこんでいた泥棒役。といっても、単なるコソ泥ではなく元イギリス海兵隊というバックボーンがある謎めいた男だ。外見もレゴラスと同じ長髪だけれども色は黒と、男臭さがムンムン。銃の扱いにも長けた危ない“ワイルド・オーリー”が今回の特長ってわけだ。
オーリーには「タフな役を演じるイメージが湧かない」なんて人もいるかもしれないが、2013年の『ケープタウン』では、ドラッグとアルコール浸けになったクズな刑事を好演。実はこちらのほうが真骨頂なのではないかと思わせたほど。今回もクズとは言わないまでもワルなところが見どころ。ガン&格闘アクションもこなすなど、女性にはまったく響かないかもしれないが、男性的支持は得そうなシーンが連発する。オーリー=優男と敬遠していた人は本作でイメージが変わるので、是非鑑賞をおすすめしたい。
作品自体は、裏切り者が鍵を握る展開となるのだが、出演陣がマイケル・ダグラス、ジョン・マルコヴィッチ、トニ・コレットと、誰が裏切ってもおかしくないクセ者揃いなだけに余計に予想しづらいといった点も一興だ。
●『アンロック 陰謀のコード』
監督/マイケル・アプテッド 出演/ノオミ・ラパス、オーランド・ブルーム、マイケル・ダグラス、ジョン・マルコヴィッチ、トニ・コレット配給/キノフィルムズ、木下グループ
2017年/アメリカ・イギリス/上映時間98分
4月20日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
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