ハリウッドのセクハラ事件を暴いた記者たちの執念に感服する!『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』
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ここ数年、ハリウッドでも最大のトピックとなったのが“#MeToo”。日本を含め、世界各国に広がったこの問題、いったい何がきっかけだったのか? そこに迫る本作は、もしかしてガチな社会派映画……という予想を覆し、エンタメとして興奮を高めながら歴史が変わる瞬間を目撃させてくれる!
2017年、新聞の大手、ニューヨーク・タイムズに衝撃のスクープが掲載された。ハーヴェイ・ワインスタインが性犯罪で訴えられるという記事だ。『パルプ・フィクション』や『恋におちたシェイクスピア』、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズなどアカデミー賞にも輝く名作を多数手がけたプロデューサーで、ハリウッドの大物とされてきたワインスタイン。
自分の作品に出すからと女優たちにセクハラをはたらき、現場の女性スタッフにも信じ難い要求をし続けていた彼について、ようやく被害者たちが勇気ある告発に踏み出す。タイムズの2人の女性記者が、いかに証言者たちの背中を後押ししたか。そのプロセスを誠実に描きつつ、徐々に暴露されるワインスタインの秘密に唖然&呆然の連続となってしまう……。
この作品、ワインスタインの告発という一本筋が通っているものの、多面的な見どころを用意しているのが特徴。まずトッププロデューサーがどんな生活をして、何を考えているのかという実態が赤裸々に明らかになり、ハリウッドの裏事情がよくわかる。被害に遭ったアシュレイ・ジャッドは本人役で登場する。
そして、真実を求める記者たちの“仕事ムービー”としての魅力も備える。結婚生活や出産と仕事の両立など、女性記者たちの葛藤がストーリーに見事にとけこんでいる。さらに最終的にスクープ記事を出すかどうか、相手も絡んでの攻防は一級サスペンスのようなテンションで描かれ、目が離せなくなる。もちろん重要なシーンでは胸が締めつけられる感動を用意。
このように映画としてのツボを押さえた作りで、ともすれば重くなりがちなテーマにすっかり没入してしまう、そんな力作だ。ちなみに現在70歳のワインスタインは有罪で収監中。禁固刑は24年となる可能性もある。
『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』
製作総指揮/ブラッド・ピット 原作/ジョディ・カンター、ミーガン・トゥーイー 監督/マリア・シュラーダー 脚本/レベッカ・レンキェビチ 出演/キャリー・マリガン、ゾーイ・カザン、パトリシア・クラークソン、アンドレ・ブラウアー、アシュレイ・ジャッド 配給/東宝東和
2022年/アメリカ/上映時間129分
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