ここ数年、ハリウッドの王道ジャンルであるコメディや青春ストーリーの劇場公開作品がやや減少傾向。ちょっと寂しいと思ってる人もいるはずだが、その分、配信ではこのジャンルの作品が増加中で、掘り出し物も多い。『シニアイヤー』は、まさにそんな一本だ。
主人公は女子高生のステファニー。人気者になりたいと決意した彼女は一念発起し、チアリーディングの主将になる。しかし練習中の落下で、なんと昏睡状態に……。それから20年後。奇跡的に目を覚ました彼女は、もう一度、高校に戻って夢だったプロムクイーンを目指す。タイトルの『シニアイヤー』は、アメリカで高校最後の一年のこと。肉体は37歳のステファニーだが、精神的には17歳のまま。まずそのギャップで笑わせるが、ステファニー役、レベル・ウィルソンが自分の変化を受け止め、周囲の高校生になじんでいくプロセスを超ナチュラルに演じていて、観ているこちらも楽しい気分になってしまう。そこが本作の最大の魅力かもしれない。
スマホやSNSはもちろん初体験。レディー・ガガの写真を見てマドンナだと思い込んだり、20年前の流行でストップしてるステファニーの奮闘に笑いの連続。1990年代が懐かしいと感じる人には、ツボとなるネタ満載のはず。一方で、本作ならではの新鮮さもいっぱい。かつての友人たちが、今や高校の校長やPTA。友情や確執、恋愛感情が新たなステージに変わっている。ハリウッドの“青春映画あるある”な学校内の階級社会をSNSとともに強調しながら、そこから一歩先へ突き進む清々しさもある。最近、何かとコンプライアンスで表現の自由が逆に制限されてる現実も皮肉ったりして、映画としてなかなか攻めてる一作。観終わった後、スッキリといい気分になってるのは間違いない!
『シニアイヤー』ネットフリックスで配信中
原案・脚本/アンドリュー・クノアー 監督/アレックス・ハードキャッスル 出演/レベル・ウィルソン、ゾーイ・チャオ、サム・リチャードソン、ジャスティン・ハートリー
2022年/アメリカ/視聴時間113分
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