【試乗】〈マクラーレン〉アルトゥーラ スパイダー: レベル違いの感動が待っている!
もしもあなたがスポーツカー愛にあふれ、オープンカーの楽しさを知っているなら、是非とも乗ってほしいクルマがある。〈マクラーレン〉初のハイブリッドにして格納式ハードトップを備える、アルトゥーラ スパイダーだ。
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クルマ好きならご存じのとおり、クーペボディの“アルトゥーラ”はブランド初のプラグインハイブリッドモデル。その新型となるアルトゥーラ スパイダーはその名のとおりのオープンルーフモデルとなるのだが、もちろんこのクルマ、単に天井が開くだけで新型を名乗っているわけじゃない。実は中身も“アルトゥーラ”からアップグレード。次世代スーパーカーの性格をより高めているというのだから期待は膨らむばかりだ。
こちらはクーペボディの“アルトゥーラ”。フロントからルーフにかけての曲線は美しいのひとこと。新型アルトゥーラ スパイダーもその美しさをしっかりと受け継いでいる
その一方で“スパイダー”という仕様は、常に人生を謳歌したいと願う人にとって一撃必殺のキラーコンテンツ。こうなると、個人的にはスパイダーと聞いた時点で、おすすめ確定。気持ちのいい風や日差し、流れくる緑樹の香り、そしてあの抜群の開放感を想像するだけで心が奪われてしまうし、そこに共感できる人はきっと多くいるのではないだろうか。
さて、そんな思いのなか参加したのが、7月下旬に岩手で開催されたアルトゥーラ スパイダー国内初の試乗会。美しい自然の中に佇む“ANAインターコンチネンタル安比高原リゾート”を拠点に、風光明媚で楽しい八幡平アスピーテラインと東北自動車道が推奨ルートとなっていたのだが、当日は残念ながら雨混じりの空模様。試乗のハイライトとして期待された八幡平アスピーテラインは視界不良のため回避され、秋田県鹿角市で折り返す高速ドライブ&安比高原までの一般道を辿るコースへと推奨ルートが変更になった。
とはいえ、試乗コースが変更されたからといってアルトゥーラ スパイダーの輝きは色褪せることはない。コチラはただただ、「屋根が開けられますように」と天候の回復を願っていたが、幸運なことに出発するころには雨もポツリポツリといった程度に回復。ホテル前にはすでにディヘドラルドアを高々と跳ね上げたスパイダーが用意され、スポーツカー好きにはたまらない光景が広がっていた。ちなみに新型スパイダーはボディカラーの選択肢も拡大。標準の5色に加え“エリート”の20色、さらに18色のMSO(マクラーレン スペシャル オペレーションズ)カラーからも選択可能となり、こだわる大人のお洒落心も満たしてくれそうだ。
今回の試乗には、パパイヤスパーク、タンザナイトブルー、東京シアンなどのボディカラーが用意された
やっぱりワインディングは楽しい!
幅広で頼もしいサイドシルにいったん腰をかけ、ディヘドラルドアをそのまま下ろしていよいよ出発。ホテルを出て、まずは高速道路の入り口となる松尾八幡平ICへ。ところが、そこへと続く道路“レインボーライン”で、思いがけず、さっそくの感動を味わうことになった。というのも、レインボーラインはなだらかな起伏が続く、木々に囲まれたワインディングロード。雨を恐れてフルオープンというわけにはいかなかったが、アルトゥーラに乗ってコーナーを前にすると俄然心が躍る。ヒラヒラとコーナーを抜けていくドライビングフィールはスパイダーになってもやっぱり同じ。特に前輪の接地感を感じながらスッと鼻先がコーナーに向く感じは本当に素晴らしく、連続する中速コーナーがこれほど楽しいと思えたクルマはほかにない。まさに「う〜ん、これこれ!」という感じで、そのハンドリングのよさと俊敏性は、やはり超軽量ボディの恩恵が大きいのだなぁだとあらためて感心してしまった。
とはいえ、当然スパイダーになって重量が増えているわけで、乾燥車両重量はクーペから+62kgの1457kg。だが、実際運転してみて「ちょっと動きが重いなぁ」などと感じることは全くない。むしろ軽快な走りがとっても印象深かったせいか、あらためて超軽量を謳うアルトゥーラの基本性能の高さに唸る結果になった。というかこのアルトゥーラ スパイダー、クーペと同じでとにかく運転がめちゃめちゃ楽しい。
高速道路では“ゆったり”がいい!?
魅惑のワインディングシーンで気分が爆上がりしたあとは、いよいよ高速道路での試乗へ。入口のゲートを抜けて合流区間で一気にアクセルを踏み込むと、今度は天井知らずのパワーにニヤリとする。それもそのはず、0-100km/h加速は怒涛の3.0秒! しかも3ℓV6 ツインターボエンジンはクーペより最高出力が20ps向上。さらにそこに95PS/225NmのEモーターが組み合わされ、最高出力700ps 、最大トルク720Nmを叩き出すのだから刺激的だ。そうなると「もっと踏み込みたい」と思うのが人情というものだが、クルマの誘惑に負けていては免許証が何枚あっても足りない。ここはいったんスローダウンして、ひと呼吸。目の前が開けた東北道のクルージングをゆったりと楽しむ方向へと気持ちを向けてみることにした。
アルトゥーラ スパイダーにはEモード、コンフォート、スポーツ、トラックの4つのドライビングモードが備わっているのだが、ここではもちろん快適重視でコンフォートを選択。3つあるハンドリングモード(コンフォート、スポーツ、トラック)もデフォルトのコンフォートのままであれば、実に余裕あるクルージングが楽しめる。そして、ドライバーの心も完全に“流す”モードに。そうすることで、高速ロングドライブで気持ちいいアルトゥーラ スパイダーの一面が見えてきた。
コンフォートモードで流す限りは、有り余るパワーを余裕に変えるのがアルトゥーラ スパイダー。GTカーのようなリラックス感をともない品のあるクルージング感を提供してくれるから、流れに任せて走っていても気持ちがいい。また、高速で走っている以上は思わぬ衝撃を拾うこともあるが、そのときでも足回りはしなやかに対応。カーボンモノコックの高剛性ボディと、反応速度が向上したというプロアクティブ・ダンピング・コントロールを含むサスペンションシステムのおかげか、路面からのショックに身構えるといったこともなかったのは嬉しいポイントだ。これならパートナーをロングドライブに誘いやすいし、長い移動時間を心配することもないかもしれない。
秋田県鹿角市で折り返し、高速道路を降りて帰路についたころ天気も回復。そうなるとやることはひとつ。安比高原へと続く一般道で、念願だったリトラクタブルハードトップの開閉ボタンを押してみた。その開閉時間はわずか11秒。クルマも速いけど、屋根の開閉もめちゃくちゃ速い。もちろん信号待ちでサッとできちゃうのは当然のこと、ルーフが軽量ということで50km/h以下なら走行中でも開閉ができるというのだから驚いてしまう。そんな中、30km/hの速度ではあったけど実際に開閉操作をしてみたが、その動きは実にスムース。走行中、風を受けての開閉に壊れないかとビビっていたが、結果は全く問題なし。ビビった自分が恥ずかしい。
その一方で、屋根を開けたアルトゥーラ スパイダーは意気揚々と風と日差しを受けて走り続ける。久しぶりのオープン体験だったので、走行中は青空に向かって手を上げたりを何度か繰り返したのだが、さすがに流麗なスーパーカーがオープンだと、爽快にして気分がいい。走行モードをスポーツ、あるいはトラックに変えるとさらに。勇ましいエンジン音がBGMになって、「あ〜、このままどこまでも行ってしまいたい」といったような気持ちになってしまう。これぞまさにアルトゥーラ スパイダーが見せてくれるドラマなのだろう。
そう思うと、やっぱりこのクルマは現実に寄り添いつつも、常に夢を見せてくれる最高のパートナーだと思えてくる。電気のみで33kmを走ることができて、先進運転支援システム(ADAS)も標準装備。現代のニーズにスマートに対応する一方で、最高峰の走りのパフォーマンスは圧倒的。さらに屋根を開けると、豊かな自然と繋がることができ、美しい景色や旅情までもたらしてくれる。果たして、これほどの贅沢が味わえるようなクルマがほかに何台あるのだろうか? 是非みなさんも実際に走ってみて、忘れられない感動を体験してみてはいかが?
★DATA 〈マクラーレン〉アルトゥーラ スパイダー
●全長×全幅(Mirrors folded)×全高:4539×1976×1193㎜
●車両重量:1457kg
●ホイールベース:2640㎜
●エンジン:3ℓV6 ツインターボ
●エンジン最高出力:445kW(605PS)/7500rpm
●エンジン最大トルク:585Nm/2250~7000rpm
●モーター最高出力:70kW(95PS)
●モーター最大トルク:225Nm
●システム合計最高出力:515kW(700PS)/7500rpm
●システム合計最大トルク:720Nm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:後輪駆動
●税込み価格:3650万円~
●マクラーレン・オートモーティブ
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