Behind the success of businessmen
幼い頃から身近にあった“舞台”が新たな視点をもたらす。
ビジネスの世界で結果を出している人物は、きっと“自分を高める”ためのコトやモノ、あるいは時間を持っているに違いない。今回は、経営コンサルティング会社を起業し、セルフコーチングアプリの企画・開発を手掛ける江田泰高さんに“高めている”ものを伺った。
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『レ・ミゼラブル』は登場人物も多いため、人物の視点を変えて見ると違った学びがある。アニメは、他者との境界線を描いた『攻殻機動隊』などをよく見る
外資系コンサルティング会社での経験を生かし設立したアトワジャパンで、経営コンサルタントや人材育成を行う一方、セルフコーチングアプリの開発も手掛ける江田泰高さん。このアプリは“クレドル”と呼ばれ、各分野で活躍するプロがコーチを務めるプログラムをとおして知見や経験に触れ、新たな視点を得ることを狙いとしたもの。実は江田さん自身も、自分を高めるために“新たな視点”に触れる機会を作っているという。それが、ミュージカル作品や映画だ。
「私は幼少期から高校までアメリカで暮らし、その多くをNYで過ごしたこともあり、両親がよくブロードウェイの観劇に連れていってくれました。中学時代は演劇部に所属し、その先生がミュージカルの助監督だったご縁で舞台の照明を手伝ったことも。そういった意味で、幼い頃から“演出”というものに触れる機会が多かったんです」
趣味で見ていた舞台作品とビジネスとの親和性に気づいたのは、29歳で外資系メーカーの物流部長に就いてからだという。
「多くの部下をまとめること自体がはじめての経験でしたが、まず意識したのは、みんなが頼れるリーダーになるということ。そのためには、自分や部下はもちろん、対外的に部署や会社をどう演出すべきなのかを考える必要がありました。チームのために今はあえて強く叱るべきだといった判断や、経営陣に成果をアピールすることで正当な評価を得るといったことも、ある意味演出。マネジメント職は、舞台監督と同様に演出力が求められることに気づいたのです」
こうした“気づき”を得てからは、名作と呼ばれるミュージカル作品に加え、映画も意識的に見る機会を増やした。同じ作品でも監督や演者が違うものを見ることでより学びが多くなるという。
「演劇作品や映画は、作品自体は同じでも監督がどんな視点を持つかによって印象が変わります。企業の部署もリーダーの視点によってチームの雰囲気や戦力は変わりますし、同様に企業も社長の視点に左右されます。だからこそ、作者や演者が違うものを見比べることに意味があるわけですが、必ずしも全面的に肯定できる作品である必要はないかと。この監督のこの演出には気づきはあるけど、この演出は違うと思う、そんな部分があっていい。様々な気づきをパッチワークのように繋ぎ合わせながら、自分なりの視点を作ることが大切なのです。また、同じ作品でも20代と現在では気づきを得る部分も変わる。そこもまた面白いですね。かつて20歳の誕生日に父から、“人生は劇場だ。あなたは人生という舞台の主役であり、監督であり演出家だ”というシェイクスピアを引用した手紙をもらいました。経営者となった今、演出という視点を持ち、それを磨くことが、仕事をこなすこと以外に必要な要素だと改めて感じています」
パーソナルブランディング関連書籍も、キャリアや企業の演出という意味合いで興味を持ち、読むことで自分の引き出しを増やしている
ビジネス層向けコーチングアプリ“クレドル”のプロモーション動画も自身で脚本と監督を担当。ここでも、舞台好きが表れた演出を
アトワジャパン株式会社
江田泰高さん
慶應義塾大学経済学部卒業。大手物流会社を経て、外資系コンサルティングファームで幅広いプロジェクトに従事。その経験を生かし、外資系メーカーで部門長を歴任。2019年にアトワジャパン株式会社を設立。
『Urban Safari』Vol.28 P30掲載
photo : Tomoo Syoju(BOIL) text : Takumi Endo