Safari Online

SEARCH

URBAN SAFARI アーバン サファリ

2022.04.29


JOAQUIN PHOENIX【 ホアキン・フェニックス】

JOAQUIN PHOENIX【 ホアキン・フェニックス】PROFILE
1974年、プエルトリコ生まれ。子役として『スペースキャンプ』『バックマン家の人々』などに出演。活動休止を経て、『誘う女』で俳優業再開。『グラディエーター』でアカデミー賞助演男優賞、『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』で同主演男優賞候補となる。ベネチア映画祭男優賞受賞の『ザ・マスター』、カンヌ映画祭男優賞受賞の『ビューティフル・デイ』などを経て、大ヒット作『ジョーカー』でアカデミー賞主演男優賞受賞。ほかに『her/世界でひとつの彼女』などがある。

アメコミ映画史上、最も強烈で興味深いヴィランの誕生秘話を描いた『ジョーカー』は、普段はさほどアメコミ映画に関心のないライト層にも訴えかけるほど、インパクトの強い傑作だった。タイトルロールを演じたホアキン・フェニックスは、その年のアカデミー賞主演男優賞を受賞。これまでも高い演技力で知られ、名監督たちと多数の作品でタッグを組み、役にのめりこむ姿勢がときに危うい印象すら与えてきたフェニックスだが、この受賞を境に、彼はハリウッドきっての演技派スターとして世界中に名を知られる存在となる。

そんなホアキン・フェニックスが次に選ぶのは、どんな作品だろうか。再び狂気の悪役が降臨するのか? それとも、全く異なるタイプの役柄か?環境保護活動の一環として出演した短編映画『ガーディアンズ・オブ・ライフ(原題)』を挟み、彼が長編出演作として臨んだのは後者。もちろん、同じタイプの作品や役柄を続けて望む俳優などほとんどいないわけで、当然といえば当然のチョイスだが、驚くべきは振れ幅の大きさだ。名匠マイク・ミルズと組んだ『カモン カモン』で、フェニックスは“幼い甥との交流に奮闘する伯父さん”を演じている。

「映画の出演を決めるときに大事なのは、僕が好きになれる監督かどうか。その監督がこれまでどんな作品を作ってきたかよりもね。マイク・ミルズはまず脚本を送ってくれて、それがすごく気に入った。非常に興味深くて、無限の可能性がある物語のように思えたんだ。それで彼に会いたいと思い、実際に会って話したのだけど、彼となら何カ月も一緒に仕事ができる気がした。なにかクリエイティブなことができそうだと感じたし、今までとは違うなにかを僕から引き出してくれるんじゃないか、僕になにか新しい視点をくれるんじゃないかと思えたんだ」

「今振り返ってみても、この物語には自分が共感できる瞬間や感情がたくさん描かれている」とも語るフェニックス。本人の談によるとスムースに出演を決めた印象を受けがちだが、実のところ、即決とはいかなかったよう。マイク・ミルズ監督曰く、当初の彼は「この映画はすごく面白そうだけど、僕にはできない」と言っていたそうだ。そのため、フェニックスの出演を熱望していたミルズ監督は何カ月もかけ、脚本の読み合わせを実施。各シーンを演じながら物語を検証し、一緒に脚本を練り上げ、ときにはお互いの経験や考えについて語り合ったという。子供とは? 大人とは? 家族とは? 兄妹とは? そんな問答を経て、彼は『カモン カモン』の主人公ジョニーに。ラジオジャーナリストとしてアメリカ国内を飛びまわる一方、訳あって妹から預けられた9歳の甥ジェシーの面倒を見る独身中年男と化す。

ちなみに、フェニックス自身のパートナーは『ドラゴン・タトゥーの女』などで知られる女優のルーニー・マーラで、共演回数の多い2人は2019年に婚約し、翌年9月には第1子が誕生。『カモン カモン』の撮影を終えた頃、父親への階段を上りはじめたことになるが、「息子や自分の経験と映画を関連づけて考えると、吐きそうになるんだ。映画は別物だからね。(演じているときに)自分の人生については考えたくない。実生活にインスパイアされるのは美しいことだと思うけど、個人的には、ときに気持ち悪くも感じるんだ」と率直に語っている。

狂気のヴィランから等身大の伯父さんへ。その変化もさることながら、作品自体のテイストの違いにも興味をかき立てられる。物語の中心となるのはジョニーとジェシーのささやかな日常で、彼らをとらえた映像は美しいモノクロ。ドキュメンタリーかと思うほど親密なタッチが、人と人として向かい合う伯父と甥の時間に普遍性をもたらす。ジェシー役の少年ウディ・ノーマンとフェニックスのケミストリーもばっちりで、「今までとは違うなにかを僕から引き出してくれるんじゃないか」というフェニックス自身の期待に対する答えを見た思いにもなる。彼とプロレス好きのウディくんは、某プロレスラーのモノ真似を通じて意気投合し、ジョニーとジェシーさながらの絆を結んでいったそうだ。

「この映画を撮るうえで、僕や監督が目標にしていたのは自然でリアルに見えること。でも、“自然な演技をしている”というものにはしたくなかった。その差をうまく説明できないし、どうすればそうなるのかもよくわかっていないのだけど、僕にはウディが指針になった。目の前に毎日いてくれたからね。僕は彼の言葉に耳を傾け、彼のやることに反応すればよかったんだ」

悩めるヴィランから、無垢な子供まで。様々な対象の声を聴き、リアリティに落としこむ。“ホアキン・フェニックス史”がひとつひとつ、高みへと更新されていく理由がわかった気がした。待機中の作品にアリ・アスター監督による『ディサポイントメント・ブルバード(原題)』がある。

『カモン カモン』
JOAQUIN PHOENIX【 ホアキン・フェニックス】アメリカを飛び回るラジオジャーナリストのジョニー(フェニックス)は、妹の息子で9歳になるジェシーを数日間預かることに。ゆっくりと打ち解け合っていくジョニーとジェシーだったが、妹の事情で預かる期間が1日1日と長くなり……。『人生はビギナーズ』などのマイク・ミルズ監督が、自身の子育て体験からヒントを得て作り上げたヒューマンストーリー。●4月22日より、TOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国ロードショー
© 2021 Be Funny When You Can LLC. All Rights Reserved.


I find it hard to express
that love to each other.

お互いの愛を言葉にするのは難しい。
『カモン カモン』より

 
Information

『Urban Safari』Vol.27 P10~11掲載

写真= Carolyn Cole / Los Angeles Times via Contour RA by Getty Images 文=渡邉ひかる
photo by Carolyn Cole / Los Angeles Times via Contour RA by Getty Images text : Hikaru Watanabe
〈アメックス〉のスモール・スポンサーシップ・パートナーズも参加!『サファリ・オープン』で特別な1日を体験!
SPONSORED
2025.12.24

〈アメックス〉のスモール・スポンサーシップ・パートナーズも参加!
『サファリ・オープン』で特別な1日を体験!

今年で3回めの開催となった、本誌『サファリ』主催のゴルフイベント『サファリ・オープン 2025』。毎年、様々なコンテンツやアクティビティでも話題となるこのコンペ。今回はさらに斬新なサービスも加わり、熱い盛り上がりを見せていた。そんな大盛況…

TAGS:   Lifestyle
知的なムードが漂う〈トム フォード アイウエア〉の新作!大人の品格を宿すクラシックな1本!
SPONSORED
2025.12.24

知的なムードが漂う〈トム フォード アイウエア〉の新作!
大人の品格を宿すクラシックな1本!

大人のコーディネートは、小物選びで“品格”が決まる。特に顔まわりの印象を左右するアイウエアは、手を抜けない重要パートだ。そこで注目したいのが〈トム フォード アイウエア〉の新作。繊細でクラシカルなフォルムが目元に知性を添え、冬スタイルを格…

TAGS:   Fashion
今、〈エドウイン〉の名作“505”が見逃せない!デニムにこだわるならメイド・イン・ジャパン!
SPONSORED
2025.12.24

今、〈エドウイン〉の名作“505”が見逃せない!
デニムにこだわるならメイド・イン・ジャパン!

タフで男らしい大人のカジュアルに欠かせないデニムは、今、王道の骨太な1本が人気。なかでも2023年に復活し、昨今のトレンドも相まって注目されている〈エドウイン〉の名作“505”が見逃せない。デニム本来の武骨な魅力やヴィンテージ感を気軽に楽…

TAGS:   Fashion Denim
クオリティにこだわった〈センテナ〉の新作アウター!今、着たいのは大人仕様のミリジャケ!
SPONSORED
2025.12.24

クオリティにこだわった〈センテナ〉の新作アウター!
今、着たいのは大人仕様のミリジャケ!

カジュアル好きの男にとって、ミリタリー系のアウターは昔から定番。とはいえ、いい年の大人になるとガチの軍モノは、マニアックすぎて少々着こなしにくいのも事実。ならば、洗練された大人仕様の1着を。〈センテナ〉のミリジャケなら武骨なデザインはその…

TAGS:   Fashion
創業地“小矢部”の名を冠した〈ゴールドウイン〉のプレミアムな1着!大人のスキーウエアは上質感と快適さで選ぶ!
SPONSORED
2025.12.01

創業地“小矢部”の名を冠した〈ゴールドウイン〉のプレミアムな1着!
大人のスキーウエアは上質感と快適さで選ぶ!

1950年にはじまった〈ゴールドウイン〉のヒストリー。その新作スキーウエアコレクションの名前は、創業地にちなんだ“オヤベ”だ。歴史の深みを感じさせ、エイジレスなスタンダードデザインでありながら、機能は最新鋭。素材はもちろん、ひとつひとつの…

TAGS:   Fashion

loading

ページトップへ