国籍の枠にとらわれない“ボーダレス”を極めた空間
今回の訪問先、インテリアデザインを生業にする施主の自邸はコンクリートや鉄の武骨さと自然素材の温もりが融合した“なに風”と分類できないボーダレスな個性にあふれた一軒家。ミッドセンチュリーと民族調など異なるテイストを自在に組み合わせ、味わいのある雰囲気に仕上げる感性には学びたいポイントが満載だ。
- SERIES:
- 西海岸的なハッピー・ルーム! vol.11
今月の部屋 水野邸/3LDK+S/97.28㎡
LDKの床に用いたヘリンボーン張りのナラ材は、あえて幅を太く、丈を短めにして力の抜けた表情に。キッチンに続く壁には石やガラスを交ぜたタイルを使い、真鍮やアイアンの家具と馴染む洗練された重厚感を加えている
アメリカ、ヨーロッパ、北欧……そのどれでもなく、どれでもある。そんな独特の個性が随所ににじみ出る都心の一軒家。限りある敷地面積を活用すべく、家族それぞれの寝室はミニマムに徹し「自室にこもるより、ここが一番心地いいと思える場として」ゆったり構えたLDKを家の主役に据えた。
「ヴィンテージの家具とアフリカの仮面をあえて同じ空間に置く。そういうクロスカルチャーな目線は、移民の文化を柔軟に取り入れてきたヨーロッパのインテリアから影響を受けています」
タイル壁にヘリンボーンの床。キッチンやガレージには武骨なコンクリートブロックと多様な素材を使いながらも、色調に統一感を持たせることで自然に溶け合い一体となっているのがお見事。バイクやプラモデルなど趣味のものを集めたガレージ兼書斎も特徴的だ。
「僕の実家には、父が趣味の彫刻をするアトリエがあり、室内には母が好きで集めた英国アンティークの品があった。好みは違えど、古いものやちょっと変わったものを楽しむ感性には大いに影響を受けています。この家を通じて、子供たちもそういう“味”を面白がってくれるようになったら嬉しいですよね」
01 絵を飾るように小窓を並べリビングの視界を心地よく
周辺住宅を隠して空と木々だけ目に入るよう、ソファ正面の窓は小さめに
02 玄関までにじみ出るガレージの趣味世界
玄関土間とガレージをガラスで仕切った、眺めて楽しいエントランス
03 ガラスブロックを通る光で家の中心部を明るく
階段室は家の中央に位置。ガラスブロックから入る光で室内の印象を明るく
04 ハードな質感に包まれた武骨な機能美キッチン
コンクリートなどハードな素材使いのキッチン
05 ヴィンテージのロッカーをエントランスの主役に
学生時代に〈イーベイ〉で落札したロッカーの奥行きをカットして靴箱に利用
INTERIOR POINT
どこから見ても絵になる、360度美しいソファ
リビングで存在感を放つ〈ハウストラッド〉のソファ。上品なオリエンタル柄の張り地は英国〈GP& Jベイカー〉社のもの。肘掛けから背面までぐるりと飴色のラタンを使用。どの角度から見てもスタイリッシュなので好きな場所に置ける。広い座面がリラックス感をアップさせる。
●ハウストラッド
TEL:03-6412-7406
URL:www.housetrad.com
雑誌『Safari』3月号 P200・201掲載
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