梅雨や夏の時期を迎えると、職場でのスーツスタイルが暑苦しく不快に感じることが多くなる。そんなときに注目したいのが、スーツやワイシャツの袖をまくるスタイル。袖をまくることは、涼しさを感じることだけではなく、爽やかな印象を与えたり、活動的な雰囲気を演出したりもできる。
また、見た目のスマートさを保ちつつ、動きやすいといった実用性も兼ね備えているため、多くのビジネスマンに好まれるスタイルといえる。今回は、カッコよく袖まくりをしたい人に知って欲しい腕の筋肉の鍛え方を紹介していく。
【腕の筋肉の構造】
・腕の筋肉の名前
上腕二頭筋
二の腕の表側にある筋肉で、力こぶとも呼ばれている。上腕二頭筋は名前通り長頭と短頭の2種類の筋肉に分けられる。また、肘を伸ばす動作と肘を曲げる動作に関与している。
上腕三頭筋
二の腕の裏側にある筋肉で、腕をまっすぐ伸ばした時に浮き上がる部分。上腕三頭筋は名前の通り上腕三頭筋長頭や上腕三頭筋内側頭、上腕三頭筋外側頭の3種類の筋肉に分類される。
上腕筋
上腕の内側に位置する筋肉で、主に肘を曲げる動作を担当する。物を掴んで持ち上げるときや、手を口元に持っていくときなど、日常生活の中で頻繁に使われる筋肉である。
腕橈骨筋
上腕の外側に位置する筋肉で、主に上腕二頭筋や上腕筋の補佐役として肘関節の屈曲動作をサポートする。
【腕の筋肉を鍛えるメリット】
・力強さを印象づける
筋肉質の腕は力強さの象徴とされる。また、ビジネス面でも自己管理ができる人であるという印象を与えることができる。筋肉を鍛えることは、自己管理能力の一部であり、自己規律と努力の結果であると広く認識されているからだ。
したがって、筋肉質の腕を持つ人は、自己規律が高く、目標に向かって努力することができる人と見なされる。また、筋肉質な腕は、健康的な印象も与えることができる。
・日常生活をサポート
日常生活で重いものを持ち上げたり、疲れにくくなるなどのメリットも。また、筋力がつくと疲労感が軽減され、長時間の作業でも疲れにくくなる。これは、筋肉が鍛えられることで、筋肉の耐久力が向上し、長時間の活動に耐えられるようになるからである。
・握力が強くなる
握力を鍛えると、物をしっかりと掴む能力が向上する。そして、握力が強くなると、手や腕の持久力や安定性が増し、グリップ力の向上も期待できる。滑りやすい物をしっかりと掴むことができ、転倒やけがのリスク軽減につながる。
・自信をもてる
筋肉がつくと、見た目が変わり、体型に自信が持てるようになるという人は多い。また、筋肉をつける過程で、自分の努力が形になって現れるため、その過程において自己効力感が高まるといわれている。
【腕を鍛えるためのトレーニングQ&A】
・腕を太くするにはどこを鍛えればいいの?
二の腕の表側にある筋肉で、力こぶができる部分の上腕二頭筋や二の腕の裏側にある筋肉で、腕をまっすぐ伸ばした時に浮き上がる部分の上腕三頭筋のほか、手首から肘付近までの筋肉である前腕筋群を鍛えると良いだろう。
これらの筋肉を鍛えることで、腕全体が太く見える効果が期待できる。ただし、腕だけを鍛えてしまうと体のバランスが崩れてしまう可能性があるため、全身の筋肉をバランスよく鍛えることが重要となる。
・腕の筋トレは週に何回すればいいの?頻度は?
腕の筋トレの頻度は、それぞれの体調や目標などによって異なるが、トレーニング経験によっての目安は次のようになる。
初心者は週に3回か4回が目安としよう。初心者は少ないトレーニング量でも筋肉が大きくなるからだ。筋肉にしっかり負荷を与えたら、次の筋トレまでは3日(=72時間)ほど空ける必要があるため、3~4日の休養を取り入れると良いだろう。
中級者は週に2回か3回が目安となる。初心者と異なり、筋肉が慣れてくると同じ重量では筋肉の成長が止まってしまう。そのため、中級者は週に2回か3回のトレーニングが推奨されている。
上級者になると、週に1回か2回が目安となる。上級者になると1回のトレーニング量がさらに増える。そのため、筋肉の回復にはより時間が必要となる。
・腕の筋肉はどれくらいで回復するの?
筋肉の回復期間は、筋肉の種類やトレーニングの強度によるが、一般的には24~72時間とされている。また、筋肉が疲労した後、適切な休養をとることで、以前の力を超えて回復する現象、いわゆる超回復が起こる。この超回復期間を理解し、トレーニングと休息のバランスを取ることが、筋肉を効率よく鍛え上げるための重要なポイントとなる。
ただし、回復期間はあくまで目安であり、体調や状況に応じて無理なトレーニングは避けよう。初めて筋トレを行う場合などは専門家に相談するのも良いだろう。
・腕立て伏せをするとどこに筋肉がつくの?
腕立て伏せをするとどの筋肉を鍛えることができるのかは意外と知られていない。腕立て伏せは全身運動で、上腕二頭筋や上腕三頭筋のほか、大胸筋や三角筋、腹筋、背筋も鍛えることができる。さまざまな筋肉を鍛えることで、全身の筋力が向上し、カラダのバランスや安定性が改善されるといわれている。
・腕立て伏せをすると痩せるの?
腕立て伏せは筋肉量を増やし、基礎代謝を高め、日常生活でのカロリー消費を増やす効果がある。ただし、大幅な脂肪燃焼を期待するのは難しく、ダイエットや消費カロリーの観点からは長時間続けられる有酸素運動の方が効果的といえる。
・握力低下のデメリットは?
握力の低下は、日常生活や健康に大きな悪影響を及ぼす。たとえば、ドアノブを回したり、瓶の蓋を開けたり、重い物を持ち上げたりする際に支障が生じる。特に年齢を重ねると、転倒やけがのリスクも高まる。
また、箸やペンを握る力が衰えることで、食事や文字を書くことが難しくなる。さらに、仕事やスポーツ、趣味においても制約が生じ、心理的なストレスや不安も招く可能性もある。
【自宅でできる腕の筋トレ方法3選】
・力こぶを作りたい!上腕二頭筋の鍛え方
ドルフィンプッシュアップ
1.床の上でうつ伏せになり、握りこぶしを作り腕立て伏せの体勢をとる
2.肘から手にかけてを床につけたまま、お尻を高く上げてキープ
3.腕立て伏せをするときのように、床をプッシュして元に戻る
・Tシャツも着こなせる!上腕三頭筋の鍛え方
リバースプッシュアップ
1.両手を肩幅程度に開いて椅子など台の端に置く
2.足を前に伸ばし、かかとを床につけた状態にする
3.ゆっくりと肘を曲げて、カラダを下げる
4.背中が椅子やベンチに近づくようにする
5.肘を直角にするか、それよりも深く曲げる
6.肘が外側に広がらないように注意しながら、肘はまっすぐ後ろに動かす
7.下げた位置で一時停止する
8.上腕三頭筋を意識しながら、ゆっくりと元の位置にカラダを持ち上げる
9.肘を完全に伸ばさず、少し曲げた状態で止める
・握力の強化にも!前腕筋群の鍛え方
リストカール
1.ダンベルを逆手(手の甲を下に向けて)で持つ
2.椅子に座り、前腕を台の上に置く
3.手首から先が台からはみ出るようにして、もう片方の手で固定する
4.手首のみで上下にダンベルを動かす
5.片手15~20回×3セットを繰り返す
【腕を鍛える筋トレ後ストレッチの重要性】
・乳酸の排出を促進
腕に限らず筋トレ中は、筋肉内に乳酸が蓄積される。これが筋肉の疲労や硬直をもたらすことにつながる。ストレッチを行うことで、凝り固まった筋肉を伸ばし、筋肉内の血流を改善し、乳酸などの老廃物の排出を促進する。
・筋肉痛の軽減
筋トレによって引き起こされる筋肉痛は、筋肉のちょっとした損傷と炎症によって引き起こされる。ストレッチはこれらの痛みや症状を緩和することができる。
・睡眠の質を向上する
筋トレを行ったすぐ後は交感神経が優位な状態となる。ストレッチで心身の緊張を徐々に和らげてリラックス状態にもっていこう。そうすることで、睡眠の質の向上にもつながる。また、質の高い睡眠は、筋トレの効果を最大化するために重要である。
・筋肉や関節の柔軟性の向上
筋トレ後は、筋肉が硬直しやすい状態である。ストレッチすることで筋肉が柔らかくほぐれる。また、筋肉や関節の可動範囲が広がって柔軟性を高めることができる。
【腕を鍛えるためのトレーニングについてまとめ】
今回は、自宅でできる腕の鍛え方を中心に紹介した。筋トレによる腕の鍛錬は、袖をまくりスタイルを演出するだけでなく、重い荷物を持ち上げるなど日常生活で力を必要とする場面で大変役立つ。
さらに、定期的な筋力トレーニングを行うことで、骨密度の向上や代謝率の増加など、全身の健康にもプラスの影響を与える。これを機に、健康的な生活を送るためにも腕の筋肉を鍛えることを習慣にしつつ、カッコよく袖をまくるビジネスマンを目指してみてはいかがだろうか。
【著者:吉田怜司】
品川区を拠点に活動するパーソナルトレーナー。トレーナー歴10年。順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科博士前期課程修了。修士(スポーツ健康科学)。資格/NSCA CSCS( 認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)