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CULTURE カルチャー

2022.02.19

『スカーフェイス』が映画界に残したものとは?
ツメアト映画~エポックメイキングとなった名作たち~Vol.7

 

 


有名無名のギャングスタ・ラッパーたちにこよなく愛され、ヒップホップ・カルチャーの聖典となっている史上最もサグい(悪い)ギャング映画。それがブライアン・デ・パルマ監督、アル・パチーノ主演の1983年作品『スカーフェイス』である。

ただしもちろん『ワイルド・スタイル』(1982年/監督:チャーリー・エーハーン)や『Style Wars スタイル・ウォーズ』(1983年/監督:トニー・シルヴァー)のように、勃興まもないヒップホップ文化の様子が刻まれているわけではまったくない。共感を受けているのはスピリット(精神)の部分である。1980年代初頭、カストロ率いるキューバ共和国から亡命し、米フロリダ州マイアミの裏社会でがんがん成り上がっていく主人公の後先考えない生き様に、不良たちが熱狂。
この名優アル・パチーノ(当時43歳だが、もっと若く見える)が鮮烈に演じた男――カミソリのように痩身小柄なキューバ系移民の極道青年、トニー・モンタナは、『仁義なき戦い』(1973年/監督:深作欣二)の広島ヤクザ、広能昌三(菅原文太)や若杉寛(梅宮辰夫)もびっくりな男のシンボル、マイアミ・ビーチをデカいオープンカーで徘徊してみたい野郎どものアイコンになっているのである。 

 
 

 


例えばパフ・ダディことショーン・コムズは「俺は『スカーフェイス』を64回観た」と豪語。ゲットー・ボーイズにはその名もスカーフェイスというMCがいる(本名:ブラッド・ジョーダン)。スヌープ・ドッグの2009年のシングル「ギャングスタ・ラヴ(feat. The-Dream)」のジャケは、黒と白のツートーンに赤文字が施された『スカーフェイス』のポスターデザインへのオマージュだ。 

 
 

 


そのほかにもヒップホップ関連の“『スカーフェイス』大好き!”ネタは山ほどある。しかしこれほどの人気にもかかわらず、実はこの映画、公開当時は評論家や映画マニアたちから酷評を浴びたことでも有名だ。年間の駄作や糞映画人を選出する“逆アカデミー賞"の祭典、第4回ゴールデン・ラズベリー賞(通称『ラジー賞』)では、ブライアン・デ・パルマがワースト監督賞にノミネートされてしまったほど。 

 
 

 


なぜメタメタにディスられたかといえば、『スカーフェイス』はギャング映画の古典『暗黒街の顔役(原題は同じく“Scarface”)』(1932年/監督:ハワード・ホークス)のリメイクという形を取っているからだ。実在のギャングであるアル・カポネをモデルにした主人公トニー・カモンテを、『スカーフェイス』で脚本を務めたオリヴァー・ストーン――そう、やがて『プラトーン』(1986年)や『JFK』(1991年)などを監督する男! は、1980年5月にキューバから犯罪歴を持った連中が大量にフロリダへと避難した件を受け、その中に架空の主人公トニー・モンタナがいたという設定へと変更。結果、口を開けば“FUCK”としか叫ばず、メガ盛りのコカインを吸引し、アロハシャツか高級スーツ姿で衝動的に銃をぶっ放す、のちの東映Vシネマ群にも多大な影響をもたらしたであろう狂犬的キャラクターが爆誕。さらに『キャリー』(1976年)や『殺しのドレス』(1980年)などホラー系でヒットを飛ばしていたブライアン・デ・パルマが、お得意の血と暴力の残酷描写でこってり塗り上げ、170分のボリューミーな大作に仕上げた(『暗黒街の顔役』は92分)。結果、インテリの方々から「ハワード・ホークスへの冒涜だ!」と糞リメイク扱いを受けたのである。 

 
 

 


しかしこの気合とガッツで自らの人生の閉塞をぶち破っていくトニー・モンタナに、米社会で抑圧を感じながら生きているマイノリティたちはどっぷり魅了された。例えば『ニュー・ジャック・シティ』(1991年/監督:マリオ・ヴァン・ピープルズ)では、ウェズリー・スナイプス演じるニューヨークの黒人ギャングが自分の心情をトニーに重ねる形で『スカーフェイス』が引用されている。また凶暴極まりないトニーだが、子供には優しく、そして妹思いというジャイアン的な“意外な側面”もあるのがニクい。 

 
 

 

もちろんいま我々の目から観ても、『スカーフェイス』は最高に面白い。「金、力、女」という令和の世ではお叱りを受けそうな成功の価値観を堂々と打ち出し、ジョルジオ・モロダーの“ザッツ80年代”な音楽がバブリーな昂揚をますます盛り上げる。トニー・モンタナのむちゃくちゃな突っ走り方は、前半はヒップホップながら、後半はパンクといった趣。先ほど『仁義なき戦い』を例に出したが、むしろヤクザ映画の極北として知られるカルト作『仁義の墓場』(1975年/監督:深作欣二)の破滅的なヤクザ、石川力夫(渡哲也)に近いかもしれない。

「よし、派手にいくぜ! これがあいさつだ!」――と叫んでから、トニーがグレネードランチャーを装着したM16というゴツい銃器を手にヤケクソの銃撃戦を繰り広げる、大邸宅での壮絶なラストシーンは何度観ても震えが来る。 

 
 

 


また劇中のパワーポイントとなる“THE WORLD IS YOURS”(世界はあなたのもの)というフレーズは、象徴的なスローガンとして様々なカルチャーの中で広く愛され、援用され続けている。2006年には『スカーフェイス ワールド・イズ・ユアーズ』という、映画の続編的な設定のゲームまで発売された。いまやマイアミでは、トニー・モンタナの関連グッズが定番商品としてお土産屋に並んでいるほど、フィクションの人物なのに“柴又の寅さん”ばりにご当地の有名人扱いを受けている。

ちなみにアル・パチーノ主演×ブライアン・デ・パルマ監督の黄金タッグは、のちに『カリートの道』(1993年)というギャング映画で再度手を組み、こちらも必見と言える激シブの傑作となった。そして81歳となった最近のアル・パチーノ御大は、レディー・ガガの怪演で話題の『ハウス・オブ・グッチ』(2021年/監督:リドリー・スコット)に出演。グッチ一族のアルド・グッチ役を嬉々として演じ、「コンニチハ!」との日本語まで披露。まだまだ元気ギンギンである。

『スカーフェイス』
製作年/1983年 監督/ブライアン・デ・パルマ 脚本/オリバー・ストーン 出演/アル・パチーノ、ミシェル・ファイファー、F・マーレイ・エイブラハム、スティーブン・バウアー

世界興行収入/4466万8798ドル
※BOX OFFICE Mojo調べ 

 
 

 

 
文=森直人 text:Naoto Mori
photo by AFLO
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