[ブラッド・ピット] Brad Pitt
『リバー・ランズ・スルー・イット』
製作年/1992年 製作・監督/ロバート・レッドフォード 共演/クレイグ・シェイファー、トム・スケリット
光る川面の反射で、キラキラと輝くブラピ!
ブラッド・ピットという名が映画ファンに知られるようになった作品といえば、1991年の『テルマ&ルイーズ』。年上女性を夢中にさせる役どころで、ハリウッドの正統派イケメンスターの出現が話題になった。
雰囲気から「ロバート・レッドフォードの再来」とも言われたブラピ。そのレッドフォード監督の下、主演を飾ったことで、人気が世界レベルで爆発したのが、この作品。ブラッド・ピットの“原点”として今作を記憶している人も多いはず!
ブラピが演じたのは、牧師を父にもつポール。何事にも真面目で勉強も優秀な兄に対し、やんちゃで行動的な弟だが、兄弟の共通点はフライ・フィッシングが大好きなことだった。故郷を離れ、仕事に就くなど大人へと成長していく兄弟だが、やがて胸を締めつけられるような運命に直面することになる。
その運命と、モンタナ州の川でフライ・フィッシングを楽しむ兄弟の姿が重ねられ、熱い感動が届けられる一作。光る川面の反射で、ブラピのイケメン度が倍増され、理想のスターの輝きが立ち現れることを、観た人すべてが認めることだろう。
『カリフォルニア』
製作年/1993年 監督/ドミニク・セナ 共演/デビッド・ドゥカブニー、ジュリエット・ルイス
タフで危険な香りがするブラピ!
『リバー・ランズ・スルー・イット』で多くのファンを獲得したブラピだが、その直後、早くもそのイメージを裏切るような作品が公開された。現在に至るブラピのキャリアを振り返ると、要所で危険なまでにぶっとんだ役を演じている。
今作と同年の『トゥルー・ロマンス』で、彼のそんな志向が続けざまに表れ、アイドル的スターではない魅力が早くも映画ファンを虜にした。画面に出てくるだけで、怪しい香りが漂い、まるで鋭利にとがったナイフのように、いつ襲ってくるかわからない静かな狂気もたたえるのが、この『カリフォルニア』だ。
この作品でブラピが演じるアーリーは、恋人アデールとともに、作家と写真家という初対面のカップルの旅に同行する男。その作家はサイコキラーに関する本を出版しようとしており、目的は有名な殺人事件の現場を訪ねること。
2組のクルマの旅が進むうち、アーリーとアデールの本性がじわじわ明らかになっていく。冒頭では、ぶっきらぼうだが、どこにでもいそうな若者というムードを出しつつ、時折、危うさを漂わせるブラピ。演技にはまだ荒削りな部分も感じるが、つかみどころのない魅力がむしろ役にハマっている。
『ファイト・クラブ』
製作年/1999年 監督/デビッド・フィンチャー 共演/エドワード・ノートン、ミートローフ
野心的な作品で、光るダークでワルなブラピ!
アカデミー賞助演男優賞にノミネートされた『12モンキーズ』や、連続殺人犯を追う『セブン』など、ダークで過激な役が目立つようになったブラピにとって、その方向性の極致と言っていいのが『ファイト・クラブ』だ。ブラピが演じるのは、石鹸のセールスマンだと言って、主人公の“僕”に接近するタイラー。
本気で殴り合う喜びを教えるタイラーは、“ファイト・クラブ”を組織し、犯罪行為にも手を広げるようになる。タイラーは主人公の“鏡”のような存在。演じるブラピも、妙な親しみやすさと、ミステリアスな雰囲気を醸している。明らかにほかの作品と違う彼が、ここにいる。
役作りのためにボクシングやテコンドーのトレーニングを積んだというブラピ。ファイターとしての理想的な肉体美を作り上げたのには、ひたすら感心。タイラーは話芸も巧みで、人生や映画に対する“うんちく”も面白い。
『セブン』に続いてのデヴィッド・フィンチャー監督作品で、サブリミナルの画像が挟み込まれるなど、大胆な演出がぎっしり。衝撃のクライマックスまで、1999年の作品ながら、いま観ても“新しさ”を実感できる野心作だ。
『ベンジャミン・バトン 数奇な運命』
製作年/2008年 監督/デビッド・フィンチャー 共演/ケイト・ブランシェット、タラジ・P・ヘンソン
ブラピのイケメンの変遷が一気に観られる!
若い時代から、中年になった現在まで、それぞれの年代でカッコいい男のトップに君臨し続けたブラピ。その“変貌”を一気に再現してくれるのが、この作品だ。
主人公のベンジャミン・バトンは、生まれたときに80歳の肉体で、時間とともに若返っていくという、“逆行人生”を歩む。背景となるのは、第一次世界大戦の終わりからの激動の歴史。かなり壮大で突飛なシチュエーションだが、軸になるのはベンジャミンのラブストーリー。
監督は、ブラピの起用が今回で3度めとなる鬼才、デヴィッド・フィンチャー。新たなビジュアルへの挑戦が大好きな監督ということで、特殊メイクや、顔の演技をキャプチャーしたCGなど、最大限に駆使される特殊効果が見どころ。
戦争アクションから、恋人デイジーの踊るバレエといった幻想的シーンの数々、エモーショナルな人間ドラマ……。あらゆる映画のジャンルが詰め込まれたぜいたくな内容でもある。
『マネーボール』
製作年/2011年 製作・出演/ブラッド・ピット 監督/ベネット・ミラー 共演/ジョナ・ヒル、フィリップ・シーモア・ホフマン
ブラピを一番身近に感じられる!
数あるブラピの出演作の中で、最も共感しやすいのは、この『マネーボール』のキャラクターかもしれない。メジャーリーガー時代は派手な成績を残せなかったビリー・ビーンは、スカウトに転身してその才能を発揮。オークランド・アスレチックスのGM(ゼネラルマネージャー)に就任する。
ビリーがGMとして取り入れたのが、データ重視で選手を評価する“セイバーメトリクス”。ほかの球団とは違う独自なアプローチだった。予算の少ない球団が、この方法で改革され、快進撃につながる物語が、軽快なエンタメ的ノリで描かれる。
ビリー・ビーンの奮闘が見ものである今作。頭の固い球団の古参たちとのバトルや、成績は目立たないがポテンシャルを秘めた選手への励まし。熱さと、きめ細やかさという“理想の上司”の姿が、ブラピのまっすぐな演技と化学反応を起こし、チームの変貌にぐいぐい引き込まれる感じだ。
辣腕をふるいながらも、あるジンクスを信じて重要なゲームではひとりで時間を過ごすビリー・ビーン。その孤独なシーンのブラピは、キャリアでも最高の演技をみせてくれる。
[キアヌ・リーヴス] Keanu Reeves
『スピード』
製作年/1994年 監督/ヤン・デ・ボン 共演/デニス・ホッパー、サンドラ・ブロック
短髪姿のたくましいキアヌが楽しめる!
キアヌ・リーヴスとヒロインのサンドラ・ブロックが大ブレイクした大ヒットノンストップアクション。時速80km以下になると爆発する爆弾を仕掛けられたバス。そこに飛び乗ったSWAT隊員のジャックが、いかに80km以下に速度を落とさず市中を走るか、いかに犯人にバレずに乗客を救出するか、いかに犠牲者を出さないか――車内を監視しながらも姿を見せない犯人と頭脳戦を繰り広げ、最後までハラハラドキドキ!
冒頭はエレベーター、メインはバス、最後は地下鉄といずれも動く密室を舞台に狂気の爆弾魔(デニス・ホッパー)と対峙するジャックがかっこよく、劇中ジャックがつけている〈Gショック〉(実際にもSWAT隊員が着用しているそう)やクルーカットが大流行。運転手のケガにより急遽バスのハンドルを握ることになった女子大生のアニー(サンドラ)との淡いロマンスもいい。
走る姿が豪快だったり、暴走バスを追いかけてド派手なカーチェイスを披露するなど、たくましいキアヌが観たいならうってつけな1本だ!
『ハートブルー』
製作年/1991年 監督/キャスリン・ビグロー 共演/パトリック・スウェイジ、ゲイリー・ビジー
ナイーブな雰囲気を纏うキアヌに惹かれる!
パトリック・スウェイジがサーファーかつ強盗団のリーダーを、キアヌがそのサーファーたちの仲間に潜入するFBI捜査官を演じ、友情と逮捕の狭間で揺れる姿を好演。サーフィン(特に夜のサーフィンシーン!)やスカイダイビングのシーンはスタイリッシュかつ迫力があり、惹きこまれること間違いナシ。
監督はイラクを舞台にした『ハート・ロッカー』で女性監督として史上初めてアカデミー監督賞を受賞したキャスリン・ビグロー。製作総指揮は当時、彼女の夫だったジェームズ・キャメロンが務めている。
キアヌは精悍で頼りがいしか感じない『スピード』とは、だいぶ違う印象。本作ではハーバード大卒のエリートながら、カリスマ性のあるパトリック・スウェイジに惹かれ、その関係性や逮捕することに逡巡するようなナイーヴな雰囲気を残している。そこが、”らしく”て、実にイイ!
『マイ・プライベート・アイダホ』
製作年/1991年 監督/ガス・ヴァン・サント 共演/リヴァー・フェニックス、ジェームズ・ルッソ
美しいキアヌが堪能できる!
親友リヴァー・フェニックスとの最後の共演作であり、男娼のふたりがあまりに痛切で、あまりにも美しいことでも知られる青春ロードムービー。監督ガス・ヴァン・サントのマイノリティや異端者へのフラットな視線や繊細さが感じられる作品だ。
ポートランドのストリートで男娼として無軌道に暮らすマイク(リヴァー)とスコット(キアヌ)。彼らが、マイクの母親を探すため旅に出ることに。バイクのふたり乗りや長く続く一本道、夜の焚火での告白、対になっているかのようなオープニングとエンディングなど印象に残るシーンが多い。
やがて旅は終わりを迎え、孤児のマイクと市長の息子のスコットは別々の道を歩むことに。スコットにとっての青春時代の終わりと、マイクにとってのふたりの関係の終わりが重なり胸に迫る。当時27歳の美しいキアヌが堪能できる。
『マトリックス』
製作年/1999年 監督・脚本/ラリー・ウォシャウスキー、アンディ・ウォシャウスキー 共演/ローレンス・フィッシュバーン、キャリー=アン・モス
最強へと成長するキアヌにグッとくる!
言わずと知れたアクション映画の金字塔。コンピューターによって作られた仮想現実から目覚めたネオ=キアヌが、モーフィアス(ローレンス・フィッシュバーン)やトリニティ(キャリー=アン・モス)と共にコンピューターから人類を解放するための戦いに身を投じていく姿が描かれる。
VFX、ワイヤーアクション、バレットタイムなど、本作以前・以後ではアクションの撮影技術や表現方法がガラリと変わったことでも歴史的な1本。カラダを後ろにそらして銃弾を避けたり、対峙するふたりが空を舞いながら銃を向けあうなど、有名なシーンは今観てもワクワク度MAX。
特にキアヌが道着姿となり、格闘術を学ぶシーンは日本人にとって胸熱シーン。第2、3作と強くなっていくキアヌもいいのだが、やはり第1作での成長していく姿にはグッとくるものがある。
『ジョン・ウィック』
製作年/2014年 監督/チャド・スタエルスキ 共演/ミカエル・ニクヴィスト、アルフィー・アレン
寡黙で孤独というキアヌらしさに魅了される!
裏社会で生きる凄腕の殺し屋だった男ジョン・ウィック。愛する女性と結婚し、平穏で幸福な日々を送っていたが、やがて妻は病死。さらに亡き妻が残した愛犬をかつての裏組織に殺されたことで憤怒、壮絶な復讐を遂げていくハードボイルドな作品。
本作では、柔術(カンフー)とガンアクションを融合した“ガンフー”を披露。敵をバッタバッタと倒していく様は痛快。『マトリックス』では流れるような華麗なアクションで魅了したが、こちらは至近距離での壮絶な格闘&銃撃戦が満喫できる!
また本作で演じるキャラは、寡黙で孤独な男。そういう面では、“サッドキアヌ”らしさも楽しめる1本といえるだろう。ちなみに製作総指揮も兼任している。
[レオナルド・ディカプリオ] Leonardo DiCaprio
『ギルバート・グレイプ』
製作年/1993年 監督/ラッセ・ハルストレム 共演/ジョニー・デップ、ジュリエット・ルイス
レオ19歳のみずみずしい演技に惹かれる!
初期ディカプリオを知るうえで、絶対に外せない傑作ヒューマンドラマ。名匠ラッセ・ハルストレムが監督を務め、田舎町に暮らす青年ギルバート・グレイプ(ジョニー・デップ)の日常を綴っていく。
ディカプリオが演じるのはギルバートの弟で、知的障がいを持つアーニー。ひとりでは日常生活を送ることが難しく、思いがけない行動で家族をハラハラさせるアーニーを、公開当時19歳のディカプリオがみずみずしく演じ上げている。
ふとした表情、仕草から突然の絶叫まで、実際の知的障がい者を配役したのかと思わされるほど自然体でリアル。悩める兄を演じたジョニー・デップとの“兄弟感”も素晴らしく、作品自体を愛する声がいまだ途絶えない。ディカプリオは本作で初めてアカデミー賞助演男優賞にノミネートされた。
『ロミオ&ジュリエット』
製作年/1996年 製作・監督/バズ・ラーマン 共演/クレア・デインズ、ジョン・レグイザモ
レオ史上、最も美しく絵になる1作!
『タイタニック』と並び、アイドル的評価の高い美青年時代の1作だが、スター俳優レオナルド・ディカプリオの輝きと演技力を知るのに最適。シェイクスピアの同名戯曲をベースに、敵同士の家に生まれたロミオとジュリエット(クレア・デインズ)の悲恋が描かれる。
ビルの立ち並ぶ街に舞台を置き換え、ディカプリオ演じるロミオはアロハシャツを着用し、銃を手にする“異色ロミジュリ”だが、台詞は戯曲通り。そのちぐはぐさが麗しい作品世界に、台詞回し抜群のディカプリオがいざなう。
ままならない日々を送る鬱屈、恋に落ちたときの熱情など、思春期の繊細な感情表現も美しく見事。ディカプリオ史上最も絵になるディカプリオを生み出した監督のバズ・ラーマンとは、後に『華麗なるギャツビー』でも組んでいる。
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』
製作年/2013年 製作・監督/マーティン・スコセッシ 共演/ジョナ・ヒル、マーゴット・ロビー
レオ史上、最も過激な役柄を熱演!
巨匠マーティン・スコセッシと数度にわたってタッグを組んでいるディカプリオだが、タッグ作の中で最も弾け飛んだ演技を披露し、ナチュラルな技巧派の真骨頂を見せつけてくるのが本作。“ウォール街のウルフ”と呼ばれた実在の株式ブローカー、ジョーダン・ベルフォートの自伝的物語の中で、金とドラッグにまみれたベルフォートを演じている。
過激な人生劇場を繰り広げた男の生き様を赤裸々なユーモアを交えて描く作品だけに、ディカプリオの演技も過去一過激にエスカレート。ドラッグをキメたヘロヘロのカラダで愛車を運転しようとするシーン、美人妻(マーゴット・ロビー)を相手に赤ちゃんプレイを楽しむシーンなど、笑える名シーンも多い。アカデミー賞主演男優賞候補となったが、「受賞すべきだった!」との声も。
『レヴェナント:蘇えりし者』
製作年/2015年 製作・監督/アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 共演/トム・ハーディ、ドーナル・グリーソン
レオ史上、最も粗野で男らしい!
ディカプリオがアカデミー賞候補入り5度めにして、初めて栄光をつかんだ1作。クマに襲われて重傷を負った男が、西部開拓時代の荒野で決死のサバイバルを繰り広げる。リアリティを追求するアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の下、ディカプリオは氷点下の中で裸になり、凍った川に飛び込み、動物の生肉を血まみれになりながら口にする体当たり演技を披露。
台詞もほとんどない中、自分を裏切った仲間への復讐心を胸に、生きることを渇望する男の心情を目と全身で語っているのがいい。ディカプリオ史上最もリアルなディカプリオとして、オスカー受賞も納得。また、過酷な事態に翻弄される主人公を演じてハマるディカプリオを知る意味でも、『インセプション』や『シャッター アイランド』などと並んでマスト作品。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
製作年/2019年 監督/クエンティン・タランティーノ 共演/ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー
ブラピとの化学反応でレオの魅力が最高潮!
主演最新作で、最高のディカプリオを更新。1969年のハリウッドを舞台にした1作で、変わりゆく業界を憂う落ち目の西部劇スター、リック・ダルトンを演じている。映画界のトップを走り続けるディカプリオが不遇の俳優に扮する面白さもさることながら、親友役ブラッド・ピットとの相性のよさが光る。
思い通りにならないキャリアをしくしく嘆いたり、それをブラピによしよしと慰められたり、怒涛のクライマックスを経てささやかに友情を確かめ合ったり、共演者とのケミストリーを楽しむ作品としてはディカプリオ史上最高と言えるかもしれない。監督のクエンティン・タランティーノとは『ジャンゴ 繋がれざる者』でも組んでいるが、そちらでは極悪農園主を怪演。タランティーノ作品のディカプリオには乾いたユーモアがにじむ。
[トム・クルーズ] Tom Cruise
『トップガン』
製作年/1986年 監督/トニー・スコット 共演/ケリー・マクギリス、ヴァル・キルマー
20代前半の魅力がたっぷり!
アメリカ海軍の戦闘機兵器学校トップガンの天才パイロット“マーヴェリック”の挫折と成長、女性上官との恋愛を描いた世界的大ヒット作で、トム・クルーズがトップスターの仲間入りを果たした。MV感覚の疾走感あふれるスタイリッシュな映像はまさにトニー・スコット印。特にケニー・ロギンスの「デンジャー・ゾーン」やベルリンの「愛は吐息のように (Take My Breath Away)」は聴けば、この作品が思い浮かぶという人も多いのでは? アメリカ海軍全面協力のもとで実機を使用した飛行シーンも今観ても色褪せない迫力を感じさせる。
そして何と言ってもトムのかっこよさと言ったら! 若さゆえの無謀さ、アツさ、生意気さ、真っ直ぐさなど、20代前半のこの頃にしか出せない魅力がたっぷり。命知らずの危険な操縦をしつつもギリギリのところで敵機をかわすシーンは、本作で海軍志望者が増えたというのも納得のハラハラの爽快感だ。
『ザ・エージェント』
製作年/1996年 監督/キャメロン・クロウ 共演/キューバ・グッディング・Jr.、レネー・ゼルウィガー
スター性が存分に活きた作品!
スポーツ選手の年俸はもちろん、チームやスポンサーとの契約など、裏方を取り仕切るスポーツエージェント。売れっ子エージェントとしてブイブイいわせていたジェリー=トム・クルーズだったが突然会社をクビになってしまう。経理係のシングルマザーのドロシー(レネー・ゼルウィガー)と独立した彼は、たったひとり付いてきてくれたクライアントのアメフト選手ロッド(キューバ・グッディング・Jr.)と共に成功と栄光を掴むために奮闘する。
キラキラしていた彼が突如の転落に焦燥し、それでも仕事人間で利益主義だった自らを省みて大切なことに気付いていく過程がいい。トムのスター性が存分に活きた作品だ。本作でアカデミー助演男優賞を受賞したキューバ・グッディング・Jr.の劇中のセリフ「ショー・ミー・ザ・マネー!」と、ジェリーの元カノ(ケリー・プレストン)が彼に対して“負け犬”の意味で向ける“L”のハンドサインが話題になった。
『ミッション・インポッシブル/フォールアウト』
製作年/2018年 監督/クリストファー・マッカリー 共演/ヘンリー・カヴィル、ヴィング・レイムズ
凝ったアクションするトムが観たいならコレ!
今やトム・クルーズのライフワークともなっているテッパン人気シリーズの6作めにして最新作。今回は敵に盗まれたプルトニウムを奪還するべくイーサン・ハントたちが世界を飛び回る。毎回、度肝を抜くアクションに自ら挑むトム・クルーズが今回も上空8000メートルからジャンプしたり、バイクチェイスしたり、ビルからビルへ飛び移ったり(このシーンで全治9カ月のケガをした)など、全編がクライマックスかというド迫力! 毎回、前作を上回る凝ったアクションを披露するのがもはやトムの生きがいとなっているに違いない。
命知らずでどんな不可能なミッションも遂行してしまうイーサン・ハントはトム・クルーズの当たり役でかっこいい!の一言だが、仲間のルーサー=ヴィング・レイムズやベンジー=サイモン・ペグとの軽妙なやり取りも見どころだ。
『7月4日に生まれて』
製作年/1989年 監督/オリヴァー・ストーン 共演/キーラ・セジウィック、レイモンド・J・バリー
演技派ぶりを披露!
ベトナム戦争に志願して現地で地獄を見たロン・コーヴィックの同名自伝小説を、自身もベトナム帰還兵のオリヴァー・ストーンが映画化。7月4日のアメリカ独立記念日に生まれ、愛国心あふれる青年に育ったロンをトム・クルーズが演じるのだが、ここにいるのはスターのトムではなく、泥にまみれパニックになりぶざまな姿をさらす哀れな男だ。意気揚々と海兵隊に入隊して前線で戦ったものの下半身不随になって帰還。すると社会は反戦ムード一色で周囲は自分を腫れ物に触るように扱う。自分は国のために行って一生自分の足で歩けないカラダになったのに……。今もベトナムで必死に仲間が戦っているのに……。“間違った戦争”に従軍していたのだと悟るロンのもどかしい想いが痛切だ。
ロン役を演じるために約1年間、車イスで生活したほど渾身の演技を見せたトムは見事、本作でゴールデングローブ賞を受賞した。ちなみにトムは前日の7月3日生まれである。
『コラテラル』
製作年/2004年 監督/マイケル・マン 共演/ジェイミー・フォックス、ジェイダ・ピンケット・スミス
悪いトムを堪能するならコレ!
トム・クルーズが初めて悪役を演じたことで話題になったサスペンス。証人抹殺のため、夜のLAに降り立った冷酷な殺し屋のヴィンセント(トム・クルーズ)と、彼をたまたま乗せたタクシー運転手のマックス(ジェイミー・フォックス)の一夜の攻防が描かれるのだが、古くは『ヒート』、近年では『フォードVSフェラーリ』など、男と男が対峙する作品を手がけたら天下一品のマイケル・マンがメガホンをとっただけに、本作もハードボイルドでシビれる展開。随所に散りばめられる哲学的なセリフ、夜のLAの光と闇の描写、トムやジェイミーをはじめ、マーク・ラファロやハヴィエル・バルデムなどの雄々しい面構え。すべてがかっこいい。
ヴィンセントとマックスのタクシーの中での会話やクライマックスの対決も見どころだが、中でも特にヴィンセントがマックスに言い訳的に「俺は撃っただけだ。殺したのは銃弾だ」と言うセリフが印象的。
[ロバート・ダウニー・Jr.] Robert Downey Jr.
『レス・ザン・ゼロ』
製作年/1987年 監督/マレク・カニエフスカ 共演/アンドリュー・マッカーシー、ジェイミー・ガーツ
若手時代の傑作!
ブレット・イーストン・エリスの同名小説を映画化した青春ドラマで、恵まれた家庭に生まれながら、やがて道を踏み外す青年を熱演。80年代の青春映画で活躍した若手俳優たち、通称ブラット・パックの中でも、群を抜いた演技派だったことを示す1作と言える。
ともに高校を卒業した親友クレイ(アンドリュー・マッカーシー)の目線で物語が進む中、ダウニーJr.演じるジュリアンは明るい未来へ向かうはずが、ままならない人生から逃げるようにドラッグまみれの生活へ。挙げ句の果てに、売人に借金を作って男娼へと身を落とす。
刹那的に生きるジュリアンの未熟な美しさは若さゆえでもあるが、どこまでも憎めない雰囲気は今のダウニーJr.にもあるもの。実際にドラッグの問題を抱えていた初期ダウニーJr.の暗い闇の魅力も感じることができる。
『チャーリー』
製作年/1992年 監督/リチャード・アッテンボロー 共演/アンソニー・ホプキンス
圧巻のなりきり演技!
90年代のダウニーJr.を代表する1作で、ハリウッドに君臨した喜劇王チャーリー・チャップリンに。名匠リチャード・アッテンボローの下、コメディアンとしての才能を開花させる青年時代から、かつて追放されたハリウッドに舞い戻る80代までを特殊メイクの力とともに演じ切っている。
表情、仕草など、瓜二つと言われた外見の役作りもさることながら、順調なキャリアの一方で女性問題を抱え、政治的姿勢を理由にFBIから敵視されたチャップリンの複雑さと悲哀を巧みに表現。27歳にしてアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたほか、チャップリンの出生地イギリスでは英国アカデミー賞主演男優賞を受賞した。
近年は特に、自身のパーソナリティをも生かした個性派スターとして認知されるダウニーJr.だが、“なりきり演技”でも魅せてくれる。
『キスキス,バンバン』
製作年/2005年 監督・脚本/シェーン・ブラック 共演/ヴァル・キルマー、ミシェル・モナハン
運命に翻弄されるトホホな役も上手い!
ドラッグ問題から復活し、“キャリア第2期”を歩む中で主演した犯罪サスペンス。その復活劇に欠かせない現在の妻であり、映画プロデューサーのスーザン・ダウニーが製作総指揮を務めている。ダウニーJr.が演じるのは、ひょんな偶然から映画のオーディションに参加し、探偵役に抜擢されてしまった泥棒ハリー。
あれよあれよとハリウッドに赴いたハリーは私立探偵のペリー(ヴァル・キルマー)に役作りの指導を仰ぐ中、本物の殺人事件に巻き込まれていく。殺人犯にされそうになったり、拷問されたり、命を狙われたり…。翻弄する側の役で印象を放つことの多いダウニーJr.が、巻き込まれ型のトホホな主人公に徹しているのが珍しくも可愛らしい。エンドロールでは、実は優れたシンガーソングライターである彼の楽曲を聴くこともできる。
『シャーロック・ホームズ』
製作年/2009年 監督/ガイ・リッチー 共演/ジュード・ロウ、レイチェル・マクアダムス
茶目っ気たっぷりな演技に引き込まれる!
アーサー・コナン・ドイルが生んだ名探偵シャーロック・ホームズを演じ、ゴールデン・グローブ賞の主演男優賞を受賞。医師のジョン・ワトソン(ジュード・ロウ)を相棒に、世界征服を目論む男の陰謀に立ち向かう。
卓越した観察力、記憶力、推理力、そして格闘能力を持つ天才であると同時に、奇天烈かつ無礼な態度と愛すべき茶目っ気で周囲を翻弄するホームズは、“ザ・ダウニーJr.”なキャラクター。なんだかんだでホームズのことが大好きなバディ、ジュード・ロウとの相性も抜群で、瞳の奥まで生き生きしている。
また、ホームズらしいイギリス英語も好評。ちなみに、台詞回しにおける芸達者ぶりは、“黒人役になりきるオーストラリアの名優”というトリッキーな役柄に挑んだ『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』でも実感できる。
『アイアンマン』
製作年/2008年 監督/ジョン・ファブロー 共演/テレンス・ハワード、ジェフ・ブリッジス
魅力のすべて詰まっている!
アイアンマンなくして、現在のロバート・ダウニーJr.なし。2008年の『アイアンマン』以降、『アベンジャーズ/エンドゲーム』までの計10作で、マーベルコミックのスーパーヒーロー、アイアンマンを演じている。
『アイアンマン』登場時、巨大軍需企業のCEOだったトニー・スタークは、自社製品の罪を悟って改心。自らパワードスーツを開発し、平和のために戦うアイアンマンと化す。とんでもない金持ちで、とんでもない天才だが、それゆえに傲慢さも顔を出しがちなトニー・スタークは、もはやダウニーJr.以外に演じることなどできないキャラクター。
飄々としていて不遜な態度やスパイシーなユーモア、その内側に見え隠れする繊細さなど、彼のすべてを愛さずにはいられないシリーズファンが世界中に存在する。もちろん、ダウニーJr.の入門書としても最適。
[マーク・ウォールバーグ] Mark Wahlberg
『ブギーナイツ』
製作年/1997年 監督・脚本/ポール・トーマス・アンダーソン 共演/バート・レイノルズ、ジュリアン・ムーア
演技力が認められた出世作!
もともと“マーキー・マーク”という名のミュージシャンで有名になったマーク・ウォールバーグ。俳優に転身して、最初に大きな注目を集めたのが、この『ブギーナイツ』だ。演じたのは、ポルノ映画の男優エディ。俳優になる前には、カルヴァン・クラインの下着モデルも務めたマークにとっては、まさにハマリ役。エディは、下半身の“サイズ”が認められてポルノ業界にスカウトされるという設定だからだ。ダーク・ディグラーという芸名でスターになった彼が、ポルノ映画界という独特の世界に翻弄され、劇的な運命をたどっていく。
舞台となった1970年代のカルチャーをきらびやかに再現しつつ、“業界”にうごめく個性派キャラが次々登場。キャストもクセ者ぞろいなので、マークが演じるエディ=ダークが純粋に見えてくる。多くのキャラが経験する挫折と再生ドラマも共感度大。その後、トップスターへの道を突き進むマーク・ウォールバーグだが、敬虔なカトリック信者で、今は4人の父である彼は本作への出演をちょっぴり後悔しているとか。そんなマークの思いを重ねながら観れば、キャリアの中での貴重な1作だとわかるはず。
『ミニミニ大作戦』
製作年/2003年 監督/F・ゲイリー・グレイ 共演/シャーリーズ・セロン、エドワード・ノートン、ジェイソン・ステイサム
マークらしさが凝縮されている1本!
肉体で魅せるアクション、痛快&豪快なノリ、エンタメ的楽しさという、マーク・ウォールバーグ主演作の“基本”が揃ったのが本作。ヴェネチアの金庫に保管された50億円もの金塊を盗む計画が失敗。それから1年後のロサンゼルスで、奪われた金塊を取り戻そうとする物語。タイトルの“ミニ”は、金塊奪取の計画に使われるミニクーパーのこと。つまりカーアクション映画としても見ごたえ満点ってこと! 1969年の同名映画のリメイクなので展開の面白さも保証済みだ。
マークの役は、犯罪計画のリーダーで、彼がプロフェッショナルな仲間をリクルートして、無謀な計画に挑む。最大の見せ場は3台のミニクーパーがみせる常識破りのアクションで、ヘリコプターに追われたり、地下鉄の駅の階段を降りていったりと、テンションは上がりまくり! ある意味で何も考えず、映像と音で楽しめるというのが、マーク・ウォールバーグ映画らしい。シャーリーズ・セロンら共演陣も豪華で、マークの主演作では人気が高い1本である。
『ザ・シューター/極大射程』
製作年/2007年 監督/アントワーン・フークア 共演/ダニー・グローバー、マイケル・ペーニャ
マークが最も得意とするキャラクター!
『ローン・サバイバー』、『パトリオット・デイ』など、マーク・ウォールバーグのアクション主演作にはシリアス&骨太系も数多い。その中でも隠れた名作といえるのがコレ。アメリカ海兵隊員のボブ・リー・スワガーは、スナイパーとしての腕前は誰にも負けなかった。軍の極秘任務で仲間を亡くしたことから隊を退き、隠遁生活を送っていた彼に、大統領暗殺計画を阻止してくれという依頼が舞い込む。仕方なく承諾するスワガーだが、その裏では恐るべき陰謀も進行していた。
孤高の無敵男が、かつて誰も経験したことのない過酷な試練に立ち向かう……。これこそ、マーク・ウォールバーグが最も得意とする役どころ。スナイパーとして狙った標的に銃をかまえるシーンなど、そのストイックな“仕事人”の表情に、見ているこちらの集中力もアップ。心に深い傷を抱え、俗世間から離れて暮らす姿も、これまた妙にカッコいい。この成功に気をよくしたマークは、本作の世界観を広げた、同じタイトルのドラマ『ザ・シューター』を製作総指揮(自分は出演せず)。マークにとっても、お気に入りの作品なのである。
『ザ・ファイター』
製作年/2011年 監督/デビッド・O・ラッセル 共演/クリスチャン・ベール、エイミー・アダムス
演技力の高さを見せつけた!
マーク・ウォールバーグの演技力がハイレベルで発揮された作品を聞かれたら、この『ザ・ファイター』を挙げる人は多いだろう。マークが演じたのは、兄のディッキーから指導を受けるボクサーのミッキー。ディッキーは天才ボクサーなのだが、麻薬に手を出し、犯罪も起こす。そんな複雑な家庭環境で、兄や母から過剰な期待をかけられつつ、なかなか試合に勝てない……。屈折しまくりな状況のミッキー役で、ほかの映画とはまったく違うマークを目にすることができる。
自他ともに認める“肉体派”のマークは、本作のためにトレーナーの下で準備を積み、プロボクサーと比べても遜色のない完璧な肉体を作り上げた。特にリングでのシーンはリアリティ満点だ。この映画はアカデミー賞で、ディッキー役のクリスチャン・ベールが助演男優賞、愛情過多で独善的な母親役のメリッサ・レオが助演女優賞を受賞。マークは主演でありながら、彼らの熱演を引き出すという一歩引いたその姿勢で感動を高めることに成功。実話の映画化で、モデルとなったミッキー本人も特別出演している。
『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』
製作年/2010年 製作・監督/アダム・マッケイ 共演/ウィル・フェレル、エバ・メンデス、サミュエル・L・ジャクソン、ドウェイン・ジョンソン
マーク史上、最高ランクの楽しさ!
マーク・ウォールバーグの魅力のひとつが、まじめにやればやるほど笑っちゃうという演技。その魅力が発揮されて、多くの人に愛されたのが『テッド』だが、それ以上にマークのコメディの才能が炸裂しまくるのが本作。タイトルのとおり『俺たち』シリーズなので、主人公たちのふざけた活躍が見もの。マークが演じるのはNY市警の刑事テリーで、血気盛んで暴走しやすいタイプ。そんな彼が、内勤好きなオタク刑事アレンとコンビを組むことになる。
何から何まで正反対のテリーとアレン。そのギャップはもちろん、相棒の不甲斐なさにブチきれるマーク・ウォールバーグの演技にいちいち爆笑。全くモテないタイプのアレンに、実は超セクシーな妻がいたと発覚するのだが、その瞬間のテリーの驚きの表情は最高! さらに先輩刑事コンビとしてドウェイン・ジョンソンとサミュエル・L・ジャクソンが出演。豪華キャストの登場に喜ぶのもつかの間、あっさりと序盤で消えてしまう! あらゆる方向で予想を裏切る展開が用意されている、なんとも痛快な作品なのだ。刑事アクション映画としてのド派手さも含め、“楽しさ”という点ではマーク・ウォールバーグ作品の中でも最高ランク!
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