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CULTURE カルチャー

2025.03.22


【追悼】俳優ジーン・ハックマン エネルギーに満ちた破格の演技者【中編】

 

  

 


怒涛の70年代編
決してイケメンではないが、ガッツがある。エネルギーがある。そして何より、人生の苦楽や長きにわたる根無草を経験し、劣等感や屈辱も相当溜まっていたからこそ、ハックマンには一度食らいついたら死んでも離さないというブルドッグのような気骨があった。全身汗まみれ、髪はぐしゃぐしゃ、顔面を真っ赤にさせながら役になりきり、喜怒哀楽を表現してみせた。
とりわけハックマンにとって70年代は破格の勢いで吹き荒れる暴風雨のような時代だ。出演作を挙げ出すとキリがないが、ここでは重要作5タイトルをざっと振り返りながら一気に駆け抜けたい。
 

  

 

『フレンチ・コネクション』(1971年)

1/死に物狂いで突き進む『フレンチ・コネクション』
彼の苦虫を噛み潰したような顔面が映画のど真ん中を飾った『フレンチ・コネクション』(1971年)のインパクトは計り知れない。役名はポパイ。確かに丸っこい目尻や口元、ツルッとした顔面、腕っぷしの強そうな体躯(身長は187センチ)はその名にぴったりだ。彼が頭にちょこんとかぶるポークパイ・ハットもまたトレードマークとなった。

本作をドキュメンタリータッチで製作したフリードキン監督にとって、ハックマンの感情むき出しの存在感こそまさに要。演じるにあたっては夜中に警察と共にハーレムの実態を見て回るなど、ハックマン流の余念のないリサーチと役作りが徹底された。その上、フリードキン監督はあえてテイクを重ねて彼をイラつかせることで、煮えたぎるマグマが吹き出す瀬戸際の破格の人物像をフィルムに焼き付けた。本作はアカデミー賞で作品賞、主演男優賞に輝くなど大成功を収め、彼は一躍ハリウッドの大物として70年代を勢いに乗せてスタートダッシュしていく。
 

  

 

『ポセイドン・アドベンチャー』(1972年)
2/破天荒な牧師が乗客を導くパニック映画


オールスターキャストで描くパニック物の代表作『ポセイドン・アドベンチャー』(1972年)でも彼の存在感が際立つ。アテネ行きの豪華客船が巨大な波に襲われて沈没する本作でハックマンが担うのは牧師役。それも乗客を前に「神は弱き者など救ってくれない!」「逆境に負けるな!闘って前に進まねば!」と訴えながら、上下逆さまになった客船内をモーゼさながらに突き進んでいく破天荒な役柄である。

屈強で、異端に思えるほど信仰篤く、カリスマ性に満ち、口からは時折汚い言葉がほとばしるこの世俗じみた牧師役を、決して漫画的にならず、ある種のリアリティを持って成立させる。そんな芸当ができる俳優は当時のハックマンを置いて他にいまい。かくなる意味でも本作はいまなお衝撃的、かつ型破りなスペクタクル映画であり続けている。
 

  

 

『スケアクロウ』(1973年)

3/いちばんお気に入りの心温まる友情物語
何かとガッツ、エネルギッシュ、破天荒という言葉が並びがちなハックマンだが、キャリアを振り返ったインタビュー記事などから伺えるのは、どうやらアル・パチーノと共演した『スケアクロウ』(1973年)が大のお気に入りらしいということだ。

本作で彼らは根無草のように放浪の旅を続け、いつしか打ち解けあい、互いの旅の目的を吐露しながら掛け替えのない友情を温めていく。本作でパチーノが“静”なら、ハックマンは“動”といったところか。兄貴肌を吹かせて相手を引っ張り、2時間かけてじっくりと醸成されるキャラクターや関係性の変移がなんとも味わい深い。

本作はカンヌ映画祭で最高賞を受賞。その割に商業的にあまりヒットしなかったようだが、それでもハックマンはこの映画、この役柄を、ずっと愛してやまないのだという。おそらくこういった雑味が少なく、俳優自身のイマジネーションを存分に注ぐことで完成する作品こそ、彼が真に求め続けたものなのだろう。
 

  

 

『カンバセーション…盗聴…』(1974年)
4/時代を投影した謎めいたサスペンス怪作
『ゴッドファーザー』のコッポラ監督が手掛けた、ごく小さくも伝説的なインパクトを放つ怪作『カンバセーション…盗聴…』(1974年)では、寡黙で神経質な盗聴のスペシャリストを演じた。任務中にとあるカップルの会話をキャッチしたことで、徐々に何が真実か分からないパラノイアに溺れていく役柄だ。

肉体的な表現を抑制し、内面をあらわに演じ切った本作では、ハックマンは撮影中ずっと鬱屈し追い詰められた精神状態にさらされていたとか。それは当時の時代の空気でもあったのか、期間中、思いがけず『ウォーターゲート事件』の一報が飛び込んできて、同じ”盗聴”にまつわる事件だっただけに、スタッフやキャストは揃って驚愕したという。

ちなみに主人公ハリーらしき人物は、24年後の『エネミー・オブ・アメリカ』(1998年)にも登場し、ウィル・スミス演じる主人公のピンチを特殊スキルで次々と豪快に切り抜けていく。こちら、オフィシャルな続編というわけではないが(オマージュといったところか)、作品に配置された小ネタがすこぶる楽しい、ハックマンのファンにはたまらない作品である。
 

  

 

『スーパーマンII 冒険篇』(1981年)

5/スーパーヒーロー映画の悪役に上り詰め……
70年代の総仕上げとしてふさわしい大作『スーパーマン』(1978年)では悪役レックス・ルーサー役に就任。あの持ち前のニヤニヤした底意地の悪い笑い顔と、手下とのコミカルなやりとり、ファッショナブルな衣装、そして劇的に変わりゆくヘアスタイルに至るまで、ハックマンの七変化を味わえる作品だ。

彼はかねてよりお気に入りの俳優としてマーロン・ブランドの名前を挙げており、共演シーンこそないものの、この作品で共に名前がクレジットされたことはおそらく何よりも大きなモチベーションとなったのではないだろうか。
後編に続く
 

  

 

 
文=牛津厚信 text:Atsunobu Ushizu
photo by AFLO
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